兎と狼のラビリンス

こちらは白泉社『狼陛下の花嫁』の二次創作ブログサイトです。(作者様・出版社様とは関係ありません)

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My Sweet☆Home~決別の日~ 6

こんばんは、慧ネンです!

ちょっと更新頑張ってみました!
またすぐにいつもの亀に戻ると思いますが(笑)
元々書きたい時に書くをモットーにしているので、今の所は兎です(^^♪

この話も、後二話くらいで終わる予定です。
でもシリーズはまだまだ続くよ、どこまでも☆
実は続編も出来ています(←脳内では)
ダラダラ続くと思いますが、良かったらお付き合い下さい。

※オリキャラ注意報継続中です!黎翔パパの父親が登場します。
彼に関しては、本当の悪人のまま終わるかどうしようか悩み中…。当シリーズと言い、Creuzと言い…、どうしても根っからの悪人には出来ないんですよね…(*_*;
う~ん…m(__)m


***


My Sweet☆Home~決別の日~ 6


薄暗く誰もいない待合室。診察時間が終わったそんな診療所の診察室から、僅かに漏れる灯りと数人の人の声。
外科医である叔父と、産婦人科医の叔母が開業する診療所に、黎翔は夕鈴と子供達を連れてきていた。

夕鈴と聖蘭の、冷やして少しだけ腫れが引いたとはいえ、まだ赤くなってる頬を見た時、瑠霞はもっと早く状況を知る事が出来たら二人が被害に合う事は避けられたのではないかと落ち込んだ。

「私の兄のせいで…。ごめんなさいね…。」

紗都香が仕出かした暴挙は、自分の兄が裏で手を回し彼女を唆したから。
そのせいで何の罪もない夕鈴と、幼い聖蘭が怪我をしてしまった。
今の夫との結婚を認めてもらえなかったため、実家から出た瑠霞は、実の兄ともここ何十年も連絡も取らず疎遠になっていた。診療所を開き同業者として耳にする兄の話は良くない事ばかりで、何年たってもあの性格は変わらないのかと溜息が出た。

「そんな…。瑠霞先生が謝る必要なんてないですよ?」

謝った瑠霞に、夕鈴が逆に申し訳ないように首を横に振る。
彼女は、幼い頃から何かと世話を焼いていた甥の黎翔が、初めて一緒にいたいと望んだ女性だ。

この春高校三年生になる夕鈴は、黎翔には秘密だが彼の子を妊娠している。
最悪な出会い方をした二人はお互いに想い合っているのにいつも擦れ違ってしまい、夕鈴はお腹の子の父親が黎翔だと言う事を頑なに隠そうとし、黎翔も彼女は別の男の子を身籠っていると思っている。

それでも、黎翔は夕鈴と生まれてくる子供を家族として迎え入れ、娘・聖蘭と息子・清良と共に新しい家庭を築こうと考えている。

「こんなの、全然痛くないよ?聖蘭、頑張ったもん。」

濡れタオルで頬を冷やしながら、聖蘭は足をプラプラさせて言う。
検査した結果骨には異常が無かったが、叩かれた頬はまだ少し腫れていて、しばらくは痣が残るだろう。

夕鈴に心配させたくない聖蘭は、多少の強がりもあるかもしれないが言った言葉は事実で、彼女にとってもっと幼い頃実の母親に受けていた暴力の事を考えれば、このくらいの傷で大好きな夕鈴を護る事が出来たのだから何て事なかった。

でも、大人達にとって聖蘭の言葉はショックが大き過ぎて、夕鈴は悲しげに眉を下げ、浩大と叔父は困ったように苦笑いし、黎翔と瑠霞は血縁者だけあって複雑そうに口を噤んだ。

