兎と狼のラビリンス

こちらは白泉社『狼陛下の花嫁』の二次創作ブログサイトです。(作者様・出版社様とは関係ありません)

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♪秘密の旅行は、『何』がいっぱい? ♯1

Creuzシリーズです。

秋の連休のお話。


♪秘密の旅行は、『何』がいっぱい? ♯1


「…旅行、ですか?」

深夜近くにかかってきた電話は、一週間ほど会えていない恋人からで。
彼の提案は、とても驚くものだった。

「うん。…僕の仕事のせいで、夕鈴にはいつも寂しい思いをさせてるし。埋め合わせしたいなって、ずっと思ってて。」

芸能人である黎翔はとても忙しく、こうやって電話で話せるのも夜遅い時間帯が多い。
そして周囲の目があるため、二人の交際は一部の人間を除いて秘密にしている。

その為、二人が会うのは専ら黎翔の部屋で、普通のカップルのように街中でデートしたり、遠出をした事も一度もない。
夕鈴が会いたいと思った時に、会う事も叶わない時もある。

愛しい夕鈴に色々寂しい思いをさせている事を、黎翔はずっと気にしていた。

「そんな…。黎翔さんのお仕事の事を考えれば、それは仕方がないですよ。」

優しい夕鈴はそう言ってくれるが、黎翔には彼女が無理しているようにしか思えなかった。

「…夕鈴、これは僕の我が儘。…僕が夕鈴と、一緒に旅行に行きたいんだ。」

夕鈴の為にと言っても、彼女はなかなか首を縦に振らないだろう。だから黎翔は、この旅行は自分自身が望んでいるのだと夕鈴に伝えた。

「…分かり、ました。…黎翔さんと一緒に旅行行けるなんて嬉しいですけど、本当に、大丈夫ですか?」

夕鈴は不安げに呟く。

オフはきちんと取れるのか。
世間にばれたりしないか。

「大丈夫。…個人的に懇意にしている老舗の旅館の離れを予約しているから。…秘密はきちんと守ってくれるから、その辺は心配ないよ?」

無理やりもぎ取った、秋の半ばの三連休。
夕鈴も学校休みだし、バイトを入れないように早めに連絡した。

「…楽しみにしてますね」

そう言って電話を切った彼女の声が、まだ黎翔の耳元で甘く響く。

その日までまた暫く忙しい日が続くが、初めての旅行をバネに頑張る事が出来そうだった。


「ウソみたい…。」

頬を染めて、夕鈴は自室のベッドに突っ伏す。

付き合い始めてもうすぐ半年が経つ彼と、初めて二人で行く旅行。
耳元で囁かれた、携帯からの彼の甘い声が夕鈴の脳裏に響く。

『二人だけの、秘密の旅行だよ?』

「…嬉しい、な。」

夕鈴は微笑んで、携帯をギュッと握り締めた。


秋晴れの中を、黎翔が運転する車で二人は旅行に出掛けた。

免許を持っていない夕鈴は、黎翔がずっと運転しなければならない事を気にしたが、公共の交通機関を使えばどうしても人目が増える。せっかくだから時間に追われずのんびり二人で過ごしたいしと言った黎翔の言葉に、夕鈴も甘える事にした。

街の喧騒を抜け、車はどんどん進んでいく。二時間ほど走り、周囲に紅葉が多い、のどかな田舎町に辿り着いた。

「…都心からあまり離れていないのに、こんな静かな場所があるんですね…。」

窓から景色を眺めながら、夕鈴は黎翔に声を掛ける。

「…でしょ?僕も初めて来た時、ビックリしたよ。」

Creuzを結成したばかりの頃メンバー達と来たのが最初だが、こののどかな風景が日々の疲れを癒してくれるような気がして、黎翔は一人で度々この場所を訪れた。

田舎町にあってもその旅館は老舗として有名で、一般客より芸能人や有名人の客が多い。その為、旅館の女将や従業員も、徹底して顧客の秘密を守ってくれる。

「…こんな田舎だし、普段より人の目も少ないと思うよ?…だから思う存分、イチャイチャしよう?」

ニコニコと満面の笑みで言われて、思わず顔を真っ赤にした夕鈴だった。


「こちらでございます。」

通された部屋は離れと言え二人で過ごすには十分過ぎるほど広くて、夕鈴は驚いてしまった。
旅館は木造だったが、逆にそれがとても赴きを感じる建物だった。

「夕鈴、…こっちにおいで?」

部屋の隅に荷物を置いていた夕鈴は、黎翔に呼ばれ障子を開け放した彼の傍に行く。

「わ…!」

そこからは、庭の景色が一望出来た。

障子の向こう側は縁側になっていて、縁側の縁は今は開け放ている大きなガラス戸で、夜になったら閉められるのだろう。
庭の中央には鯉が泳ぐ大きな池があり、その向こうには赤く色づいた木々が広がっている。

「…凄く綺麗ですね!」

「…季節によっては、色々な風景を楽しめるよ?」

目を輝かせて言う夕鈴を見る、黎翔の顔も嬉しそうだ。

荷物を解き、まだ昼食まで時間があるからと二人は旅館の近くを散歩する事にした。
女将に道を聞き、二人は並んで旅館の玄関を出ようとした。


と、ちょうどその時、今時珍しい木の引き戸を開け、男が一人、中に入って来た。
その男は、夕鈴と黎翔の姿を見て驚いたように足を止めた。

夕鈴は一瞬、黎翔の素性がばれたのではないかと焦った。いつものように眼鏡を掛け、帽子を被っている黎翔だが、分かる人間には分かるものだ。

「ウソ…!」

チラリと男の顔を見て、夕鈴は目を見開く。

「…き、きき…几鍔…」

隣で黎翔も、予期せぬ事に驚いている。

「何で君がここに…」

そう聞かれた男は、少し嫌そうに顔を歪める。

「…それは俺が聞きたい…。何でお前ら、こんな所にいるんだ?」


夕鈴の幼馴染であり、黎翔の同級生でもある几鍔は、頭を抑えてそう言った。


二人だけの秘密の旅行は、早速波乱の予感?


続く

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