兎と狼のラビリンス

こちらは白泉社『狼陛下の花嫁』の二次創作ブログサイトです。(作者様・出版社様とは関係ありません)

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可愛い部下の、女心と秋の空 後編

こんばんは~(^^♪

上司と部下シリーズの続きをお届けに参りました。
何だか以前書いたCreuzシリーズの、「別れの危機!?」な時の内容に似たり寄ったりなものになってしまったような気がします…。

書きたかった話と、ちょっと違うような、違ってないような?(どっちだ)
言葉で表現するのは難しいと、いつも以上に痛感しました(*_*;

まあちょっと余裕のない課長を書けたのは満足♪
ヘタレ課長が苦手な方はバックして下さいね。

※文中の写真は、フリー素材屋Hoshino様よりお借りしております。

では、どうぞ~(^v^)


***



可愛い部下の、女心と秋の空 後編


高級料亭で、媚びるようにしな垂れかかってくる女を鬱陶しく思いながらも、当たり障りのない程度にあしらう。

せっかくの連休、付き合い始めてようやく半年を迎えた恋人と泊まりの旅行に行くはずだった。
それを父が画策したお見合いで潰されて、ただでさえ黎翔の機嫌は悪いというのに。見合い相手の大手取引先の娘だという女は、素顔が分からないほど厚化粧だし、香水はきつ過ぎて臭くて堪らないし、顔を合わせた瞬間からウンザリしていた。
この見合いを承諾する事は有りえないが、ここで父に恩を売っておくのも悪くはない。
今、李順に女の親の会社の裏を探らせているので、痛い所を突いて見合いを断り、さっさと夕鈴の元に帰ろう。
これも仕事だと思えば、二時間程度の拘束など我慢出来る。

――そう、黎翔にとってこれは『仕事』だった。
だから夕鈴にも、「急遽仕事が入った」と話した。
それが彼女の心を深く傷付けてしまった事に、このとき彼はまだ気付いていなかった。

顔合わせを終えて、料理の準備が整うまで、女と共に庭が見渡せる廊下に出る。
心の中のブリザードを仮面の下に隠し、笑顔で女と会話をする。
準備が出来たと呼ばれて席に着くとすぐ、「黎翔様。」と背後から声を掛けられた。

膝立ちで傍に寄ってきた李順に、耳元で小声で告げられた言葉に黎翔は驚いて思わず彼を振り返る。
彼としても夕鈴がここに来るのは想定外だったのだろう、若干顔色が悪い。
慌ててプライベート用の携帯を取り出した黎翔は、思わず動きを止めた。

この場所に来て、黎翔は夕鈴に連絡を取っていない。
それなのに一番上の送信履歴は夕鈴になっており、時間も見合いの席についてすぐの頃。
李順から連絡が来て少し席を外した時があった。

「…悪いが、この話はなかった事にさせてもらう。」

思った以上に、低い声が出た。

「ど、どうしてですの!?」

驚いて立ち上がり掛けた女を、すでに立ち上がっていた黎翔は冷たい瞳で見下ろす。

「私には、もうすでに心に決めた女性がいる。…それに、人の携帯を勝手に盗み見るような女に、社も私も用はない。」

そんな人間は碌な事をしない。いきなり相手に寝返って、社の機密や秘密事項を勝手に洩らしかねない。
まさにこの女は、その模範的な例だろう。

蒼褪めた顔で、わなわなと唇を震わせている女。
娘が仕出かした事に、真っ青になってワタワタしている女の父親。
そして、先程から何も口を挟んでこない父。

「…お父さん、こちらの会社との取引を、考え直した方が身のためですよ。」

微動だにしない父にそう声を掛けた後、黎翔は女に最後通牒をした。

「今後二度と、私の前に現れるな。もしもう一度顔を合わせる事があるなら、その時には女だからと容赦しない。」

腰を抜かしてへたり込んだ女を一瞥して、黎翔はその場を後にした。


居て欲しいと思いながら戻ったマンションにも、彼女のアパートにも、探し求める姿はなかった。
季節は秋、日中は日差しが暖かく気温も上昇するが、夕方が近付くにつれ気温は急激に下がっていく。

李順の話によると、夕鈴はコートなど上着の類は持っていなかったらしい。
黎翔からの連絡だと思い電話に出て、あの女に呼び出されたのだろう。
携帯に掛けてみるも、電源が落とされているのか繋がらない。
財布は持っているのだろうか?
また一人で泣いていないだろうか?