頬の傷以上に不安だった夕鈴の子供は、瑠霞の診察の結果、何も影響なくすくすくと順調に育っていて、不幸中の幸いに皆がホッと胸を撫で下ろしたのだった。

「その顔で学校に行ったら皆がビックリしちゃうね。診断書書くから、二人ともちょっとお休みしようか。」

間が悪い事に数日後には新学期が始まり、聖蘭も新一年生になるのだが、さすがに顔に青痣作って学校に行ったら何事かと思われるだろう。
楽しみにしている聖蘭には可哀想だが、痣が消えるまで学校は休んだ方が良い。

もちろん、本当の事を書くわけにはいかないので、叔父は『階段から落ちて怪我をした為』と、当たり障りのない理由をでっち上げた。

その日は結局、瑠霞の厚意で彼女の自宅に泊まっていく事にした。
噂になったら困るので、出来るだけ人目に触れたりしないように、翌朝マンションに戻る前にスーパーで一週間分の食料を買い込んだ。黎翔と浩大が買い物をしている間、夕鈴は子供達と車の中で待っていたのだが、広い駐車場のどこかから、見られているような気がして少し気味が悪いと感じていた。

「…視線?」

マンションに荷物を運び入れるのを手伝ってくれた浩大が帰り、荒れていたリビングを片付けてようやく気を付く。
どうしても気になってつい話してしまったが、黎翔が思った以上に深刻な表情をしたので、夕鈴は申し訳なくなってしまう。

「あ、でもっ!気のせいかもしれないんです!妊娠中って、神経が過敏になるって聞いた事がありますし…。」

黎翔の別れた妻が突然やって来た事で、気が昂ぶっているだけかもしれない。
実際一緒にいた子供達は何も感じていないようだったし、色々な事が起こって自分が思っている以上に身体が疲れていて、神経質になっていただけだろう。

黎翔は温かい紅茶を入れると、夕鈴に差し出した。

「あ、ありがとうございます。」

嬉しそうに笑って受け取った夕鈴に、黎翔は優しげな視線を向ける。

何も悪くないのに元妻との事に巻き込んでしまい、本来なら恨んでも良いくらいなのに夕鈴は何も言わず、黎翔を責めたりしない。自分の痛みよりも他人の事に敏感で、聖蘭と清良を心配したり、今回の加害者である紗都香を庇ったりする彼女。

もうこれ以上、苦しめたり嫌な思いをさせたくない。

どうすれば良いのだろう。

傍にいられると言う喜び。
想いを告げる事が出来ない苦しさ。

今まで、ここまで誰かを愛した事が無い黎翔は、自分達にとって最善な道はどれか見付け出す事が出来ないでいる。

愛しげに小さな命が宿る腹を撫でている夕鈴を、自分は幸せにする事が出来るだろうか…?


「――黎翔。」

翌日、あまり頻繁に仕事を休むと勘繰られるので、夕鈴と子供達を残し後ろ髪を引かれる思いで出勤した黎翔は、医局に辿り着く前に一番会いたくない男に呼び止められた。

「話がある。院長室に来い。」

白陽会の会長兼院長であり、黎翔の父親。
昨日の事もあり妙に勘繰ってしまい、そのせいで気持ちが表情に出ていたのだろう。

「そんな嫌そうな顔をするな。すぐに終わる。」

そう言ってすでに歩き始めている父の後ろに着いて行く。

「女と一緒に暮らしているらしいな。」

院長室に着くなりそう聞いて来た父に、いきなりそれかと黎翔は顔を顰め盛大に溜息を吐く。

「聞かなくても、貴方の事だからすでに調べは付いているのでしょう?」

全て分かっているくせにわざわざ聞いてくるのが、いつも黎翔の癇に障る。

「紗都香を唆して駒にしておいて、今更何を言っているんです?」
「はて、何の事だ?お前の言葉の意味が分からんが…」
「――しらばっくれるな。」

机を挟み、黎翔は父と睨み合う。

この男は、いつもこうだ。
人を陥れる事を何とも思わず、自分に利益をもたらさないもの、妨げになる者には容赦がない。
今まで、何の罪もないのにこの男に陥れられ不幸になった者は一体どれだけいるのだろう。

