兎と狼のラビリンス

こちらは白泉社『狼陛下の花嫁』の二次創作ブログサイトです。(作者様・出版社様とは関係ありません)

Entries

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

My Sweet☆Home ~帰る場所~ 3

こんばんは~。
いつもの如く、夜分遅くに失礼します(*_*;

何か書かなきゃ…何か書きたいと思いながら一日が過ぎ、こんな時間にようやく続きを書く事が出来ました。
『書きたい』という意欲を、指に集中出来たら良いんですけどねm(__)m

そんなこんなで、Sweet☆Homeの続きです~(^v^)

ちょっと黎翔パパがパパらしいところを見せる、かな?


***




My Sweet☆Home ~帰る場所~ 3


「すみません、汀と申しますが…。」

数十分後、職員室の扉が開き、顔を覗かせた少女が声を掛けてきた。
かなり急いできたのかハアハアと乱れた息を整えながら、夕鈴は黎翔を見て一瞬表情を強張らせたもののぺこりと頭を下げた。黎翔もそんな彼女に無言で会釈を返す。

二人の微妙な雰囲気に戸惑ったような先生方も、今はいなくなった二人を見付け出す方が先だと判断して、夕鈴に椅子を勧めて状況を話し始めた。

「失礼ですが、高校生くらいに見えますけどもしかして白陽学園の生徒さんですか?」

一通り話し終えた後、一人の保育士がそう聞いて来た。
肯定すると「実は…」と、数日前の事を話し始めた。

園の前を通りがかった女子高校生を見て、どこの学校に通っているかと突然聞いて来たという。

「普段何事にも動じない聖蘭ちゃんが、焦ったようにそう聞いて来たんです。その高校生が着ている制服を見て、『あのお姉ちゃんは、白陽学園の生徒さんね。』と答えると、何度も復唱しながら呟いて。まるで忘れないようにしているようでした。」

それを聞いて、黎翔は二人が夕鈴に会うために白陽学園に向かったと判断した。
先生方の中には、幼い二人だけで行けるはずが無いという者もいたが、黎翔はこれでも二人の父親だ。特に娘の聖蘭は、何でも自分一人で成し遂げようとする力がある事を理解していた。

黎翔の運転する車で白陽学園に向かった二人だったが、車内は重苦しいような静寂で包まれていた。
助手席に座る夕鈴も、窓の方に顔を向けて黎翔を見ようとはしない。

「この間の事だが…。」

耐え切れなくなって、声を掛けた黎翔だったが、「聞きたくないです。」とバッサリ断られて二の句が継げなくなった。

「…今は二人を見付ける事が先決でしょう?」

こちらを向いて睨み付けてくる、彼女の言う事はもっともだ。
確かにその通りなのだが…。

「一つ言っておきますけど、私、貴方を許したわけではないですから。」

プイっとそっぽを向かれて、当然の事だがあの日の自分の行いが許されていない事を痛感した。

いて欲しいと思っていた白陽学園の校門前には、二人の姿はなかった。
けれど隣に立つ大学と、坂の下のコンビニで情報を得る事が出来た。

「あ~あの小さなお客さんね。」

特にコンビニ店員のおばさんは、二人の事を良く覚えていた。二人が勝手に保育園からいなくなった事を聞いて驚いていたが、何時頃ここに来て何を買ってどちらに行ったかも詳しく教えてくれた。

「まだ小さいのに、お姉ちゃんはとてもしっかりしていて。弟さんの手をしっかり握っていたよ。あっちには川があるから、そこの土手に行ったんじゃないかしら?この辺で座ってご飯食べれるって言ったら、そこしかないから。」

おばさんに礼を言ってコンビニを出ると、二人は教えられた方向に走り始めた。

周辺はまだ明るいが、何と言っても幼い二人。
特に清良は、もうそろそろ眠くなる時間だ。
さすがの聖蘭も、弟を抱っこして移動は出来ない。

通学している学校の周辺とは言え、授業が終わったらすぐにバイトに向かって寄り道などしない夕鈴はこちらの方には来た事が無い。

すぐに教えられた通りに川が見えてきて、こんな場所があったんだ…と思う。

土手を見渡していると、草の上に座り込んだ小さな姿が見えた。

「見付けた…!」

慌てて駆け出した夕鈴に、黎翔も続く。

「――聖蘭ちゃん、清良ちゃんっ!!」

どこか怪我してないだろうか、心細くて泣いていないだろうかと焦燥感が募り、切羽詰まったように叫ぶとパッと聖蘭が振り返った。

「お姉ちゃん、パパ…っ!!」
「まあ~っ!」

彼女の肩に凭れ掛かっていた清良も夕鈴に気付き、泣きながら声を上げた。

夕鈴は凄い勢いで走ってくると、聖蘭に向けて手を伸ばしてきた。
その瞬間、聖蘭の脳裏に、手を振り上げ叩いてくる母親の姿が浮かんだ。
夕鈴お姉ちゃんはそんな事しないと分かっているのに、母親とお姉ちゃんは似ても似つかないのに。

