兎と狼のラビリンス

こちらは白泉社『狼陛下の花嫁』の二次創作ブログサイトです。(作者様・出版社様とは関係ありません)

Entries

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

便利屋さん 2

こんばんは、慧ネンです。
連続でSSをアップするなんて、一体いつ振りでしょうか。

本日のSSは、四月に書いた現パロの続きになります。
人気が無かったらすぐに下げようと思っていたのですが、目次にもリンクしていないのに沢山の拍手を頂きました。

シリーズ化するかは分かりませんが、嬉しい事に「続きを」というお声を頂いておりましたので、少し続けてみようと思います(^^♪

※援助交際の描写があります。(絶対したらダメですよ!)
ご注意下さい。

※文中の写真は、フリー素材屋Hoshino様よりお借りしております。

***



便利屋さん 2


「君可愛いね、いくつ?」

そう声を掛けてきたのは、ビジネスバックを脇に抱えたスーツ姿の男だった。父親と同じくらいの年齢か、だが父とは違い筋肉質で背がそこそこ高い。

夕鈴は思わず、「は、二十歳で大学生ですっ!」と嘘をついてしまった。

一緒にカラオケに行こうと誘われ、一万円渡された。
カラオケルームでもう一万渡されて、肩を抱かれたり太腿を触られたりした。鳥肌が立ちそうになるのを必死に耐え、夕鈴は笑顔でマイクを握ったし、男とデュエットしたりした。

自分がしている事が『援交』だと分かっていたが、今日中にまとまった金が欲しい彼女は必死だった。

世間話をしているうちに、金が必要な事を思わず洩らしてしまい、男は夕鈴に援助する事を申し出てホテルへ誘った。
震える身体を叱咤して、男に肩を抱かれながらタクシー乗り場に向かう。
裏通りにあるホテルの地下駐車場でタクシーを降りた時には、恐怖と緊張で夕鈴の心臓は壊れそうなくらい脈打っていた。
ここまで来てしまったら、もう後戻りは出来ない。

頼りないがどこか憎めない優しい父と、可愛い弟の姿が脳裏に浮かぶ。
家族のために、二人のために頑張らないと。

ギュッと閉じていた目を開けて、男に促され歩き始めた時、「はい、ストッ~プ!」と声が掛かり、二人はビクッとして足を止めた。夕鈴ですら誰かに見咎められた事に驚いたのだから、肩を叩かれ直接制止を受けた男の方はもっと焦っただろう。

「…この子、まだ未成年だよ?大手会社の社長さんが女子高校生とエンコーなんて、世間にばれたらマズイっしょ?」
「なっ、ちが…私は…!!」

誘ってきたのは男の方だが、年齢を偽り騙していたのは夕鈴だ。
男は先程までの余裕な態度が嘘のように一気に慌て始め、「援助交際のつもりはなかった」とか「騙されたんだ、被害者は私だ」など、自分の保身を護ろうと必死だ。

「さっきのタクシー、地上に出た所で引き止めているから、それに乗ってさっさと帰るんだな。」

クイッと後方、先程タクシーが去って行った方向を親指で指しながら、どことなく楽しそうに言うのは、コウだ。
相変らずちゃらけた様な物言いだが、その目は全然笑っていない。

夕鈴から離れ、しぶしぶとコウの言う通りに歩き始めた男は、彼の後ろにもう一人若い男が立っている事に気付いた。

「ひ、ひいっ…!!?」

燃えるような紅い瞳をした男が、自分を射殺さんばかりの視線で睨んでいる。
情けない悲鳴を上げて、その男――レイの横を慌てて通り抜け、縺れる足を必死に動かして逃げるように去っていた。

「…さて。」

どこかの大手会社の社長らしい…男の後姿を呆然と見送っていた夕鈴は、コウの声にビクッと身を震わせた。

自分が何をしようとしていたか分かっている。
けれど何も持たない夕鈴には、自分の身体を売って稼ぐしか手が無かった。
こんな事、本当はしたくなかったし、すごく怖かったけれど。

