兎と狼のラビリンス

こちらは白泉社『狼陛下の花嫁』の二次創作ブログサイトです。(作者様・出版社様とは関係ありません)

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上司と部下の、仕事始め

こんばんは、慧ネンです。

新しい年になり、また少し日が経ってしまいましたが、ようやく今年初のSSを書く事が出来ました。
色々書きたいな~と思っていても、中々上手く纏まらないモノですね(*_*;

去年に続き、上司と部下シリーズであけおめ小説を書いてみました~(^◇^)

相変らず、タイトルにセンス無し。そのまんまじゃないか…m(__)m
こんな感じで、今年もぼちぼち書いていこうと思います。

どうぞよろしくお願いします☆


***




上司と部下の、仕事始め


「新年、明けましておめでとうございます。」
「おめでとうございます!!」

新しい年が明けて数日。
白陽コーポレーションも正月休みが終り、仕事始めの日を迎えていた。

広い会場に社員達が全員集まり、会長や社長代理といった重役の挨拶を聞く。

新年のこの時だけは男性は紋付き袴かスーツ、女性は着物と服装が決められている。
元々、色鮮やかな着物で明るい新年を祝うという意味で始めたらしいが、最近では長い正月休みでだらけた心と体をシャキッとさせるために行っていると言われている。

自身の着物を持っていない社員もいるので、社はレンタル会社と契約している。
着付けからヘアスタイルまで全て無料でしてくれるので懐は痛まないのだが、如何せん、着慣れない着物は多くの女子社員にかなりの苦痛を強いていた。

特に若い年齢ほど着物は苦痛でしかないらしく、式が終わるとすぐにスーツに着替える社員が多かった。

「やっと終わったね~。」
「毎年新年早々、何の苦行かと思っちゃうわよ。」
「あ~苦しかったあ…!」

等々、ごった返す更衣室は愚痴だらけだ。

明玉達一課の同僚と一緒にスーツに着替え終えた夕鈴もホッと息を吐く。
確かにピシッとした着物は背筋が伸びる気がするけど、窮屈だし、足元は寒いし動き辛い。

そう言えば高校を卒業して入社したばかりの頃、スーツが着慣れなくて苦労した事を思い出す。
頑張ってハイヒールにも挑戦してみたが、上手に歩けないし足は痛くなるしで散々だった。結局少しだけ踵が高いパンプスを履くようにしたが、運動靴ばかり履いていた夕鈴にはそれすら履き慣れず初めは辛かった。

それなのに今は何とも思わずに普通に履いているので、やっぱり慣れなのかな?と思ったり。
連れ立って一課に戻りながら、目まぐるしく過ぎた日常を思い出していた。

一課は白陽コーポレーションの主要部署だけあって忙しい。
同じく今日が仕事始めとなる取引会社への新年の挨拶。
溜まっている雑務の処理。
新たに始まる取引やプロジェクトの会議や資料集め。

一課内は元気な声が飛び交い、電話は鳴り響き、キーボードを叩く音が忙しなく響いた。

夕鈴もパソコン画面と睨めっこしながら、机の脇に積まれた書類を引っ張り出す。
そんな彼女の、キーボードを叩く細い指にはキラリと光る指輪が…無い。

「…ちょっと資料室行ってきま~す!」

目当ての資料が見付からなくて、夕鈴はそう声を掛け席を離れた。

「――すぐに戻る。」

そして夕鈴を横目で追っていた黎翔は、部下達にそう言うと彼女の後を追った。

資料室の扉を開けた瞬間、後ろから誰かに押され部屋の中に押し込まれる。
「きゃ…」と洩れた悲鳴は、背後から回された大きな手に口を塞がれ掻き消された。

ガチャリと鍵が回される音がして一瞬焦ったが、嗅ぎ慣れた香りと温もりを感じて、以前もこんな事あったな、と苦笑いする。
嫌だったわけではないけれど、ちょっと怒った顔で腰に手を当てて振り返ると。
何故だか彼も怒ったような表情をしていた。

