兎と狼のラビリンス

こちらは白泉社『狼陛下の花嫁』の二次創作ブログサイトです。(作者様・出版社様とは関係ありません)

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♪初めて知る、あなたの事

Creuzシリーズです。

ちょっとした、短いお話…。



恋人になって初めて知ることが出来る事もあるんだなあと、夕鈴は彼と付き合い始めてそう思った。


♪初めて知る、あなたの事


例えば、

今巷で大人気で、ファンも沢山いて、煌びやかなステージでかっこ良く歌っている彼だけど。

私生活、特に自分の事に関しては、彼はどちらかと言うと無頓着だ。


シャワーを済ませ、バスルームから黎翔が出てきた。
肩にタオルを掛けているが、濡れた頭はそのまま。
落ちる雫が鬱陶しいのか、プルプルと犬みたいに頭を振る。

「ちょっ、黎翔さん!…髪はきちんと乾かして下さいっ」

湯冷めしたらどうするんですかと言うと、彼は子供みたいに口を尖らせる。

「だってめんどくさい。」

「めんどくさいって…」

子供じゃないんだから…と半分呆れながら彼を見ると。

「じゃあ、夕鈴がやってくれる?」

ニコニコ笑いながら、タオルを差し出した。

テーブルとソファの間に腰を下ろした黎翔の髪を、ソファに座った夕鈴が優しく拭う。
彼の黒い髪は水に濡れているので、さらにツヤが増しとても綺麗。
大きなタオルで覆い、彼の頭全体をマッサージする。

本当はドライヤーをかければすぐに乾くんだろうけど。

「熱いからヤダ。」

って、彼はまた子供みたいに却下するから。

髪が痛むから、この方が良いよね?

時間はかかるけど、とても優しい時間が過ぎていく。
ついでに凝っている肩も揉んであげると、彼は気持ち良さからコックリコックリと、舟を漕ぎ出した。


芸能人って高級レストランで、庶民が一生味わえないような料理を口にしてると夕鈴は思っていた。

世界三大珍味?とか、市場では手に入らないような調味料とか食材をふんだんに使った料理を口にしているだろうから、自分の作る家庭料理なんて彼の口に合わないと。

「うわあ~。凄いね、ご馳走だね!」

目をキラキラさせているのは、自分とは違う世界に生きている筈の芸能人…なんだけど。

テーブルの上に並べられているのは、どこの家庭でも食卓に出るような、なんて事はない家庭料理。

「これ美味しい!…あ、こっちもっ!」

初めて手料理を振る舞った日、心配する夕鈴をよそに黎翔はパクパクと食べてくれた。

だが彼は、夕鈴が見た事もないほどの、偏食だった。

この日のメニューは、時間がなかったので、チャーハンとサラダに、野菜入りのコンソメスープ。
向かい側に座る黎翔を見てみると、彼は皿の端に何かを避けて食べている。

皿の端に積まれていく、原色に近い赤や緑のそれは。

「黎翔さん…。」

子供が大嫌いの、ニンジンや、ピーマン。

子供なら分かる。確かに苦味があるから、子供ならそうするかもしれない。
でも彼は、分別ある大人で。

彼は本当に、21歳の大人の男なのだろうかと、夕鈴は時々不思議に思う。

そしてこの端正で、とても綺麗な顔立ちをした、本当に自分と同じ人間なのだろうか?と思ってしまう人は。

別の日には、チキンライスに混ざっているグリーンピースを取り出した。
また別の日には焼きそばに入っていた、またしてもニンジンと、タマネギ。

茶碗蒸しに入れていた、シイタケ。

レンコン、ゴボウ、セロリ…等など。

よくそれが入っているのに気付きましたね…と思えるほど、小さなかけらもある。

あまりの好き嫌いの多さに、栄養の偏りを心配して黎翔を見つめた。
その視線を、呆れられたと勘違いしたのか。

「…だって、コレ嫌い。」

クシャリと眉を下げて、夕鈴の顔を伺うように見る。

それはまるで、『どうしても食べなきゃダメ?』と聞いてくる、子供のような表情。

そんな彼に弱い夕鈴は、彼が避けれないほど、細かく切って料理に入れようと考える。

ハンバーグやグラタンなど、本当に子供が大好きな料理が大好物な彼。
今夜のハンバーグには、みじん切りにされた彼の嫌いな食材が混ぜられている。


リビングのソファベッド。

隣で寝ていた彼が起き上がる気配で、夕鈴は目を覚ました。

眠りに着く前、外は凄い雨だった。
ベランダに続く窓からさす光が、部屋の中を明るく照らす。
それに続く轟音。

ソファに二人潜り込んだ時には、鳴っていなかった雷が響いている。

彼は座り込んだまま、動こうとはしない。

「…黎翔さん?」

稲光に照らされる彼の顔は何だか凄く泣きそうで、夕鈴は身体を起こした。

「ごめん。…起こしちゃったね。」

夕鈴を気遣い黎翔は微笑むが、その笑みはやはりどこか硬い。

夕鈴は気付く。

いつも自分を抱き締めてくれる彼の大きな身体が、小刻みに震えている事に。

どうしたのかと問うと、彼は。

「…こんな天気の悪い日の夜に、母が死んだ。それ以来、雷が鳴っている夜はちょっとね…。」

幼いあの日の事を思い出し、目が覚めては寝付けなくなるのだと教えてくれた。

「私がいます…。ずっと、傍にいます…」

この小さな身体で、大きな彼を全て支える事など出来ないけれど。
自分と言う存在が、彼の癒しになればいいと夕鈴は思う。

ギュウッと黎翔の身体を抱き締めると、彼は夕鈴の胸に顔を埋め、スンっと鼻を鳴らした。


こんな関係にならなければ、知る事も出来なかった彼もあるわけで。
それを少しずつで良いから、知っていきたいなと思う。

それと同時に、自分の事も知ってもらいたいと思うのは、過ぎた望みなのかな?

私の知らないあなたの事は、あとどのくらいある?


抱き締めてくる腕から力が抜けて、ようやく寝てくれた彼。

夕鈴の心音に安心して、黎翔はまだ雷が鳴っているにも拘らず眠りに落ちた。


夕鈴の彼氏・黎翔は、子供のように甘えんぼで、駄々っ子で、好き嫌いが多くて、雷が苦手。

そんな彼が。

誰かに私生活を見せるのも、好き嫌いを教えるのも、雷が嫌いな事と、その理由を話したのも。


夕鈴が初めてだという事を、彼女は知る由もなかった。


END



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