兎と狼のラビリンス

こちらは白泉社『狼陛下の花嫁』の二次創作ブログサイトです。(作者様・出版社様とは関係ありません)

Entries

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

My Sweet☆Home~聖蘭のひな祭り~

こんばんは、慧ネンです。

安定の水曜日(嘘)、更新間に合うか…!?
申し訳ないですが、本日はリクエスト小説の続きではありませんm(__)m

ひな祭りネタでちょっと話が浮かんだので、一日遅れですが書いてみました。
お暇つぶしにどうぞ。

本編より少しだけ未来(翌年三月)のお話です。
ツッコミ所満載だと思いますが、種明かしは本編の方で…。
黎翔と夕鈴の関係も少~し変化が見られます(^v^)

先の事などまだ知りたくないと言う方は、閲覧をお控え下さいね(*_*;



***


My Sweet☆Home~聖蘭のひな祭り~


二月半ばの日曜日。
夕鈴はデパートを訪れていた。
珀家でハウスキーパー兼ベビーシッターのバイトを始めて数カ月が過ぎた。
この日は黎翔の仕事が休みで、今春から小学校に入学する聖蘭に必要な物を購入するために珍しく彼も同行している。

「ねえねえ、お姉ちゃん。これなあに?」

くいくいと服の裾を引っ張って、夕鈴に問い掛けてくる聖蘭。
そして視線をキョロキョロさせている、夕鈴に抱っこされている清良。
もちろん子供達も一緒だ。

夕鈴がメモに書き出した買い物をあらかた終えて、後は一階の食料品売り場での買い物だけになった。
黎翔は車に荷物を入れてくるから先に買い物をしているように言って、重そうな荷物を軽々と持って一人で行ってしまった。

一階に下りるためエレベーターに行こうとした夕鈴は、手を繋いでいた聖蘭がいつの間にかいなくなっているのに気付いた。慌てて振り返ると、遠くに何かを見上げている小さな姿が見える。

「聖蘭ちゃーん!行くよ~?」

呼び掛けるとハッとしたように駆け寄ってきて、ギュッと夕鈴の手を握ってくる。

「何か気になるものがあったの?」

そう問い掛けると、彼女は首を振りながら、「ううん。何でもないの!」と笑った。

ベビーカートに清良を座らせていると、聖蘭がカゴを持ってきてくれた。

「お姉ちゃん、今日は辛くない?」

まだあまり目立たないが、見る人が見れば分かる夕鈴のお腹にそっと手を当てて聖蘭が聞いて来た。
弟の面倒もよく見て、手伝いもしてくれて、とっても優しい聖蘭。

「ありがとう。大丈夫よ。」

柔らかい黒髪を、そっとナデナデしてあげた。

人混みに興奮したのか疲れたのか、お風呂に入ってご飯を食べ終えるとすぐ、二人は夢の中に旅立っていった。
順番にお風呂に入って、リビングで医学書を読んでいる黎翔にお茶を差し出す。
キッチンで洗い物をしながら、茶をすすっている彼に昼間の事を話してみた。

黎翔は夕鈴の話を聞いて、ちょっと複雑そうな、困ったような、何とも言えない表情をした。
そして夕鈴に一緒に来るように言うと、玄関脇の倉庫代わりになっている部屋に向かった。

「わあ…!」

部屋の中から黎翔が引っ張り出してきたものを見て、夕鈴は感嘆の声を上げる。
見事なそれに見入っていたが、ふと気付いて「あ…」と戸惑った声を洩らした。

黎翔の父母、聖蘭と清良にとっては祖父母だが、彼らが用意した祝いの品。
だがここには、鯉のぼりや兜と言った男の子…清良に贈られた物しか見当たらない。
――そう、聖蘭のための贈り物が無いのだ。

夕鈴はハッとして、目を伏せた。
あの時、デパートで聖蘭が立ち止っていた場所には、来月3月3日の雛祭りがディスプレイされていた。
彼女が見上げていた、その視線の先には、見事な雛人形が…。

跡取りを望む祖父母に、『女の子』だと言う事で見向きもされなかった聖蘭。
待ち望まれて生まれてきて、祝ってもらえる弟。
彼に届く贈り物を、どんな思いで見つめていたのだろう?