今までならビクッと怯えていたかもしれないけれど、これは怒っているのではなく拗ねている(もしくはいじけている)んだと付き合い始めてから分かるようになって、一体どうしたのか、何かあったのかと心配になる。

黎翔は夕鈴の左手を取ると、何もない薬指を見て溜息を吐く。

「指輪…」
「え?」
「どうしてつけてくれないんだ?」

黎翔の腕には、クリスマスプレゼントとして夕鈴が買ってくれた腕時計がある。

朝から鬱陶しいくらいの視線を感じたし、ひそひそ何か話している他部署の女子社員達もいた。
黎翔と夕鈴の関係を知っている一課の面々は、何も言ってはこないがその表情は物凄くニヤニヤしている。

けれど黎翔は、夕鈴からの贈り物をひと時も離したくなかった。
だから誰に何を言われようと、あからさまな視線を向けられようと外すつもりはない。
例え様々な憶測を呼んだとしてもだ。

夕鈴の腕にも、黎翔のと対になる腕時計がされている。
なのに彼が贈った指輪は外されているのだ。
泣いて喜んでくれたのに、本当は嬉しくなかったのか、いらなかったのかと不安になる。

夕鈴は寂しそうな黎翔の顔を見て真っ赤になってしまった。
そして襟元に手を持っていき、服の下に隠されていたチェーンを引っ張り出す。
それは一昨年のクリスマスに、黎翔が彼女に贈ったネックレス。
そのチェーンに、去年のクリスマスに贈った指輪が揺れていた。

「ごめんなさい…。」

ショックを受けている黎翔に、夕鈴は謝る。
実は、朝家を出た時にはきちんとつけていたのだ。
だが電車の窓に映る自分の姿に、その左手の薬指にある指輪を見た時、怖くなってしまった。

誰かに何か言われるのではないか。それが課長の迷惑になるのではないか。
人は真実とは異なる事を想像する時がある。
どんな憶測が飛び交うか分からない。

電車を降りた彼女は、駅のトイレに入り、外した指輪をネックレスのチェーンに通した。

「全く…。」

黎翔は珍しくブツブツ文句を言いながらチェーンから外した指輪を夕鈴の指に填め直す。

この指輪には、『牽制』の意味も込められている。

黎翔と付き合っていると言う事を知りながら、夕鈴に思いを寄せてくる者。
恋人がいるとは知らずに、彼女の人柄に惹かれ、言い寄ってくる者。
夕鈴が知らないだけで、彼女はかなりの人気者なのだ。
白陽コーポレーション内にも、他社の取引相手などにも、そんな男達は沢山いる。

そんな奴らに、彼女にはすでに将来を約束した相手がいると言う事を知らしめるための指輪。
なのに。

「――虫除けにならないじゃないか。」

彼女自身がそれを外してしまったら意味が無い。

「…虫?」

苦虫を噛み潰したような表情で呟く黎翔の言葉に反応して、夕鈴は首を傾げる。
因みに、今の季節は冬。
虫なんて、そんなに沢山いない。

「…良いよ、分からなければそれで。」

分かっていない夕鈴に、黎翔は苦笑いして優しい視線を向ける。

「…お前はそのままでいてくれよ。」

眩しいくらいの純粋さを持った、今のままの彼女でいて欲しいと願う。

まだ頭上にクエスチョンマークを浮かべている夕鈴を引き寄せ、柔らかい唇にキスをする。
もがく彼女からくぐもった声が漏れ、抗議するようにドンドンと胸を叩かれるが無視する。

