兎と狼のラビリンス

こちらは白泉社『狼陛下の花嫁』の二次創作ブログサイトです。(作者様・出版社様とは関係ありません)

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My Sweet☆Home ~帰る場所~ 4

こんばんは、慧ネンです。
珍しい時間に更新~(^^♪

ちょっとある事に煮詰まっていまして、息抜きでSweet☆Homeの続きを書き上げてしまいました。
『~帰る場所~』は、これで終わりです。

このブログを立ち上げてもう二年が過ぎましたが、昨日の訪問者が初めて200人越えていたり、気が付いたら「狼陛下の『花嫁』選び・其の六」に111拍手もらっていたり…。
嬉しい事続きです☆

皆様本当にありがとうございます♥
これをバネに、もろもろ頑張りますね~♪



***

 
My Sweet☆Home ~帰る場所~ 4


少し肌寒い秋風が吹いて来た。
ブルリと身体を震わせた聖蘭に、よくよく見れば彼女は上着を着ていない。どうしたのかと思えば、彼女の上着は清良が羽織っていた。
幼い弟が冷えないように、聖蘭は自分の上着を着せたのだろうと思うと、やっぱりお姉ちゃんなんだなと微笑ましく思う。
夕鈴は自分のカーディガンを彼女に掛けてあげた。

すっかりおねむになっている清良を抱っこして立ち上がると、クイッと遠慮がちに服の裾を引っ張られた。
見下ろせば聖蘭が、申し訳ないような、物言いたげな表情で夕鈴を見上げていた。

「聖蘭ちゃん…。」

夕鈴は困った。幼いとはいえ、清良もそれなりに重たい。聖蘭も標準体重より少し軽いくらいだが、夕鈴の腕力では二人一緒に抱っこする事は出来ない。

「聖蘭。」

見かねた黎翔が腕を差し出すが、聖蘭は俯いていやいやと首を横に振るばかり。

我儘も言わず、何でも自分一人でやってしまう彼女が、珍しく駄々を捏ねている。
いや、大人びていると周囲が勝手に思っているだけで、彼女はまだ親に甘えたい子供なのだ。幼い頃から与えてもらえなかった親からの愛情に、飢えているだけだ。

「聖蘭ちゃん。」

夕鈴は彼女の前に背中を向けてしゃがみ込むと、首を回し後ろを見る。

「お姉ちゃんは支える事が出来ないから、しっかり背中にくっついて離れずにいられるかな?」

聖蘭はこくりと頷くと、夕鈴の背中にべったりとへばり付いて、彼女の首に小さな腕を回した。
黎翔に支えてもらいながら、ゆっくりと立ち上がる。ずっしりとした重みが前後に掛かるが、歩けないほどでもない。

夕暮れに染まる川べりの道を、車を停めてあるコンビニに向かって歩く。

「…大丈夫か?」
心配そうに声を掛けてくる黎翔に、夕鈴は苦笑いした。

「明日、筋肉痛になるのを覚悟した方が良いですね。」
そう言いながらも嬉しそうな夕鈴に、黎翔も小さく笑う。

そんな二人に、特に夕鈴お姉ちゃんに申し訳なく思いながら、落ちないようにしがみ付く。その背中はとても温かくて、聖蘭は頬を押し付けて心地良い揺れに身を委ねた。


黎翔がルームミラーで後部座席を見ると、聖蘭は夕鈴に凭れて、清良は彼女の膝枕で眠っていた。夕鈴はそんな二人を優しい瞳で慈しむように見ながら、小さな頭を起こさないように撫でている。
その表情は母性に満ちていて、差し込む夕日に彼女の金茶の髪がキラキラ光って美しく、黎翔は目を細めた。

「二人の母親…つまり私の元妻だが、彼女は全く子育てをしない女だった。」

語り掛けると言うより呟き始めた黎翔の言葉に、夕鈴は顔を上げるとミラーに映る彼の顔を見つめる。

「聖蘭も清良も、母親の愛情を知らない。特に聖蘭は、『女』だと言う事で見向きもされなかった。」
「…どうして、女の子じゃダメだったんですか?」

こんなに可愛いのに…と、聖蘭の艶やかな黒髪を撫でる。

「後継ぎが必要だったからだ。」

親に言われた結婚だった。特に好きな人もいなかった黎翔は、別に誰でも良かったし、結婚自体どうでも良かった。
妻になった女も、産まれた子供の事もどうでも良かった。
だから仕事に託けて、家庭を放り出し、家族に見向きもしなかった。