ぽたぽたと、床に着いた手に涙が流れ落ちる。
そんな夕鈴の傍に膝を付き、黎翔は彼女の頭を宥めるように撫でた。

血の繋がりも無い聖蘭を我が子のように愛し慈しんでくれる夕鈴が、彼女の事を思い静かに泣いている。
長い間子供に関心を持てなかった黎翔は、今の今まで、父母が清良にだけ贈り物をしていた事に気付いていなかった。
荷物が届いても邪魔くさいと思い、物置(ここ)に放り込んで見向きもしなかった。

情けなさと同時に、恥ずかしくなった。
非があるのは父母だけじゃない。
むしろ聖蘭の父親である自分にこそ、最大の落ち度がある。

「…夕鈴。」

呼ぶと、目を真っ赤にしたまま彼女は黎翔を見た。

「来週の日曜日。ちょっと付き合ってくれないか?」


『どうしてあんたは女なの?』
『女だったら産まなきゃ良かった。』

『ほ~ら、清良。鯉のぼりだぞ。』
『清良は可愛いねえ。後は跡取りに相応しく、立派に育ってくれれば…。』

ねえ、ママ。おじいちゃん、おばあちゃん。
聖蘭はいらない子なの?
生まれて来ちゃいけなかったの?

だから誰も聖蘭を見てくれなくて、お誕生日も祝ってくれないの?

ねえ、誰か教えて…。


3月3日。
珀家の朝はいつも早いが、今朝は普段より30分ほど早く子供達を起こした。
それと言うのも、聖蘭に贈り物を披露するためだ。

「聖蘭ちゃん、聖蘭ちゃん。」
「はーい!」

元気に返事した聖蘭においでおいでと手招きして、普段はあまり使用していない和室に連れて行く。
部屋には黎翔もいて、出勤前に一仕事した彼は汗を拭っていた。

「ほら見て、聖蘭ちゃん!」

障子を開け放つと、部屋の奥に飾られた見事な雛壇が聖蘭の目に飛び込んできた。

「わああっ!おひな様だー!!」

夕鈴から離れ、飛び付くように雛壇に駆け寄る。
そして噛り付くようにじっと雛飾りを見つめている。

「これはね、聖蘭ちゃんのお雛様だよ。」
「えっ!?聖蘭の…!?」
「そう。」

興奮したように頬を真っ赤にしている聖蘭が微笑ましくて、夕鈴はうふふと笑う。

本当はもっと早く飾ってあげたかったのだが、欲しかった商品の在庫が無く取り寄せになってしまい、昨日届いたばかりだ。子供達が寝た後、遅くに帰宅した黎翔と二人、四苦八苦しながら飾り付けた。
とっても嬉しそうな聖蘭に、買って良かったと思っていると。

「綺麗~」とか「大きい」と感嘆の声を上げていた彼女が、突然ポロポロと泣き始めた。
夕鈴と黎翔は驚いて、一体どうしたのかと慌てる。

「聖蘭ちゃん?」
「聖蘭、どうした?」
「ねえちゃ?」

聖蘭の傍に膝を着いて問い掛けると、雛壇を見上げたまま泣いていた彼女はポツリと呟いた。

「…聖蘭、生まれてきて良かったんだよね?」

そう。
今日は聖蘭の、六歳の誕生日。

今まで、誰にも祝ってもらえなかった。
だから、どうして生まれてきたのだろうと心のどこかで思っていた。

その言葉で、小さな彼女の葛藤や苦しみを知った黎翔と夕鈴は、雷に打たれたような衝撃を受けた。
いつもにこにこしているその笑顔の裏で、聖蘭はずっと誰にも言えない思いに苦しんでいたのだ。今更ながら、本人の口からそんな言葉を聞くと、どうしてもっと早く気付いてやれなかったのだろうと悔やむ。