明玉を初め、彼女の親友の部下達に連絡を取ってみるも、誰一人として夕鈴の居場所を知る者はいなかった。

(考えろ、考えるんだ…。)

闇雲に探しても埒が明かない。
空はもう夕焼けで赤く染まり、気温も大分下がってきた。
彼女の身に何かあったのではないかと、嫌な不安だけが頭をよぎる。

意地っ張りで、泣き虫で。
泣き顔を誰にも見せずにいつも一人で泣いている夕鈴。

河川敷や公園など、人が少ない場所を中心に探した。

走り回って、流石の黎翔の額にも汗が滲み、息が上がる。
少し休もうと顔を上げた時、黎翔の目に向かい側にある小さな公園が見えた。

「ここは…。」

ふらりと引き寄せられるように、黎翔は公園に足を向けた。

小さな砂場、錆びれたブランコ。そしてたった一つ置かれた木製のベンチ。
あの日から来る事はなかった。
記憶の中よりも大分錆びれているが、この場所は――。

あの暑い夏の日、彼女に初めて出会った公園。

その奥にある一本の大きな木の幹に背を預け、眠っているのは探し求める愛しい女性(ひと)。

「―汀…。」

ようやく見つける事が出来て、黎翔はホッと息を吐くと眠る彼女に近寄った。

何だか身体が温かい物に包まれているような気がして、夕鈴は意識を浮上させる。正面から体を覆うように掛けられているのは、大きな男物の薄手のコート。
そして右肩に感じる、人の温もり。
温もり…?

「…なっ!?え!?…か、課長…っ!?」

ばちっと目を開けて横を見た夕鈴は、自分の隣に座り木々の合間に見える空を見上げている黎翔の姿を確認してパニックになった。
職場でもないのに、思わずいつものように役職で呼んでしまう。

「…離れるな、寒い。」

慌てて身体を起こそうとすると、肩に腕を回されぐいっと抱き寄せられた。

黎翔は無言で、何も話し掛けて来ない。
ただ何か思い詰めたように、夕鈴の肩を抱いたまま空を見上げている。
夕鈴も彼に倣い、同じように空を見上げた。

空は夕焼け色に染まり、肌寒い風が吹き始め、どこからか虫の鳴く声がする。

言葉も無く、ただ寄り添って空を見上げながら、夕鈴はもう一度考える。

仕事の事。
彼の事。
これからの事。

どうすれば自分にとって一番良いのか。
どうすれば彼のためになるのか。

離れた、方が、良いのかな…?

「れい「…私の傍にいるのが、辛くなったか?」

掛けようとした言葉は、黎翔の声に掻き消された。
彼は夕鈴を見ていた。今にも泣きそうな表情(かお)で。

「え…?」
「…もう私と付き合っていくのは嫌か?別れたいか?なあ、もうダメなのか?」
「黎翔…?」

堰を切ったように問い掛けてくる彼に戸惑う。
夕鈴の知る彼は、いつも冷静で余裕綽々で、大人の色気を晒し出すそんな男だった。

驚きながら黎翔の揺れる瞳を見てると、彼はフイッと視線を逸らした。

「結局私は、お前を苦しめる事しか出来ないろくでもない男だったというわけか…。」
「そ、そんな事ないですっ!!」

自嘲しながら呟かれた言葉に、夕鈴は思い切り反論した。

「黎翔はいつも私を護ってくれるし、愛してくれますっ!」

両手で握りこぶしを作り力説する夕鈴に、黎翔は困ったようにハハッと笑うと視線を下げた。

「…お前が思っているような、立派な人間じゃないよ、私は。」

夕鈴が何も言えないでいると、黎翔は「あのベンチ…」と顔を上げた。

「まだ大学生だった頃、自分の進路に悩み、苦しんだ時期があった。親に用意された道をただ進んでいくだけで良いのか。自分で道を見付ける事も出来ずに、あのベンチに座り毎日を無為に過ごしていた。」

夕鈴は目を見開いて、まるで独り言のように語り出した黎翔の横顔を見つめる。

「…そんなある日、一人の女の子に出会った。あれは暑い夏の日、彼女は私にこう言った。」

まさか、そんな事ある訳ない。
だって、だってそれは…。

「『敷かれたレールを、まっすぐ歩くだけが人生じゃない。たまには自分で寄り道してみたら?」』

揺れる彼の瞳があまりにも辛そうだったので、余計な事だと思いながらつい口にした言葉。

「う、そ…。」
「嘘じゃない。彼女の言葉で、私は自分の道を見付けここまで来れたんだ。この場所は私の原点。そして記憶の中の少女は、ずっと私の心の支えだった。」

黎翔ゆっくりと夕鈴を見つめ、微笑んだ。

「――そう、夕鈴。お前だよ。あの日からずっと、お前の事を想っていた。またいつか会える事を信じて、私は生きて来たんだ。」

ポロポロと涙を流しながら唇を噛み締めている夕鈴を、黎翔は引き寄せて力一杯抱き締める。

「…愛している、夕鈴。これから先、辛い思いをさせるかもしれないし、苦しめる事もあるかもしれない。でも私は、お前にずっと傍にいて欲しい。」

回される腕に力に反し、懇願する弱々しい声が、頭上から降ってくる。

「…うん、うん…!黎翔…!」

ギュウッと抱き締められ広く逞しい黎翔の胸に頬を押し当てて、夕鈴は泣きながら頷く。

別れたくない。夕鈴だって入社当時からずっと彼の事を想って来たのだ。
それに、初めて会った六年以上前からずっと想っていてくれたと知って、これ以上の喜びに勝るものなんてないと夕鈴は思う。

