兎と狼のラビリンス

こちらは白泉社『狼陛下の花嫁』の二次創作ブログサイトです。(作者様・出版社様とは関係ありません)

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♪恋する子犬は、『待て』を覚える

狼陛下の花嫁7巻を読んで、浮かんできた(妄想)話です♥





♪恋する子犬は、『待て』を覚える


金曜日の放課後、全ての授業を終えた生徒達は土日の連休に心躍らせ足早に帰途に着く。
それは名門・白陽学園の生徒達も同じ。昇降口を出る生徒の顔は、皆嬉しそうだ。

白陽学園に通う生徒はお金持ちや有名人の子息・息女が多いので、ほとんどの生徒は家が手配した高級車で毎日通学している。

校門の傍の駐車場には、校舎から出てくる生徒を待つ高級車が沢山並んでいた。

夕鈴も数人の友人達と共に、昇降口を出た。彼女の家は一般家庭なので送り迎えは無く、駅までは徒歩で向かう。15分ほど歩くが、仲の良い友達と話しながらの帰宅は何の苦痛も無かった。

校門に向かって歩いていると、生徒の人だかりが目に飛び込んできた。高級車の傍で生徒達が談笑しているのはいつもと同じ光景なのだが、今日は皆、校門の外を見て騒いでいる。

女子生徒の黄色い声、男子生徒の嫉妬に篭った目。

「…何かあったのかな?」

「さあ…誰かいるんじゃない?」

一番の友達の明玉と話しながら、夕鈴はふと不安になった。

実は今日この後、恋人と会う約束をしているのだが。
その彼が、迎えに行くと言って聞かなかったのだ。


夕鈴の恋人は、人気バンドグループ・Creuzのリーダーでもあり俳優業もこなす芸能人だ。
夕鈴を迎えに来て、もし素性がバレたら大変な事になる。

夕鈴は懸命に彼を説得し、なんとか学校が終わったらすぐにマンションに向かうと言う事で納得してくれたと、思っていたのだが…。

まさか、ね…?

