兎と狼のラビリンス

こちらは白泉社『狼陛下の花嫁』の二次創作ブログサイトです。(作者様・出版社様とは関係ありません)

Entries

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

意地悪上司の秘密

こんばんは、慧ネンです。

昨日は西の祭典でしたね~。行きたかったなあm(__)m
でも天気があまり良くなくて風が強かったから、飛行機で行っていたらかなり揺れたかも。
乗り物に弱い身の上としては、行かなくてセーフだったのかな?

そんな昨日は、当ブログを開設して2年目の記念日でありました(^v^)
何かSSを、と思い、カキカキしてました(当日に。準備が遅い…)
が、結局当日には間に合いませんでした(*_*;

このネタで書こう!と思ったのが10日の夜だったんです(汗)

いや~ネタとしてはかなり前から考えていたのですが、書く機会を完全に逃してました。上司と部下シリーズ・課長の正体(?)です。
時系列としては、「意地悪上司のお知り合い? -二課の男-※」の後ですね。(※前編に飛びます)
書かなくても、皆様きっと分かっていると思うのですが。
せっかくなので、二年目の記念日に託けて書いてみました。

課長の過去話ですので、夕鈴は彼の回想シーンにしか出て来ません(笑)

無駄に長くなってしまいましたが、正体なんて分かっているが読んでやるよ!と言う心優しい方のみお進み下さい(^^♪


***


意地悪上司の秘密


業務終了の時刻がすでに過ぎた午後六時前。
白陽コーポレーション第一営業課には、課長を含め数人の社員が残っていた。

だが今日は花の金曜日。
誰もが遅くまで残業するつもりはないらしく、急ぎの仕事に目途がついた者は帰り支度を始める。

「お疲れ様でした~。」
「お先に失礼します。」

女性社員には「気を付けて帰れよ。」と声を掛け、帰路に着く部下を見送る。

最後まで残っていた男性社員数人が、次々と帰宅の準備を始め出した。

「課長、この後一杯どうです?」

一人の社員が、クイッと杯を傾ける仕草をして問い掛けてくる。
全員が笑顔で嬉しそうな顔をしているので、どうやら一緒に飲みに行くらしい。

黎翔は苦笑いして、首を横に振った。

「…いや、せっかくのお誘いだが、今夜は先約があるんだ。」
「そうですか。それなら仕方ないですね。」

残念そうな表情の部下達に「また誘ってくれ。」と返し、黎翔は連れ立って一課を出て行く彼らを見送った。

「――さて。」

部下が全員帰り、誰もいない一課内。
黎翔はパソコンの電源を落とすと、荷物を持って足早にある場所に向かう。

「先約がある」と言った黎翔に、部下達は『他に飲みに行く相手がいる』と勘違いしたようだが、そんな楽しいものじゃない。出来るならこのまま帰りたいくらいだが、相手はそれを許さないだろう。

長い通路を歩き、いくつもの扉を潜り、黎翔は静かな空間を迷う事無く進んでいく。
そしてセキュリティーロックが掛かった扉に社員証を翳すと、すぐに開いた扉を抜けてさらに奥に進む。
その扉には【重役以外立ち入り禁止】の札が掲げられていた。

本来なら、一課の課長であっても勝手に入り込めない場所なのだが、黎翔は難なく目的の場所に着くと、【社長室】と書かれた扉をノックもせずに開けた。

「…お待ちしておりましたよ。」

社長のデスク…ではなく、傍にあるデスクから、恨めしげな声が掛けられた。

「まあそう言うなよ。」

そこに座って黎翔を睨んでくるのは、社長代理の李順。

「全く貴方と言う人は…!人に面倒事を押し付けて、一課に掛かりっ切りでちっとも本業をしようとしない…!」

浩大が言った通りの言葉で愚痴る李順を無視し、黎翔は街が見渡せる一面ガラス張りの窓の前に置かれている重厚なデスクに腰を下ろす。

普段空席の社長デスクだが、本来の持ち主である黎翔が久し振りに座っても何の違和感も無い。
無駄な会話は好まない彼は、デスクの脇に積まれた書類を手に取り、すぐに目を通し始めた。