「…何よ、今更何しに来たのよ。もうあんた達なんかに頼まないって言ったでしょ。」

ツンッと二人から顔を背け、そっぽを向く。
強がっているが、二人が来なかったら今頃あの男に抱かれていたんだと思うと、身体の震えは止まらない。
でも、それを二人に気付かれたくなかった。

「あんた達がせっかくの金づる逃がしちゃったから、また探さなくちゃ。私、忙しいの。用が無いならさっさと帰って!」

もうそんな勇気もない癖にそう言ってしまったのは、二人に弱さを見られたくない夕鈴の意地だった。

「あ~…。」

コウはポリポリと頭を掻きながら、隣にやって来たレイの顔を困ったように見上げる。
店での(特にレイの)態度で、彼女の自分達の評価は最悪のようだ。

頑なに助けを拒否するくせに、彼女の表情は泣きそうだとレイは思う。

金の無心をしてくる奴なんて、ろくでもないヤツばかり。
そんな人間が、レイは大嫌いだった。
だから彼女もそうだと思った。何の苦労も知らない、箱入り娘だと。

なのに、「何も知らないくせに!」と怒って、泣きながら飛び出していった彼女を見て、レイは自分が彼女の内面を見ていなかった事に気付いた。
勝手に勘違いして、彼女を気付付けてしまった。

慌てて後を追ったが周辺に求める姿はなく、コウと共に彼女を探すために夕闇が迫る街に繰り出した。

暫く探し回って、男に肩を抱かれ様々な店が入っている雑居ビルから出て来た彼女を発見した。
二人が乗り込んだタクシーを尾行し、ラブホテルの地下駐車場に入って行った時には心臓が凍り付きそうだった。

今から、彼女が男と何をしようとしているのか。
もし見付けるのが遅かったら、彼女は金のために男に抱かれたのか。

『…何もかも他力本願なのが気に入らない。お前自身は何をした?何か努力したのか?それをせずに無償に金を借りようなんて、腹立たしい事この上ない。』

悩んで苦しんで、助けを求めてきた彼女に、何も知らずにあんな事を言った自分のせいで。

「えっと、なんか色々ゴメンネ?…俺たちの事信用しなくても良いから、取り敢えず一度事務所に戻ろっか?」

気になっているくせに、どう接して良いのか分からずに戸惑っているらしいレイに助け舟を出すように、コウが夕鈴を説得し始めた。
初めは拒絶していた夕鈴も、暫くしてコウの必死の説得にようやく首を縦に振った。


「あ~と、そう言う訳で、今言った事調査お願い。今から依頼主を連れて事務所に戻るから。」

大通りの路肩に停めてある車に戻りながら、コウは事務所にいる社員に自分達が帰ったらすぐに動けるように詳しい調査を頼む。
ちなみに車は、男と夕鈴が乗ったタクシーを追うのに必死だったレイが、駐停車禁止の場所に停めてしまっていたが何とか無事だった。

夜の帳が下りているが、街の中心部は人に溢れていて、擦れ違う車のライトや店のネオンが目に眩しい。

「もう遅いから、お家の方に連絡入れといて。」

コウにスマホを渡されたが、今実家は電話線すら引けていない。父も弟も、もちろん夕鈴自身も携帯を解約している。
仕方なく夕鈴は番号を覚えている近所の知り合いに電話を掛け、「今夜は遅くなるかもしれないが心配しないように」と伝言を頼んだ。

コウが運転する車で事務所に戻る間、後部座席で並んで座っている夕鈴とレイは一言も話そうとはしない。
夕鈴に至っては、顔も見たくないのか先程からずっと窓の外ばかり見ている。

(居心地悪ぅ~…原因を作ったのはあんたなんだから、早く何とかして下さいね、ボ・ス?)