身に沁み込んだ恐怖が、その光景をフラッシュバックさせたのかもしれない。
思わずギュッと目を瞑った聖蘭だったが、彼女が次に感じたのは痛みではなく温かい抱擁だった。

「もうっ!勝手にいなくなっちゃダメでしょ…!?心配したんだからねっ!!」

きつい言葉とは裏腹に、二人をギュッと抱き締めてくる夕鈴の腕は優しい。

(あったかい…。)

聖蘭には母親に抱き締められた記憶が無い。
清良は幼過ぎて、母親の顔すら覚えていないだろう。

夕鈴の腕の中は、とてもいい香りがして柔らかくて。
初めて『安らぎ』を感じた。

(ママに抱き締められるのって、こんな感じなのかな…。)

実の母親にももらえなかった愛情を注いでくれる夕鈴お姉ちゃんが、ママだったら良かったのに。
ママだったら一緒のお家に住めて、いつでも傍にいられるのに。

「ごめんなさい、お姉ちゃん。でも、どうしても、お姉ちゃんに会いたかったの…!!」

会えなかった寂しさを埋めるように、聖蘭は夕鈴にしがみ付いて泣き始めた。

「聖蘭ちゃん…。」

わんわん泣き続ける聖蘭。
その声に驚いた清良も、共鳴するように泣き始める。

よしよしと二人の小さな頭を撫でたり、背中をポンポン叩いてあやしながら、夕鈴は目頭が熱くなるのを感じた。

二人の父親に無理矢理抱かれたあの日から、聖蘭に会えなかったのは理由があった。
翌日こそ初めての経験で熱を出して寝込んでしまったが、それからは普通に学校に行っていた。
ただ、学力テストがあって帰宅時間が早まったり、バイトで夜遅くなって時間が合わなかっただけなのだ。

もっとも、二人の父親には会いたくなかったので、聖蘭には悪いが会えない事にホッとしていた。
こんなにも彼女が、自分に会いたいと思っていてくれているなんて知らなかった。

どんなに大人びていても、どんなに強がっていても、やっぱりまだ小さな子供なんだなあと二人を抱き締めながら夕鈴は思った。

ようやく落ち着いてきた聖蘭は、カサリと草を踏む音にスンスンと鼻を鳴らしながら顔を上げる。
夕鈴の肩越しに、感情が読めない表情をして立っている父親の姿があった。

娘と息子が夕鈴にしがみ付いて泣いているのを、黎翔は複雑な思いで見ていた。

聖蘭が泣かなくなったのは、いつ頃からだっただろう?
清良が他人に懐くのは、初めてではないだろうか?

血の繋がった親子なのに、黎翔は子供達の事を何も知らない事に気付いた。

我侭も言わずしっかり者で、子供らしからぬ聖蘭だが、やはり年相応の子供で。幼い清良には、まだまだ母親と言う存在が必要なのだと理解する。

妻と離婚して一年近く。
俺は仕事にかまけて、子供達をきちんと見た事があっただろうか…。

子供達の目線に合わせて、黎翔は夕鈴の傍に膝を着く。

「…聖蘭、清良。」

目を真っ赤にした二人の視線が向けられる。

「…沢山の人に、迷惑と心配を掛けた事が分かるか?」

蒼白になって探し回っていた園の先生方。
話を聞いて自転車を飛ばしてやって来た夕鈴。

自分達の行いが周囲に及ぼす状況を二人は理解しているだろうか。

初めて見る黎翔の父親らしい姿に夕鈴は少し驚いたが、親子の会話を邪魔する事無く、静かに、優しく見守る。

「はい。ごめんなさい、パパ。」
「ごめなちゃい。」

聖蘭も、そして清良もきちんと「もうしません。」と自分達の行いを謝った。

「明日、先生達にも謝るんだぞ?」
「はい。」
「あいっ!」

きちんとした返事に、「なら良い。」と黎翔は別段怒ることなく二人の頭を撫でる。

聖蘭は、そんな父親に困ったように思っていた事を問い掛ける。

「パパも…聖蘭達がいなくなって心配した?」

普段興味も関心も示さないパパだから。
よく聞く世間体がどうとか、そう言うのじゃなくて。

パパは本当に、心配してくれたのかな…?