小さな身体を、ギュウッと抱き締める。

「当たり前だろう。」
「私は聖蘭ちゃんの事大好きよ。生まれて来てくれてありがとう。」

「パパ…お姉ちゃん…。」
「きよもっ、きよもねえちゃのことしゅき!」
「清良…。」

清良も自分も自分もと、小さな身体で訴えてくる。

「…うん、ありがとう。」

ぐずぐずと鼻をすすりながら、涙を拭う。

「今夜はパーティーよ。晩ご飯は腕を振るうから、お腹すかせててね。」

聖蘭と清良にそう言って、夕鈴は黎翔を振り返る。

「可愛い娘の誕生日なんだから、もちろん早く帰ってくるわよね、パパ?」
「う…善処、する…。」

夕鈴に軽く睨まれて、どぎまぎしている父を見て聖蘭は笑う。

「パパが大切なお仕事しているの知ってるから、無理しなくていーよ?」

黎翔と夕鈴は、思わず顔を見合わせた。
どこまでも大人な娘に、二人は驚かされてばかりだ。

「さ、ご飯食べて、保育園に行く準備しましょうか。」

パンパンと手を叩き、夕鈴は皆を促す。

「聖蘭ちゃん。今週の土曜日に、このお雛様一緒に片付けようね。」

リビングに向かいながらそう言うと、聖蘭はきょとんと見上げてきた。

「そんなに早く片付けちゃうの?」

もっと見ていたいと言う彼女に、「お雛様は早く片付けないとお嫁に行くのが遅くなるって言われているの。」と説明する。

首を傾げていた聖蘭はにこっと笑って、「別に良いよ~。そうしたらパパやお姉ちゃんや清良と、ずっと一緒にいられるって事だよね?」と嬉しそうに言った。

黎翔と夕鈴は、そういう考え方もあるかと苦笑いする。

けれど今はそう思っている彼女も、いつの日か好きな人が出来て、幸せな家庭を築く日がやってくる。
小さな娘の後姿に、二人はまだ遠い未来の姿を重ね、思いを馳せた。


END


関連記事
スポンサーサイト

Comment

管理人のみ閲覧できます 

このコメントは管理人のみ閲覧できます
  • posted by  
  •  
  • 2015.03/05 00:27分 
  • [Edit]
  • [Res]

管理人のみ閲覧できます 

このコメントは管理人のみ閲覧できます
  • posted by  
  •  
  • 2015.03/05 00:55分 
  • [Edit]
  • [Res]

Re: タイトルなし 

フルグラ様

早速コメント下さり、ありがとうございます~。
慧ネンの更新日は、仕事の休みによって変わりますね。何気に水曜日が多かったみたいで、二月は安定の水曜日になってました(笑)
今回はギリギリでした(*_*;
いや~ご訪問はとっても嬉しいんですけど、塾帰りの兄ちゃんと、愛する旦那様は構ってあげましょうね?
一度更新したら、削除はしませんので(笑)いつでも読みに来てください!(^^)!
待ってます~♥
  • posted by 高月慧ネン(フルグラ様へ) 
  • URL 
  • 2015.03/05 00:57分 
  • [Edit]
  • [Res]

管理人のみ閲覧できます 

このコメントは管理人のみ閲覧できます
  • posted by  
  •  
  • 2015.03/05 01:11分 
  • [Edit]
  • [Res]

Re: タイトルなし 

フルグラ様

ああ、コメント行き違い…(*_*;
今回は明るい話題のネタに対し、ちょっと重い話になっちゃってましたね。注意書き入れた方が良いかなあ…。
いつも笑顔で悩みなんてないように見える人ほど、何かしら抱えている物なんですよね。
でもその心の内を見せれる存在が出来た事が、彼女にとって何よりだったと思います。
更新が木曜日からの活力になれて良かったです!
慧ネンが住んでいる場所は田舎なので、新刊は明日は出ないだろうなあ…。
早く手に入れる事が出来るフルグラさんが羨ましいです(*_*;
忙しい木曜日、萌のために乗り切って下さいね♪
  • posted by 高月慧ネン(フルグラ様へ) 
  • URL 
  • 2015.03/05 01:16分 
  • [Edit]
  • [Res]