ミラーで確認しながら、背後で腕を組んで目を閉じている便利屋Rの社長(ボス)――レイに、心の中でぼやいたコウだった。


夜の街


続く

関連記事
スポンサーサイト

Comment

 

懐かしい!シリーズの間にありましたねー←おい
これもレイが不器用で結構面白くなりそうって思ってました。
夕鈴たらお金のために体売っちゃダメだよ〜!
さて、レイさんはどうするんでしょう。気長に続きをお待ちしております。
  • posted by まるねこ 
  • URL 
  • 2014.12/14 10:22分 
  • [Edit]
  • [Res]

管理人のみ閲覧できます 

このコメントは管理人のみ閲覧できます
  • posted by  
  •  
  • 2014.12/14 14:37分 
  • [Edit]
  • [Res]

管理人のみ閲覧できます 

このコメントは管理人のみ閲覧できます
  • posted by  
  •  
  • 2014.12/14 15:59分 
  • [Edit]
  • [Res]

 

夕鈴未遂で済んでよかった!
陛下はこれから信頼を取り戻せ(*´ω`*)
の前に信用すらされてないよですね。
大ちゃんファイト
  • posted by  
  • URL 
  • 2014.12/15 18:55分 
  • [Edit]
  • [Res]

Re: タイトルなし 

まるねこ様

お返事遅くなってすみませんm(__)m
な~んか、不器用な黎翔さんの方が書きやすいようです。
でもお陰で夕鈴との仲は最悪な状態に。
仲良くなれるかどうかは、いまだ謎です(え?)
ホント、気長にお願いしますね!
  • posted by 高月慧ネン(まるねこ様へ) 
  • URL 
  • 2014.12/23 17:07分 
  • [Edit]
  • [Res]

Re: NoTitle 

ますたぬ様

もういい加減、続きを書かないといけないな~と思いながら書きました。
ストーリー的には出来ているんだけどなm(__)m
歳を取るにつれて、寒さに弱くなってしまって困ってます(*_*;
ますたぬさんも、お身体ご自愛下さいね。
  • posted by 高月慧ネン(ますたぬ様へ) 
  • URL 
  • 2014.12/23 17:10分 
  • [Edit]
  • [Res]

Re: Σ(゚д゚lll) 

風花様

そうですよね!何があってもそれだけはしちゃ駄目ですよね!
不器用すぎるレイは、言葉足らずと言う前に仰る通り夕鈴との会話も無いですね。どーすんの?(*_*;
関係を修復出来るかどうか、早くも不安になってます(汗)
ホント、どうやって夕鈴の怒りをおさめよう…m(__)m
  • posted by 高月慧ネン(風花様へ) 
  • URL 
  • 2014.12/23 17:40分 
  • [Edit]
  • [Res]

Re: タイトルなし 

お名前無し様

お返事遅くなってすみませんm(__)m
本当に夕鈴未遂で良かったですよね。二人が来なかったらどうなっていた事か(*_*;
信用も信頼もないレイは、これから頑張ってもらわないと。
え?コウに頑張ってもらうんですか?
「嫌だよ、めんどくさい」とか言われそう…。
  • posted by 高月慧ネン(お名前無し様へ) 
  • URL 
  • 2014.12/23 17:50分 
  • [Edit]
  • [Res]

Comment_form

管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。

左サイドMenu

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

右サイドメニュー

プロフィール

高月慧ネン

Author:高月慧ネン
『兎と狼のラビリンス』へようこそ。
黎翔と夕鈴が大好きな管理人・慧ネンが、溢れる妄想を書き殴るために作ったブログです。
原作沿いや現代パラレル、色々ありますので、お好きなお話をお読み下さい。
よろしくお願いします。

†いらっしゃいませ†

キリの良い数字を踏まれた方は、ご連絡下さい♪

ご訪問中のお客様

現在の閲覧者数:

にほんブログ村ブログパーツ

ブロとも申請フォーム

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

検索フォーム

QRコード

QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。