兎と狼のラビリンス

こちらは白泉社『狼陛下の花嫁』の二次創作ブログサイトです。(作者様・出版社様とは関係ありません)

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可愛い部下の、女心と秋の空 前編

こんばんは、慧ネンです。
ほぼ十ヶ月振りに続きをアップしたSweet☆Homeシリーズに、沢山の拍手とコメントをありがとうございます。
こんなに沢山の方々が、続きを待っていて下さったと思うととても嬉しいです(^◇^)

今回も続きを…とサクサクお届け出来たら良いのですが、ごめんなさい(*_*;
お届けするのは、上司と部下シリーズです。

すみません、すみません。気まぐれな慧ネンを許さなくても構いません。
でも見捨てないでねm(__)m

そしてもう一つお礼を。先日「狼陛下の『花嫁』選び・其の六」に100拍手頂きました♪
こちらも更新停滞中にも拘らず、沢山の拍手を頂きとても嬉しいです。
つ、続きは…いつか形にしますから(汗)

今回のSSは、先日の大阪旅行中に得たネタを形にしました。
二日目の午前中に行った大○城で、お城に行くまでの公園?で久し振りに踏んだ土の感触に、ちょっと感動…というか学校の校庭とかが懐かしくなって。
きちんと舗装された道があるのに、そこを避けてわざわざ土の上を歩いていた慧ネンです。

ちょっと暗めと言うか、夕鈴が色々悩んでしまうお話になってしまいましたが、どんな話でも許せる方のみお進み下さい。

※文中の写真はフリー素材屋Hoshino様からお借りしております。

***


可愛い部下の、女心と秋の空 前編


人通りの多い道を、脇目も振らずに走る。
擦れ違う人々がギョッとしたように道を開けたり、不審な目で見られている事に気付いていたけれど。
溢れる涙を拭いながら、走り続ける。

何処へ?
行き先なんて、ない。
――ただ、誰にも知られない場所に行きたかった。


秋の三連休の初日。
本当なら今日から、付き合い始めてようやく半年を迎えた恋人と、泊まりで旅行に行く予定だった。

昨夜、高級レストランで一緒に食事をしていると、黎翔の携帯電話が鳴った。
相手を見て、一瞬嫌そうに眉を顰め「…悪い、少し外す。」と個室を出て行った彼は、しばらくして凄く仏頂面で戻って来た。

「…汀、すまない。明日、急遽仕事が入った。旅行はキャンセルだ。」

夕鈴の顔を見て、少し申し訳ない表情をした黎翔は、溜息を吐いてそう言った。

「…え?」

入社当時からずっと見てきたのだから、白陽コーポレーション第一営業課の課長として、彼がどれだけ多忙なのか知っている。
仕方が無いと思いながらも、楽しみにしていた分、落胆も大きかった。

午前中は大丈夫だと言うので、その日の夜は黎翔のマンションに泊まり、彼にちょっとだけ乱暴に抱かれた。
イライラしていたり不機嫌な時にたまにそんな事があるので、彼も自分のとの旅行を楽しみにしていて、行けなくなったから不機嫌なのかな?と彼に揺さぶられながら勝手にそう思っていた。

朝は当然すぐには起きれなくて、ベッドに横になったまま黎翔の手ずから朝食を食べさせてもらったり、今日の詫びのつもりなのか妙に構い倒す彼に世話を焼かれながら午前中を過ごした。

「別にこのまま部屋にいても良いぞ」という彼を見送り、どうしようか、天気も良いのでアパートに戻って布団を干したり掃除でもしようかなと思う。
キッチンを借りてパパッと作った物で昼食を済ませ、一度アパートに戻るために部屋を出ようとした夕鈴の携帯が着信を知らせる。

そこに表示されていたのは、黎翔のプライベート用の携帯番号だった。

「…はいっ!」

仕事中は、よほどの理由が無いとこの携帯を使う事が無い黎翔。
少し考えればおかしいと分かったはずなのに、この時の夕鈴は彼から連絡が来た事が嬉しくてすぐに出てしまった。

『…もしもし?』

夕鈴の身体が強張る。
聞こえてきたのは、まだ若い女性の声。

『…貴女、汀夕鈴?』

彼女の声が、

『私、今黎翔様といるの。』

言葉が、

『嘘だと思うなら、今から言う場所に来てみなさい。』

頭の中をグルグル回る。

彼女に指定されたのは、敷居が高そうな高級料亭だった。
入るに入れなくて、こそこそと中の様子を窺っていると、夕鈴の目に見知った姿が飛び込んできた。

庭に面した廊下で、何やら話しているのは黎翔と着物姿の美女。
仲良さげに会話している二人は、中年の男性に声を掛けられ部屋に戻るのかその場から離れた。

少し遠目だったが、彼の姿を夕鈴が見間違うはずが無い。
あれは確かに黎翔だった。

見た光景に呆然としている夕鈴の耳に、どこかの会社の重役らしきスーツ姿の男達の会話が途切れ途切れに聞こえてきた。

「二人とも、とてもお似合いで…」
「これで珀家も安泰といった…」

断片的な内容だったが、今この場所で何が行われているのかはすぐに理解出来た。

「お見合い…。」

足元から、ガラガラと崩れていってしまいそうで、夕鈴は震える身体に力を入れる。

離れないと、ここから逃げないと。
こんな場所で呆然と立ち尽くしていたら、不審者以外何者でもない。

ああ、でも。

「…仕事って、言ったよね…?」

――足が、動かない。

ポロポロと涙が溢れてくる。
嘘なんて吐かずに、隠し立てせずにきちんと話して欲しかった。

歯を食いしばって、嗚咽を堪えようとしても、涙は止まる気配が無い。
涙を拭いながら泣いていると、「…汀さん?」と声を掛けられて夕鈴はビクッと震えた。

泣き顔のまま声の主を見ると、そこにいたのは社長代理の李順だった。
夕鈴の表情を見て、驚愕に目を見開いている。

「貴女、どうしてここに…。」

近寄ってくる彼に、夕鈴は慌てて背を向けて走り出した。
彼が何やら叫んでいたが、夕鈴としては醜態を見られてしまいマズイと思って逃げ出した。
よりにとって一番見られたらいけない人に見られてしまった。
李順は黎翔と旧知の仲。
きっとすぐに黎翔に連絡が行ってしまう。