キーボードを叩く音と、書類を捲る紙擦れの音だけがしばらく続き、一時間が過ぎた頃。
「そう言えば…」と李順が声を掛けてきた。

「貴方の部下の夕鈴さんとはどうなったのですか?」
「…あいつを名前で呼ぶな。」

私ですらまだ呼んだ事ないのに、お前もか…と黎翔はイライラする。
浩大と言い、李順と言い、どいつもこいつも。

「…どうもこうも無い。今日も怖がらせて泣かせたばかりだ。」

ムスッとしながら言う黎翔を見て、李順は深い溜息を吐く。

「想い続けてきた女性とやっと再会して、せっかく傍にいるのに…。貴方は一体何をしているのですか?」
怖がらせてどうします、バカですか?と彼は容赦ない。

「浩大にも同じ事を言われた。」

昼間、二課の給湯室で散々浩大に詰られてしまった。

黎翔だって、今のままではダメだと分かっているのだ。
けれどどうしても、夕鈴に対して優しく出来ない。
嫌っているわけでも苛めているわけでもないが、自分の態度が彼女に誤解を与えている事にようやく気付いた。

本当は。
彼女に会ったら、言いたい事もあった。
伝えたい想いもあった。
出来ればもっと傍で、自分の隣で笑って欲しいと。

ただの上司と部下ではなく、それ以上の関係になりたいと望むのは許されないのだろうか。

黎翔の瞳に翳りが落ちる。

くるりと椅子を回転させると、目に飛び込んでくるのは摩天楼の街の灯り。

今年も彼女と初めて会った、暑い夏がやって来た。
冷房がきいた室内で、黎翔は夕鈴に出会った日の事を思い出していた。


――4年前。

珀黎翔、19歳。

珀家は、白陽コーポレーションの社長を務めている彼の父親の後任問題で揉めていた。
黎翔には腹違いの兄と弟がいるが、兄には残念ながら大手企業を任せられるほどの技量も器も無かった。
弟は身体があまり丈夫ではなく、おまけに幼過ぎた。

適任は次男の黎翔だけだったが、彼は本妻の子ではなく父親が他に作った愛人の子。
親族からも反対の声が上がり、そして彼の父親自身も、自分の思い通りにならない息子に業を煮やしていた。

黎翔は別にどうでも良かった。
経済に興味があるかと言われれば、正直それほどでもない。
だが他に熱中出来るものもなく、ただ淡々と大学生活を送っているだけ。

ただ、父親の手足となり生きる事だけはご免だった。

自分は一体何がしたいのか。どうすれば良いのか。
進む道が分からずに悩んでいた、蝉の声が煩い、ある暑い夏の日。

小さな公園の木陰にあるベンチに座って、ただぼんやり空を見上げていると。

「…どうしたんですか?」

いつの間にか傍に人が立っていて、そう問いかけてきた。

金茶の髪を後ろに束ねた、活発そうな女の子。
邪念などない無垢な存在だったからだろうが、こんなに近付かれるまで彼女に気付かなかった事に驚く。
心配そうに見つめてくる彼女に、黎翔はつい、ずっと悩んでいたことを口走ってしまった。

少女は、少し首を傾げた後。

「敷かれたレールを、まっすぐ歩くだけが人生じゃない。たまには自分で寄り道してみたら?」

親に道を敷かれていると言って、ただまっすぐ歩くだけが全てではない。
もちろんまっすぐ行くのも良い。でもあちこちに目を向けて、色々な可能性を見出し、寄り道しながら進むのも本人次第。

それを決めるのは親でもなく、他人でもなく、自分自身。
それで良いじゃないかと、彼女は言ってくれたのだ。

そう気付かされた時、ずっと悩んでいた自分がバカバカしくなった。

「そうだね、ありがとう。」

こうやって笑ったのはいつ振りだろう。
心が、軽くなったような気がした。
救われたような、気がしたんだ。

帰宅途中だった少女を見送っていると、「黎翔様、こちらにいましたか。」と眼鏡をかけた男が声を掛けてきた。
三歳年上の李順は、黎翔の幼い頃からの付き人のような存在だった。

「李順、あの少女の事を調べてくれ。」

もうすでに公園を出て行こうとしている少女の背中を指さす。
李順は一瞬、驚いたような表情をしたが、黎翔から悩みや憂いが消えていることに気付いた。

「分かりました。直ちに。」

黎翔の瞳は強い意志が宿っていて、その顔はすでに大手会社を担う大人のものだった。

直ちに、と言った通り、その日の夕刻には少女の身辺調査が黎翔の元に届けられた。

名は、汀夕鈴。
15歳の中学三年生。
家族は母親のみで、現在病気のため長期入院中。
父親の消息は不明。

「…今は進路を考える時期ですが、高校には行かずに働くのが本人の希望だそうです。」
「中卒でか!?」
「教師達も高校進学を進めているようですが、資金の問題が壁になっているみたいです。母親の入院費に加え、学費も必要になるわけですから。彼女は早く就職して、出来るだけ多く稼ぎたいと考えているのでしょう。」
「だが…中卒で雇ってくれる企業などそうないぞ。あったとしても、女の子が稼げる金額なんてたかが知れてる。」