Re: タイトルなし 

フルグラ様

本日第三弾(笑)
週半ばになると、疲れてきますよね~。早く就寝と言っても、もう一時ですが(汗)
沢山コメント下さって、とても嬉しいです。
コメントや拍手などの皆様の反応は、慧ネンの活力剤☆
次の意欲にもなります(^^♪
妄想を上手く文章に出来ないというジレンマをいつも抱えていますが、好き放題書かせて頂いてます。
これからも頑張りますね~。
※夕鈴の黎翔への「パパ」呼びかけですが、もう出会って半年近く経つから、こういうやり取りもするかな~と思いながら書きました。黎翔パパも夕鈴の事を名前で呼んでますしね♪
  • posted by 高月慧ネン(フルグラ様へ) 
  • URL 
  • 2015.03/05 01:22分 
  • [Edit]
  • [Res]

 

水曜だから更新ありそうって思ってたのに寝落ちしてしまいました。
いつの間にか2人の仲がいい感じに(^^)
早くここまでに至る話が読みたいです。
そして聖蘭ちゃんがかわいそうで夕鈴と一緒に涙しました。
でもこれからはきっと幸せだよねと思っています(^^)
また更新を楽しみにお待ちしてますね♪
  • posted by まるねこ 
  • URL 
  • 2015.03/05 04:18分 
  • [Edit]
  • [Res]

 

┃q-ω-∪………ユーリンノオナカ…

ということは!
そーゆートコに落ち着いたということですね!!
そこに至るまでのお話が楽しみだ♪
( ´艸`//)
  • posted by 桃月 
  • URL 
  • 2015.03/05 09:23分 
  • [Edit]
  • [Res]

管理人のみ閲覧できます 

このコメントは管理人のみ閲覧できます
  • posted by  
  •  
  • 2015.03/05 10:34分 
  • [Edit]
  • [Res]

Re: タイトルなし 

まるねこ様

水曜日と言っても、更新時間はまちまちですからね~。
主に夜中~明け方に(笑)
最終的にはこんな感じの関係になったら良いなあと思っています。
まだまだ話途中なので、どう転ぶか分かりませんが。
聖蘭は小さいけどしっかりしてて大人びていますが、外に出せなかった色々な感情があるんだよと言うのを書いてみました。夕鈴がいるから、彼女もきっと幸せになれると思います(←パパは?)
  • posted by 高月慧ネン(まるねこ様へ) 
  • URL 
  • 2015.03/08 21:05分 
  • [Edit]
  • [Res]

Re: タイトルなし 

桃月様

アハハハハ。やっぱりこうなっちゃいました。
でもまだ一悶着あるのです。(企業秘密)
そこに至るまでを頑張って書き進めていきます!!
そしてその後も…
  • posted by 高月慧ネン(桃月様へ) 
  • URL 
  • 2015.03/08 21:10分 
  • [Edit]
  • [Res]

Re: No title 

ますたぬ様

どんなに大人びていても、やっぱりまだ五歳の子供なんですよね~。
夕鈴に一杯甘えて、子供らしい感情を爆発させてほしいと思います←誰か書いて…。
パパの職業はアレです。さっきアップした四話目から少しずつ職場での描写があります。
そして新刊!一日遅れで手に入れましたよ(^^♪
コミックスの一日遅れは納得できないけど、本誌の早売りは嬉しいから良しとしよう…。
  • posted by 高月慧ネン(ますたぬ様へ) 
  • URL 
  • 2015.03/08 21:13分 
  • [Edit]
  • [Res]

Comment_form

管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。

左サイドMenu

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

右サイドメニュー

プロフィール

高月慧ネン

Author:高月慧ネン
『兎と狼のラビリンス』へようこそ。
黎翔と夕鈴が大好きな管理人・慧ネンが、溢れる妄想を書き殴るために作ったブログです。
原作沿いや現代パラレル、色々ありますので、お好きなお話をお読み下さい。
よろしくお願いします。

†いらっしゃいませ†

キリの良い数字を踏まれた方は、ご連絡下さい♪

ご訪問中のお客様

現在の閲覧者数:

にほんブログ村ブログパーツ

ブロとも申請フォーム

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

検索フォーム

QRコード

QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。