さっき見た光景も、これからの事も何も考えてくなくて、夕鈴はただただ走り続けた。


どうして、この場所に来てしまったのか分からない。
けれど何故か、夕鈴はこの場所に来てしまった。

そこは幼い頃から、よく来ていた小さな公園。
アパートからも会社からもそんなに離れていないのに、働き始めてから来た事はなかった。

砂場と、錆びれたブランコと朽ち掛けた木のベンチ。
当然人っ子一人おらず、記憶の中の景色より大分古びている。

ふらりと足を踏み入れると、まず土の感触に思わず動きを止めた。
アスファルトとは違う、硬いのに柔らかい、不思議な感触。
踏み締めるとジャリっと音がして、それが懐かしくて、何だか涙が出そうになった。

この公園を、友達と一緒に駆け回っていた小学生の頃。
学校帰りに近道だからと横切っていた、中学生の頃。
家事にバイトに、母親の見舞いに忙しくて、疲れた体を引き摺るように歩いて通っていた高校の頃。
そして――。

夕鈴はベンチの背に手を掛ける。
今にも崩れてしまいそうなほど老朽化が進んでいて、子供ならともかく大人が座ったら壊れてしまうのではないかと思う。

「懐かしいな…。」

中学三年の暑い夏の日、夕鈴はここで一人の男性と出会った。
進路に悩んでいた彼に、大きなお世話かなと思いながら、彼の瞳があまりにも悲しそうでつい励ますように言葉を掛けた。
少し驚いた後、何だか吹っ切れたような表情で笑ったあの人は、今何をしているのだろう。

元気に頑張っていると良いなと思いながら、夕鈴は空を見上げた。

最近朝夕は冷え込む日もあるが日中は良い天気で、今も温かい日差しが降り注いでいる。
そう言えば泣きながら走っていたので、ずっと下ばかり見ていて気付かなかった。
空はこんなに青くて綺麗で、秋の空らしく清々しい。

狭い公園を奥に進むと、申し訳ない程度に植えられた芝生と、傍に大きな木があった。
太い幹に身体を預けて座り、頬に優しい風を受けながら木々の間から差し込む木漏れ日を見つめる。
今まで気付かなかったが、公園の周りを囲うように、近くの住民が植えたのだろうか、秋桜の花が揺れている。

――ああ。

夕鈴は瞳を閉じる。

白陽コーポレーションに入社して三年。
社の期待に応えようと、今まで支えてくれた人達に恩返しをしようと、我武者羅にやってきた。
楽しい事ばかりではなかった。
嫌な事もあったし、辛い目にもあった。
眠れない夜もあったし、心が折れそうな時もあった。

初めて恋もした。
上司である彼に辛く当たられて、泣いて、悩んで、辞めようとした時もあった。

二年以上思い続けてきた彼と両想いとなって付き合い始めても、身体の関係を持っても、彼を疑って不安にもなるし、いつか別れを切り出されるのではないかと言う恐怖もある。

彼が愛してくれているのは分かるのに、心のどこかで彼を信じられず、いつか来る終りに怯えている。
付き合う前はただ姿を見るだけで嬉しくて、褒めてもらえたら幸せだったのに。

「贅沢で我儘だな、私…。」

もうそれだけでは足りないなんて。

黎翔の傍に寄ってくるのは、皆とても美しく賢く、彼と並んでも何の引けも取らない女性ばかり。
これから先も、幾度となく現れるそういう女性達に怯えながら、彼の隣で笑っていられるのだろうか。

仕事も、彼と付き合っていくのも、心の奥底に溜まっていく黒い感情から目を逸らすのも。

「何だかもう、疲れちゃったな…。」

クスリと洩れた笑みとは反して、夕鈴の頬を一筋の涙が流れ落ちた。


秋の空と秋桜


続く


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  •  
  • 2014.12/11 04:42分 
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  • 2014.12/11 10:20分 
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Re: タイトルなし 

まるねこ様

お優しいお言葉、ありがとうございます。
これからも書ける話を思い付くまま書いていきますね~(^v^)

そして、よく覚えていましたね。その課長のセリフ。
そう言えばそんな言葉言ったっけ(←おい)
そうですね、今回の話でその答えが出たら良いと思います。が、もう一つ、この話の前に書かなくてはいけない話があった事を忘れてました。
このままだと、意味不明な事になるかも…。
後編の前に、そっちを書こう悩んでます(*_*;
  • posted by 高月慧ネン(まるねこ様へ) 
  • URL 
  • 2014.12/11 19:14分 
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Re: NoTitle 

ますたぬ様

わーんm(__)m見捨てないで下さって、ありがとうございます~(*_*;
沢山シリーズがあってもどれも書きくさしで申し訳ないです。
初恋話…は別にあるんですよね~。今から書こうか、今更だからどうしようかと悩み中。
あ、でもその一途な想いを夕鈴にぽろっと暴露しちゃうかもです。
だって夕鈴、弱気になってるから…。
そして、ますたぬさん、ピラニアですか。慧ネン肉ないので、喰い付いても美味しくないですよー(^v^)
  • posted by 高月慧ネン(ますたぬ様へ) 
  • URL 
  • 2014.12/11 19:30分 
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