黎翔は俯いて聞いて来た聖蘭の言葉に一瞬言葉を無くしたが、自分の今までの態度を考えればそう思ってしまうのは当たり前だと思い、少し苦い気持ちで返事を返す。

「…当たり前だろ?」

柔らかい黒髪をくしゃくしゃと撫でると、聖蘭はきゃあきゃあと声を上げて泣きながら笑った。


続く


関連記事
スポンサーサイト

Comment

 

夕鈴はまだ厳しいですね。当たり前ですけど。黎翔パパはちょっぴりパパっぽくなってきたのでこれから少しずつ親子の関係も変わっていくのかな。早くみんなが幸せになれますように
  • posted by まるねこ 
  • URL 
  • 2015.01/17 13:28分 
  • [Edit]
  • [Res]

管理人のみ閲覧できます 

このコメントは管理人のみ閲覧できます
  • posted by  
  •  
  • 2015.01/17 20:54分 
  • [Edit]
  • [Res]

管理人のみ閲覧できます 

このコメントは管理人のみ閲覧できます
  • posted by  
  •  
  • 2015.01/18 11:30分 
  • [Edit]
  • [Res]

Re: タイトルなし 

まるねこ様

夕鈴じゃなくても、そう簡単に許せる事ではないでしょうね。
人間としてもパパとしてもダメダメな黎翔さん。
これからどんな風に変わっていくのか、慧ネンも楽しみです(^^♪
  • posted by 高月慧ネン(まるねこ様へ) 
  • URL 
  • 2015.01/24 00:02分 
  • [Edit]
  • [Res]

Re: タイトルなし 

陽向様

お久し振りです~。お元気でしたか?
妄想癖は酷いのに、中々SS(形)に出来ない慧ネンです(*_*;
このシリーズの二人も、ずるずると関係を続けていくんだろうな~と言う、漠然とした不安が…。
続き、頑張ります(^v^)
  • posted by 高月慧ネン(陽向様へ) 
  • URL 
  • 2015.01/24 00:05分 
  • [Edit]
  • [Res]

Re: タイトルなし 

ますたぬ様

お待たせしました~!
説得?黎翔パパが?出来るのか!?
パパは自分の気持ちにも気付いていないと思われます。
その辺は子供達が上手くフォローしてくれるのではないかと☆
  • posted by 高月慧ネン(ますたぬ様へ) 
  • URL 
  • 2015.01/24 00:11分 
  • [Edit]
  • [Res]

初めまして 

こんばんは。以前から時々お邪魔させて頂いておりましたが、初めてコメントさせて頂きます。

子供達の心の描写が丁寧で、思わず涙が滲んで来ました。健気な子供達が夕鈴に出会えて良かった。
黎翔パパは、陛下じゃなければ許せないほどの人でなしっぷりですが、この先きっと夕鈴にいい影響を受けてあったかいパパになってくれるんですよね。

この後のお話も、一気に読ませて頂きます♪当分続くと嬉しいな~~
  • posted by ハニー 
  • URL 
  • 2015.05/05 22:21分 
  • [Edit]
  • [Res]

Re: 初めまして 

ハニー様

初めまして!コメントありがとうございます(^^♪

以前から遊びに来て下さっていたとの事、とても嬉しいです~♥
心の描写は、読んでいる方に気持ちが伝わるように毎回悩みながら書いています。
深い傷を負っている子供達が、人でなし(笑)の黎翔パパが、夕鈴に出会えた事により、良い方向に変わっていく様子をこれからも書いていこうと思います(^^♪

いつの日か皆幸せになれますように…。
  • posted by 高月慧ネン(ハニー様へ) 
  • URL 
  • 2015.05/12 03:53分 
  • [Edit]
  • [Res]

Comment_form

管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。

左サイドMenu

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

右サイドメニュー

プロフィール

高月慧ネン

Author:高月慧ネン
『兎と狼のラビリンス』へようこそ。
黎翔と夕鈴が大好きな管理人・慧ネンが、溢れる妄想を書き殴るために作ったブログです。
原作沿いや現代パラレル、色々ありますので、お好きなお話をお読み下さい。
よろしくお願いします。

†いらっしゃいませ†

キリの良い数字を踏まれた方は、ご連絡下さい♪

ご訪問中のお客様

現在の閲覧者数:

にほんブログ村ブログパーツ

ブロとも申請フォーム

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

検索フォーム

QRコード

QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。