大きな木の下で、人目を忍ぶように口付けを交わす二人を、秋桜が風に揺られながら見ていた。

夕焼けに染まる街

夕焼けに染まる街を、夕鈴と黎翔は手を繋いで歩く。
返そうとしたコートを受け取ってもらえなくて、結局夕鈴が着ている。スーツの上着は羽織っているものの、寒そうな黎翔に夕鈴は申し訳なく思う。

会社がある中心部とは違い、この辺は少し緑が多い。そんな景色を眺めながら最寄りの駅に向かう二人の姿を、少し離れた路肩に停められた車の中から見つめている人物がいた。

「…どうしますか?」

運転席から掛けられた声に、後部座席に座る男が苦笑いする。

「…今はまだ黎翔の好きにさせておこう。今回の見合いでは、あいつに要らぬ借りを作ってしまったからな。」

離すまいと指先を絡め、楽しそうに何か話しながら歩いていく二人の背中が遠くなっていく。

「私も少し、興味が湧いたよ。」

男の手には、調査報告書と書かれた書類。
少し硬い表情で写っている証明写真が、クリップで止められている。

「――汀夕鈴、か。」

あの、何者にもとらわれず、父親である自分すら手を焼く息子の恋人。
息子の彼女への執着心は、異常とも言える。
ただの遊びなら、すぐに別れる存在ならそのまま放置してもいいが、本気だとしたらこちらも考えなくてはならない。

「…出してくれ。」

動き始めた車の中、書類を捲る男の目は、憎悪にも似た感情が宿っていた。


END


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な…な……なんて続きの気になる終わり方!
Σ ( ̄□ ̄;

続編をーーーーー!!
∪ノシ>ω<∪ノシ ハヨウハヨウ!←

  • posted by 桃月 
  • URL 
  • 2014.12/13 19:13分 
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NoTitle 

『離れるな。寒い・・・』
きゃーーーーっ言われてみたいっ!!

お父さん。。。不穏な空気は気のせいよね?←
  • posted by かんちゃん 
  • URL 
  • 2014.12/14 02:27分 
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  • posted by  
  •  
  • 2014.12/14 09:17分 
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  • posted by  
  •  
  • 2014.12/14 15:52分 
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Re: タイトルなし 

桃月様

続きが気になる所で終わってすみません(*_*;
これ以上書いたら長くなりそうだったので、ここでぶち切らせてもらいました。
ハヨウハヨウと催促しても、続きはすぐにはアップされないですよ、きっとm(__)m
  • posted by 高月慧ネン(桃月様へ) 
  • URL 
  • 2014.12/18 00:39分 
  • [Edit]
  • [Res]

Re: NoTitle 

かんちゃん様

慧ネンも課長になら言われてみたいです、そのセリフ!
お父さんは何気にこのシリーズの裏ボス的存在だったりして…。
それに課長と夕鈴はどう立ち向かうか。
乞うご期待!(←嘘です。)
  • posted by 高月慧ネン(かんちゃん様へ) 
  • URL 
  • 2014.12/18 00:42分 
  • [Edit]
  • [Res]

Re: NoTitle 

ますたぬ様

お返事大変遅くなってすみませんm(__)m
強気な課長より、ヘタレ課長の方が書きやすかったりします(笑)
お父さんはこのシリーズのラスボス的存在です。
負けるな、課長!
  • posted by 高月慧ネン(ますたぬ様へ) 
  • URL 
  • 2014.12/23 16:29分 
  • [Edit]
  • [Res]

Re: |д・) ソォーッ… 

風花様

お忙しい中のご訪問、ありがとうございます(^^♪
このシリーズの二人は、何かあるたびに二人で話し合って前に進んでいくんでしょうね。
課長がずっと想っていてくれた事を知ったのだから、夕鈴ももっと自分に自信を持って、付き合っていって欲しいですね。
忍び寄る不穏な空気を追い払うくらいに…!
  • posted by 高月慧ネン(風花様へ) 
  • URL 
  • 2014.12/23 17:37分 
  • [Edit]
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