その中に、黎翔の母親も含まれている。

今目の前にいるのは黎翔にとって実の父親だが、彼の妻である女は、黎翔の実の母親ではない。
産みの母はもう亡くなっていて、当時黎翔はまだ幼過ぎて詳しい事は分からないが、病院を大きくするために邪魔になった彼女をこの男が殺したのではないかと周囲に噂がたったものだ。

手を回しているのか、調べても詳しい事は分からず、未だ真実は闇の中だが。
黎翔と父親の、確執は何よりも深い。

調書によると、息子が共に暮らしているのは一般家庭に生まれたごく普通の少女。しかもまだ未成年で、高校生だ。
何の害もないが、利も生み出さないどこにでもいるような女。

息子は幼い頃から何に対しても執着をする事が無かった。
親が言う道を進み、難なく同じ職に就いた。新見家の娘との縁談も、他に気になる女がいないからと文句も言わずに受けてすぐに結婚してしまった。
結局、共に過ごしても愛情を抱く事が出来ず離婚してしまい、一男一女を儲けたのは何よりだったが跡取りとなる男児は身体が弱く彼一人だけでは心許ない。

息子はまだ若い、二十代後半で外科医として有望な彼なら、新しい家庭を築く事も可能だろう。
だが当の本人に全くその気がなく、妻と離婚した後も幼い子供をほったらかして仕事に打ち込んだ。

誰にも心を開こうとしなかった黎翔が共に暮らしたいと思うほど心惹かれた相手があの少女ならば、戻れなくなる前に壊さなければ。

「…あんたが何を考えているのか知った事じゃないが、」

息子の声に思案していた彼はハッと黎翔を見る。

「――彼女に手を出したら許さない。俺が言いたい事はそれだけだ。」

もう話は終わりだとばかりに、黎翔は部屋を出ようとする。

「…私は、今も昔もお前の幸せを願っているよ。」

背中に掛けられた言葉に一瞬足を止めたものの、振り向く事はしなかった。

「…どうだかな。」

それが嘘か真実(本当)か、それを知るには黎翔は父親であるこの男の事を知らなさ過ぎた。


息子が出て行った扉を、男はじっと見つめる。
歳を重ねるごとに、息子は自分に似てきた。
容姿だけではなく、その不器用な性格さえも。

誰にも心を開かず、誰も愛せない。
長い事そうやって生きて、男もようやく一人の愛する女性に出会った。

『貴方がそんな顔をする事は無いわ』

耳に残る優しい声は、ただ一人愛した女性。

『ごめんなさい。許してなんて言わない』

冷たくなっていく彼女は、真っ直ぐに男を見つめて。

『あの子の事、よろしくね。貴方と私のたった一つの宝物…』

痛みも苦しみもあっただろうに、どうして彼女は笑えたのだろう。
あれから十数年たった今でも、男にはそれが分からない。

『黎翔を――…』

ああ、どうして。
今頃になって君の笑顔を思い出す。


「――会長?ご気分が優れないのですか?」

黎翔が出て行って少ししてから、院長室にやって来た秘書の声に物思いに耽っていた男は現実に返る。
「いや…」と言葉を濁した彼に報告を続けた秘書は最後に、黎翔の元妻の事を話しだした。

「新見家の娘は失敗したようです。」
「…ああ、知っている。」

当日の夜に、彼女の父親から詫びの電話をもらい知っていた。

「そうですか。新見家の方はどうしましょう?」
「…もう用はない。切って捨てろ。」
「よろしいのですか?」

背中を向けた男からは感情が読めず、秘書は思わずそう聞いていた。

「構わん。…今更だ。」

蛇の道は蛇、使える物は何だって使うし、利用価値が無くなったら容赦なく切り捨てる。

今回の事で息子との間に新しい亀裂が入ったとしても、月日を重ねるごとに大きくなったそれはすでに深い溝になっていて。

それを悔やんでも嘆いても、今更埋る事は無い。


続く


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  • 2015.08/20 06:08分 
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続けての更新嬉しいです。
黎翔パパの父彼は彼とよく似てますね。
でもだからこそ素直に分かり合えないという感じでどこまでも平行線な気がします。
夕鈴も聖蘭もいじらしくてなんとか幸せにと願うばかりです。
  • posted by まるねこ 
  • URL 
  • 2015.08/20 08:05分 
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続けての更新幸せです❤︎