彼女を愛そうともせず、子供も任せっぱなしで何もしてこなかった。
実の父親なのに、黎翔は二人の子供の事を全く知らない事に先程気付いた。

育児放棄した上、子供への虐待が発覚したため妻とは別れたが、実は彼女も被害者で、本当に悪かったのは自分だったかもしれない。

「…別れた奥様の事は、お二人の問題なので何も言いませんけど、聖蘭ちゃんと清良ちゃんに『悪かった』と言う気持ちがあるなら、これからの態度を改めていったらどうですか?」

今、二人の保護者は父親である黎翔のみ。
だったらこれから、父親らしい事をしていけばいいと思う。

「…そうだな。」

幼い二人と向き合う事は大変だと思うけれど、少しずつ頑張ってみようと黎翔は思った。

地下駐車場から、聖蘭を黎翔が、清良を夕鈴が抱いて部屋まで上がる。
いつも寝室代わりに使っている和室に二人を寝かせると、ちょっともぞもぞと動いて起きるかな?と思ったが、結局目を覚まさなかった。

きちんと布団を掛けてあげてから、夕鈴は和室を出てキッチンに向かうと、冷蔵庫を覗き込む。
初めてこの部屋に訪れた時にはほとんど何も入っていなかった冷蔵庫も、今は少し食材が入っていた。
夕鈴が買い置きして冷凍庫に入れておいた鶏肉、野菜室には黎翔が買って来たのかブロッコリーもあり、シンクの下にはじゃがいもと玉ねぎもあった。

こちらも買い置きのルウがあったので、シチューを作る事にした。材料はそこそこ揃っているし、人参が無いが冷凍庫にあるミックスベジタブルを入れたらOKだろう。

鶏肉をレンジで解凍し、野菜を切りながらふと背後に視線を向けると、黎翔が畳の上に胡坐をかいて座り、眠っている我が子をじっと見つめていた。

今までの事、これからの事。
まだまだ新米のパパには、色々と思う事があるのだろう。
自分の過ちに気付いたのなら、彼はこれから悩みながらも正しい道を辿って行けるはず。

トントンと野菜を刻む音、コトコトと音を立てる鍋。
その音に混じり優しい歌が聞こえてきて、黎翔は座ったままキッチンの方を見た。
そこには料理をしながら子守唄のような曲を口遊む、エプロン姿の少女がいる。

誰かがキッチンに立ち、料理をしている。
普通の家庭では当たり前の事かもしれないが、元妻は料理をしなかったため、こんな立派なキッチンがありながら珀家ではそれをする者がいなかった。

楽しそうに料理をしている姿を見て、どうして彼女は、他人なんだろうと思う。
こんなにもこの景色に馴染んでいるのに、ここは彼女が本来いる場所ではない。
彼女の帰る場所はここではない。
いつかはいなくなってしまう、赤の他人なのだ。