「んあっ…ここ会社、ん、むぅ…!」

一度唇を離すと文句を言ってきたが、短い息継ぎだけ許してまた口付ける。
角度を変えて咥内を蹂躙すると、夕鈴の身体から力が抜けて縋るように凭れ掛かってきた。

「ふぁ…。」

名残惜しげに唇を舐めて解放してやると、甘い吐息が漏れた。

「…言っただろ?お前相手だと、私は『課長』ではなく、一人の愚かな男に成り下がる、と。」

顔を真っ赤に染めて「バカ…。」と呟いた夕鈴が可愛くて可愛くて、このまま早退して帰りたいなと、一課を預かる課長としてあるまじき事を思った黎翔だった。

共に戻ると色々勘ぐられるので、黎翔に先に戻るように頼んだのだが彼は頑として譲らず。
結局一緒に一課に戻ると、同僚達の視線が一気に二人に向けられた。
まだ業務中なので何も言ってこないが、聡い者は夕鈴の左手薬指の指輪に気付き、意味ありげな視線を送ってくる。
二やついた顔で見られて、夕鈴としては非常に居た堪れなかった。

そしてその後の昼休み。
夕鈴は社員食堂の隅のテーブル席で、質問攻めにあっていた。
指輪を贈られた時の経緯を白状させられて。

「何だ、今すぐゴールインだと思ったのに…。」

結婚指輪じゃない事に、何故かがっかりされた。

「課長って、普段アレなのに肝心な時だけヘタレなんだよね~。」
「言えてる!」
「もっと男の根性見せろっての。」

黎翔が女豹と評するお局女性社員達は、彼への評価が厳しい。
そんな先輩や同僚達の会話に口を挟めず、困った表情で聞いていた夕鈴は資料室で黎翔に言われた事を思い出して聞いてみる事にした。

「あ、そう言えば。ねえ、今の時期、虫っている?」
「は?虫?」

皆それぞれ首を傾げた後。

「…それって、課長に言われたの?」

明玉に聞かれて夕鈴は頷く。

「うん。『虫除けにならない』ってブツブツ言っていたんだけど…。」

意味が分からないと言うように首を傾げる夕鈴を見て、彼女達は互いの顔を見遣った後。

「――ぶふっ!」

誰が最初だったか分からないが、誰かが思い切り噴き出した後大爆笑が沸き起こる。

一課の女性陣は仕事も出来て皆美人と評判だ。
周囲のテーブルには、見目麗しい女性社員達をぼうっと憧れや恋心を秘めて見つめていた他部署の社員達もいたのだが。急に笑い始めてテーブルをバンバン叩いている彼女達に、驚いた者、若干引いてしまった者もいた。

「え?え?何々~?」

どうしてそんなに爆笑されるのか全く分からない夕鈴の背中を、隣に座る明玉がバシバシ叩く。

「良いよ良いよ、夕鈴は知らなくて!ずっと今のままのあんたでいてね!」

笑い過ぎて目の淵に溢れた涙を拭いながら、見詰めてくる皆の視線は凄く優しい。

課長にも言われた事を、彼女達にも言われて。
でもやっぱり意味が分からなくて、新年早々悩まされる夕鈴だった。


「…一体どういう事~??」


END


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  •  
  • 2015.01/09 17:14分 
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  • 2015.01/10 01:53分 
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Re: No title 

ますたぬ様

こちらこそ、今年もよろしくお願いします(^^♪

楽しんで頂けたようで何よりです~♥
課長も女豹に苛められてきっとたじたじなんでしょうね。
想像するとウケます←ひど…
ナフタリンって何ですか?防虫剤か何かですかね?
これぞホントの虫除け(笑)

今年も各シリーズを梯子しながらちまちま書いていきま~す!
  • posted by 高月慧ネン(ますたぬ様へ) 
  • URL 
  • 2015.01/12 02:58分 
  • [Edit]
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Re: ∑(゚Д゚) 

風花様

そうです!この間頂いたコメントからネタを頂き、早速書いてみました~(^^♪
楽しかったです!←きっぱり。

純真培養の夕鈴はこの手の事にホント疎いです。
何も知りません。
そして変な言葉を聞かないように、周りがガードしていたりして。
慧ネンもこんなお局ならいて欲しいなあと、思いながら彼女達を書いています。

今年も色んな萌を吐き出していこうと思います!よろしくお願いしますね♪
  • posted by 高月慧ネン(風花様へ) 
  • URL 
  • 2015.01/12 03:03分 
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