黎翔とパパの関係は夕鈴がなんとかうまいこと関係を修復して、夕鈴も幸せにとかとか考えちゃってます!
  • posted by ちろ 
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  • 2015.08/20 08:49分 
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  • 2015.08/20 09:15分 
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  •  
  • 2015.08/20 18:12分 
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Re: タイトルなし 

ますたぬ様

複雑な家庭に生まれると、性格も捻くれちゃうのかも?
黎翔のパパも、若い頃色々苦労したのかもしれません。
自分の息子(黎翔)には、同じ目に遭わせたくないと思っても、どうして良いか分からず結局…という感じでしょうか。
でも黎翔は夕鈴のお陰で、ちょっとずついい方向に向かっているようなので、頑張ってほしい所ですね(^^♪
  • posted by 高月慧ネン(ますたぬ様へ) 
  • URL 
  • 2015.08/20 23:40分 
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Re: タイトルなし 

まるねこ様

黎翔と彼の父親は、似なくて良い所だけ似てしまったのかもしれないですね。
似た者同士って、同族嫌悪という言葉があるように、素直になれず分かり合えなくて、離れてさらに酷くなると言う感じでしょうか。どこまでも平行線、という言葉はピッタリだと思います。
夕鈴と言う存在に会えた分、黎翔は幸せだと思うので、彼には間違った道に進んでほしくないと思ってます(*_*;
  • posted by 高月慧ネン(まるねこ様へ) 
  • URL 
  • 2015.08/21 00:48分 
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Re: タイトルなし 

ちろ様

遠いいつの日か、黎翔と父親が和解した時、夕鈴も傍にいて欲しいものです。
似た者親子っぽいので、夕鈴が説得したらパパもコロッと態度変えるかもしれない(笑)
そして親世代含めて幸せに~と言うのは理想の形ですね(^^♪
  • posted by 高月慧ネン(ちろ様へ) 
  • URL 
  • 2015.08/21 00:51分 
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Re: タイトルなし 

ますたぬ様

業務連絡の返信です♪
お仕事の旦那様についてこられるのですね!
ランチのお店も、カステラのお店も、地元のくせに知らなくてネットで検索しちゃいました(*_*;
こんなお店があったのか…!
その日は仕事だあ…。休みならチラッと顔見せに~と思ったのですが。残念(*_*;
まあ、ますたぬさんの慧ネンのイメージが壊れなくて良かったか…。
ランチのお店は、オムライスが有名らしいですね(←ネットに載ってた)
ゆっくり楽しんで行って下さいませね(^^♪
  • posted by 高月慧ネン(ますたぬ様へ業務連絡(笑)) 
  • URL 
  • 2015.08/21 00:56分 
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Re: こんにちは~ヽ(・∀・)ノ 

RON様

すぐに兎から亀になるんですよ!

黎翔も最初夕鈴に会った時は酷い男でしたが変われたので、そんな彼の父親も根っからの悪人ではないはず。
息子も知らない事情が色々ありそうです。
だからと言って、今夕鈴にしている事は許せる事ではないですが(*_*;

慧ネン、D子さん脅してないですよぉ。
ちょっと本心をゴニョゴニョ…(←それを脅すと言う…)
早く新刊欲しいなあ~(^^♪
  • posted by 高月慧ネン(RON様へ) 
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  • 2015.08/21 01:01分 
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よろしくお願いします。

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