それがどうしようもなく悲しく、もどかしい。

優しい歌を聞きながら、黎翔は項垂れるように目を閉じた。

仕事の疲れもあり、座ったままうつらうつらしていたようだ。
「珀さん。」と声を掛けられ目を開けると、部屋の入り口に夕鈴が立っていた。

二人を起こさないように和室を出てキッチンに行くと、彼女はエプロンを外して椅子に掛けている所だった。

「…じゃあ私帰りますので、七時頃には二人を起こしてご飯を食べさせて下さいね。寝過ぎると夜眠れなくなりますから。」
「…帰るのか?」

思わずそう呟いてしまった黎翔を、きょとんとして見てくる。

「帰りますよ?貴方がいるなら、いつまでもお邪魔するわけにはいかないので。」

そう、ここは彼女の家ではない。
家主がいるのだから、他人の家に遅くまでいる理由が無い。
夕鈴には、他に帰る場所がある。

シチューを温め直して出すように言いながら、玄関に向かう夕鈴の後ろを着いて行く。

「…園まで送る。」

保育園に置きっ放しの自転車を取りに行くと言う彼女にそう提案したが、断られてしまった。

「じゃあ、下まで送る。」

最大限譲歩してそう言っても、「良いですよ、子供じゃあるまいし一人で帰れます。」と首を振られた。

暗くなっているとはいえ、まだ電車もバスも動いている時間帯。
どうしてこんなに心配するんだろうと、夕鈴は首を傾げる。

「貴方はパパなんだから、二人についていてあげて下さい。」

それが父親である彼の役目だろう。

「それじゃあ、さようなら。」
「…あ、ああ。」

黎翔はもう何も言えなくなって、扉の向こうに消える彼女の笑顔を見つめていた。

黎翔はこの部屋に残り、夕鈴は自分がいるべき場所に帰る。
――当たり前の事なのに、何故かそれが凄く寂しい。

パタンと扉が閉まり、部屋に静寂が訪れた。


END

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Comment

 

┃q・ω・∪ 終わり?終わり?

それじゃ次の新しいお話始まるのかな?
∪〃ω〃∪ ドキドキ←

それにしても黎翔サン。
一気に惹かれすぎですwww
夕鈴が帰っちゃうのが寂しくて渋るなんて。
それじゃ子犬ですよ?
話し方や態度は狼なのにね( ´艸`//)
  • posted by 桃月 
  • URL 
  • 2015.01/28 00:35分 
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終わっちゃったの~。黎翔パパ頑張らなきゃ!
是非続きを・・・。
  • posted by ますたぬ 
  • URL 
  • 2015.01/28 01:34分 
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  • [Res]

 

私もこれは続き読みたいです。黎翔パパの成長も見守りたいし、2人の子供もかわいいし。
続き書いてください
  • posted by まるねこ 
  • URL 
  • 2015.01/28 22:10分 
  • [Edit]
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続きupありがとうございます!!
聖蘭ちゃんと清良くん見つかってよかったですヽ(;▽;)ノ
でもまだ夕鈴と黎翔が仲直りしてないのが……((∩•́ι_•̀*∩))"
次くらいで仲直り出来るといいですね!
  • posted by 陽向 
  • URL 
  • 2015.01/30 01:12分 
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Re: タイトルなし 

桃月様

ええ、終わりです~。どこかで切らないと、収集着かなくなっちゃう(*_*;
でも続きはありますよ。ストーリーは出来ているので、後はそれを文章にするだけ。
それが一番難しいんですけどm(__)m

パパ、一気過ぎますかね?
あれでもまだ自覚ないんですよ(笑)
聖蘭ちゃんに「パパ、それって好きって事でしょ?」とか言われて初めて自分の気持ちに気付いたらウケる(^^♪
  • posted by 高月慧ネン(桃月様へ) 
  • URL 
  • 2015.02/01 01:33分 
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Re: タイトルなし 

ますたぬ様

終わっちゃったの~(^v^)
パパは色々頑張らなきゃですよね!
続きは今文章を練り練りしてます(汗)
  • posted by 高月慧ネン(ますたぬ様へ) 
  • URL 
  • 2015.02/01 01:38分 
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Re: タイトルなし 

まるねこ様

パパの成長…子供達の成長じゃなくて、パパ…(ププ)
続きはもうちょっと待って下さいね~m(__)m
  • posted by 高月慧ネン(まるねこ様へ) 
  • URL 
  • 2015.02/01 01:40分 
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  • [Res]

Re: タイトルなし 

陽向様

ようやく続きを書く事が出来ました~。
ストーリー的にはまだまだですけどねm(__)m
二人の関係も、聖蘭と清良の事も、ゆっくりと書いていこうと思っています。
仲直り…でも喧嘩しているわけじゃないんですよね、この二人。
自分の気持ちに気付くのはいつになる事やら(笑)
  • posted by 高月慧ネン(陽向様へ) 
  • URL 
  • 2015.02/01 01:53分 
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