今の時代、どの企業も高卒・もしくは大卒以上を雇う。
中卒では、選べる業種や職種がどうしても限られてしまうだろう。

調査報告書と書かれた書類を持つ黎翔の手に力が入り、用紙に皺が入った。

悩んでいた黎翔を、励ますように言葉を掛けてくれた彼女。
黎翔は唐突に恥ずかしくなった。

きっと自分の悩みなんて、小さくて贅沢なモノ。
彼女の方が、あんな細く小さな身体に沢山の悩みを抱えている。
きっと彼女に選択出来る道は、そう多くはない。それでも彼女は、懸命に前に進もうとしているのだ。
彼女の方が大変なはずなのに、そんな彼女に励まされてしまった。

(情けない姿を見られちゃったな…。)

苦笑いをしながら、黎翔は彼女のために何が出来るか考えた。

そして数日後、黎翔は社のノウハウを学ぶために大学に通いながら父親の下で働き始めた。
二足の草鞋は決して楽なものではなかったが、黎翔は少女の笑顔を思い出しながら懸命に日々を過ごした。

黎翔は父親の言いなりになるつもりは全くなく、社の経営方針自体を変えようと様々な分野にも手を出し、事業を開始する。
その一つとして、経済的に進学や夢を諦めざるを得ない若者を支援する活動を始めた。
初めての取り組みでまだまだ問題点もあるが、少しずつ軌道に乗せていくつもりだ。

そして黎翔は代理人を通して、夕鈴を影から支援していくことにした。
調査報告書によれば、成績はそんなに悪くない。真面目で無遅刻無休。生活態度も良し。
金銭面以外には、何も問題が無い。

高校を卒業して、大学にも行って。
良い企業に就職して欲しい。
そのためには、黎翔は協力を惜しまないつもりだ。

無事に高校に入学して頑張っていると言う報告を受け、黎翔も彼女に負けないように、恥ずかしくないように生きなければと日々精を出す。
もし再び出会えた時、「ありがとう」と言えるように。
そんな男に、そんな人間になろう。

もっと沢山の知識を得るため、海外にも渡った。
多忙な毎日を送りながら、彼女は無事高校を卒業して、進学ではなく就職を選んだ事を知った。
代理人を通して大学入学も支援する旨を伝えたが、「もう援助は必要ない、働きながら少しずつお返ししていきます。」と彼女に断られたとの報告を受けた。

がっかりするのと同時に、いつかどこかで会える日が来るのではないかと思うと楽しみだった。

年が明けて少しした頃、彼女がある企業に内定をもらったという報告を最後に、黎翔は彼女の身辺調査を打ち切った。
彼女がどこに勤めるのかは気になったが、さすがにこれ以上ストーカー染みた事は出来ない。
金銭の返済は振込でも可能なので、彼女の状況を知らなくても問題はなかった。

夕鈴が無事就職が決まって社会人になる同じ春に、黎翔は新社長として白陽コーポレーションに就任する事になった。
前社長の彼の父は会長職に就くようになる。

桜が咲き乱れる春。
白陽コーポレーション入社式。

広い会場を埋め尽くすのは、これから社をますます盛り上げていくだろう若人。そしてすべてが黎翔の部下となる者。
上階から階下を見下ろしていた黎翔は、その中に見知った顔を見付けた。

いや、記憶の中よりも大人びて綺麗になった、三年振りに会う彼女が、いた。

「社長、間もなく始まりますよ。」

いつまでたっても動こうとしない黎翔に、李順が声を掛ける。

「李順」

振り返った黎翔は、獲物を狙う獰猛な肉食獣の瞳をしていて。

「な!?本気ですかっ!?」
「本気だ。」

本日就任予定だった新社長は海外の子会社のトラブルのため、しばらくは社長代理がその任を負う。
そして、本来なら李順がなる筈だった第一営業課の新課長に、黎翔が就任すると言うのだ。