内心ハラハラしながら、校門の外を見た夕鈴は目を瞠った。


校門の傍に停められた、真っ赤なスポーツカー。
その運転席のドアにもたれるように、一人の男が立っている。

いつもより少し乱れた漆黒の髪、意志の強い紅い瞳。
メガネを掛けて素顔を隠していても、ラフな格好をしていても分かる人には分かる。

彼が放つ、一般人ではないオーラが。

現に夕鈴の傍にいる女子生徒達が、「ねえ、あれってReiじゃない?」と騒いでいる。

「まさか!…Reiがこんな所にいるはず無いよ。」
「でもねえ…」
「うん、…似てるよね?」
キャアキャア言っているのを聞いて、夕鈴はどうしようと考える。

彼の視線は彷徨っていて、自分から一定の距離を置いて周りを囲っている生徒達を見渡していた。
キョロキョロしているのは、間違いなく夕鈴を探している。

どうするべきか、夕鈴は迷う。隠れて帰れば、彼はずっと好奇の目に晒される事になる。
だが夕鈴が出て行っても、大騒ぎになるのは目に見えている。

考えあぐねていると、彷徨っていた彼の視線が、夕鈴を捉えた。

「――夕鈴!」

パアッと、彼の顔が綻んだ。生徒達を掻き分け、夕鈴の元へ駆け寄ってくる。

「な、何で?」

「エヘへ…、待ち切れなくて来ちゃった!」

ごめんね?と、黎翔は笑う。


ああ、幻の耳と尻尾が見える。

耳は嬉しそうにピンと立ち、尻尾ははちきれんばかりにパタパタ振られている。

夕鈴大好きな子犬は、『待て』が出来なかったようだ。


夕鈴はハッとして、周囲に目を走らせる。

生徒達が「誰…?」とか「ほら、特待生の…」と小声で囁き合っているのを聞いて、夕鈴はマズイと思う。
後ろにいる友人達を見ると、驚愕の表情で夕鈴を見ていた。

夕鈴は黎翔の腕を掴むと車に押し込み、自らも急いで飛び乗った。

「…ゆ、夕鈴?」

「車、出して下さい。」

「え?」

「…早くっ!」

「う、うんっ」

夕鈴の剣幕に押され、黎翔は慌ててアクセルを踏み込んだ。

「-夕鈴!!」

明玉の声が聞こえ、夕鈴は窓を開けると大きな声で叫ぶ。

「…ごめん、明玉!…今度ちゃんと説明するからっ!」

「必ずよ…!」

明玉を始め、沢山の生徒の質問攻めにあうだろうと、月曜日が憂鬱になった夕鈴だった。

助手席で大きな溜息を吐いた夕鈴に、黎翔はビクビクしながら声を掛ける。

「ゆ…夕鈴?…怒ってる?」

「…どうして私が怒っていると思うんですか?」

返された夕鈴の声は少し硬くて、黎翔はシュンと肩を落とす。

「…マンションで待ってるって約束したのに、それを破って迎えに来たから…」


本当は約束通り、大人しくマンションで彼女を待つつもりだった。
だが夕鈴から、『委員会の会議が入ったので、少し遅くなります』と昼頃メールが入った。

只でさえ短い、夕鈴と会える時間。それが更に短くなる。

そんなのは、イヤだ。

マンションで待つより迎えに行った方が早く会える事に気付き、黎翔は収録が終わったあとスタジオから直接、夕鈴の通う白陽学園に向かった。

周囲を囲む生徒達は鬱陶しかったが、夕鈴を待つ時間は楽しかった。
彼女の姿を見つけた瞬間、やっぱり夕鈴は誰よりも可愛いな、と思った。

夕鈴に会えた喜びに浸っていた黎翔は、自分達がどれほど目立っていたのか、今更気付いたのだ。

自分は良い。ここは自分のテリトリーじゃない。
だが夕鈴は毎日ここに通い、友人や先輩後輩もいる。
月曜日から生徒達の、好奇の目に晒される事だろう。

海沿いの道を暫く走らせた後、黎翔は人通りが無い場所で路肩に車を停めた。

「…夕鈴の事を考えず行動した僕が浅はかだった。…ごめん、ね?」

眉を下げ、謝った黎翔は今にも泣きそうだ。

「ちっ、違うんです!…貴方が迎えに来てくれた事は嬉しいんです!…でももし素性がバレて噂になったりしたら、貴方が大変な事になると思って…!」

芸能人である彼は、スキャンダルが命取りになる場合もある。

白陽学園に通う生徒の中には、金持ちの道楽か噂話が好きな子や、あることない事吹聴するような子もいる。そんな子が、今回の事を世間にばらす可能性もある。

「…僕は夕鈴となら、噂になっても構わないよ?」

もしそんな噂が広まれば、記者会見でも開き、全てを暴露してやろうかと思う。


どれほど彼女が大事なのか。

どれほど彼女を愛しているか。


僕がこんな風に思っているなんて、夕鈴…君は、知らないんだろうね…?

「…私も、貴方さえ良ければ噂になっても大丈夫です。」

『貴方と付き合い始めた時から、覚悟は出来てます』と、微笑む夕鈴は本当に綺麗で。

黎翔は夕鈴の腕を掴むと、自分の胸に引き寄せる。
思い切り抱き締めて、キスをしたかったからそうしたのだが…。

「…シートベルトが邪魔。」

ムウッと口を尖らした黎翔を見て、夕鈴はクスクス笑う。

「マンションに着くまで、『待て』出来ませんか?」

「『待て』が出来たら、ご褒美くれる?」

「…お利巧に『待て』が出来たら。」

夕鈴の言葉を聞いてウキウキと楽しげに車を発進させた黎翔は、マンションに着くまで夕鈴に触れるのも、我が儘を言うのも必死に我慢した。

こうして、お利巧に『待て』を覚え、更に夕鈴という愛しい存在を前に喰らった『おあずけ』が出来た子犬は、望んだご褒美を夕鈴から貰い――。

ご満悦に、彼女を腕に抱いて眠った。


END


7巻の“子犬「待て」出来ない”が思い切りツボにハマり、書いてしまったお話です
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よろしくお願いします。

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