新入社員の一人汀夕鈴は、営業一課に配属が決まっている。
いくら傍にいたいからとはいえ、あまりの傍若無人振りに李順も唖然とするも。
だが楽しそうな彼の、「これは社長命令だ」という言葉に逆らえず、李順は社長代理として挨拶するため壇上に上がった。

入社式が終り、一課に向かう黎翔の足取りは軽い。

――あの暑い夏の日の、出会いから3年。

どんなに離れていても、彼女を忘れた事はない。

「――今日から君達と共に働く、珀黎翔だ。」

記憶の中の彼女は、少女から大人の女性に成長していた。
けれど、キラキラ輝く瞳と眩しい笑顔はあの日のままで。

「…私が君の教育をする事になった。お互い新人同士、頑張ろうな。」

あの日からずっと、想い続けてきた。

「はっ、はい…!汀夕鈴です!…よろしくお願いしますっ!!」


――ああ、夕鈴。やっと会えたね。

いつの日か君に、この気持ちを伝えたい。
心からの感謝と、溢れんばかりの愛を。



その後自分の態度で彼女に嫌われていると誤解されて、結局気持ちを伝えるまでに2年の月日を要する事になるのだが、この時の彼はまだ知る由も無かった。


END


関連記事
スポンサーサイト

Comment

管理人のみ閲覧できます 

このコメントは管理人のみ閲覧できます
  • posted by  
  •  
  • 2015.01/12 08:09分 
  • [Edit]
  • [Res]

 

課長の正体はわかってましたが、入社日当日に夕鈴を見かけて突然決めたのはびっくりでした。
結婚まで行って欲しいけどまだまだ障害があるのかな。でも当分はラブラブして欲しいです(^^)
  • posted by まるねこ 
  • URL 
  • 2015.01/12 08:14分 
  • [Edit]
  • [Res]

管理人のみ閲覧できます 

このコメントは管理人のみ閲覧できます
  • posted by  
  •  
  • 2015.01/14 09:01分 
  • [Edit]
  • [Res]

Re: 漸く読めました。 

聖璃桜様

ご訪問ありがとうございます(^v^)
李順さんは、原作でも二次でも気苦労が絶えません(笑)
夕鈴は足長おじさんの正体を、ずっと知らないままかもしれませんね。
課長は教えそうもないですし☆
例のお話は、デート編が終わって、その後のネタを書き終えたら書きますので、気長~にお待ち下さい(*_*;
  • posted by 高月慧ネン(聖璃桜様へ) 
  • URL 
  • 2015.01/17 02:38分 
  • [Edit]
  • [Res]

Re: タイトルなし 

まるねこ様

慧ネンもビックリしました(笑)
課長、どんだけ夕鈴の傍にいたかったんだ…!?
結婚?結婚なんてまだまだ先の事ですよ~。何せ告白が出会ってから五年後(汗)
一体いつになる事やら。
まだまだ当分ラブラブ?、です!
  • posted by 高月慧ネン(まるねこ様へ) 
  • URL 
  • 2015.01/17 02:41分 
  • [Edit]
  • [Res]

Re: (*´∀`)クスクス 

風花様

ほんとどんだけ…!?ですよね(^^♪
夕鈴が真実を知る日は来るのでしょうか?課長、言いそうにないし。

三年会えずに我慢したのに、二年も傍にいながら告白出来ないなんてヘタレ♪
確かに自業自得ですが、不憫と言うか憐憫の情が湧いてきます←自分で書いておきながら(笑)

これで秘密はなくなったはずだ!うんうん。
  • posted by 高月慧ネン(風花様へ) 
  • URL 
  • 2015.01/17 02:45分 
  • [Edit]
  • [Res]

Comment_form

管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。

左サイドMenu

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

右サイドメニュー

プロフィール

高月慧ネン

Author:高月慧ネン
『兎と狼のラビリンス』へようこそ。
黎翔と夕鈴が大好きな管理人・慧ネンが、溢れる妄想を書き殴るために作ったブログです。
原作沿いや現代パラレル、色々ありますので、お好きなお話をお読み下さい。
よろしくお願いします。

†いらっしゃいませ†

キリの良い数字を踏まれた方は、ご連絡下さい♪

ご訪問中のお客様

現在の閲覧者数:

にほんブログ村ブログパーツ

ブロとも申請フォーム

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

検索フォーム

QRコード

QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。