兎と狼のラビリンス

こちらは白泉社『狼陛下の花嫁』の二次創作ブログサイトです。(作者様・出版社様とは関係ありません)

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♪秘密の旅行は、『何』がいっぱい? ♯3

続きです。
喧嘩してしまった二人は、一体どうなるのでしょう…?

Creuzシリーズ



♪秘密の旅行は、『何』がいっぱい? ♯3


『ファンの子達も大事にしてあげて下さい。』

ねえ、夕鈴?
どうしてそんな事言うの?

今君の傍にいる僕は黎翔であって、『Rei』じゃないんだよ?
君と一緒にいる時くらい、君の事を一番に考えたいんだ。大事にしたいんだ。

それはそんなに、悪い事なの?

『ちがっ…!そういう意味じゃなくてっ!』

じゃあ、どういう意味なの?

僕は君の前でも、黎翔ではなく『Rei』でいなければいけないの?
本当の僕を隠して、君の前でも『Rei』で居ろと?


初めての夕鈴との旅行で高揚していた感情が、スッと急降下する。

君だけは違うと思っていたのに。
君だけは、本当の僕を見てくれると思っていたのに。

君も他の人間と同じだった?

そう思った黎翔は絶望に駆られ、言ってはいけない事を夕鈴に言ってしまった。

「所詮君も、奴らと同じなのか。」

クッと自嘲しながらそう吐き捨てると、夕鈴はボロボロと大粒の涙を流し泣き出した。


「…夕鈴をいっぱい甘やかすつもりだったんだ…。」

酒が入ったグラスを片手に、黎翔はポツリと呟く。

いつも傍にいられなくて寂しい思いをさせている分、いっぱい優しくして、いっぱい甘やかして、初めてのこの旅行が最高の思い出になるようにするつもりだった。

普通の恋人達のように、腕を組んで歩いて、観光スポットにも行って、二人だけの幸せな時間を過ごす。
普段出来ない事を、この三日間で全部してやろうと考えていた。

「ぼく、…夕鈴の事を一番に考えていただけなのに…」

この旅行中は芸能人ではなく、ただの一人の男として、彼女と共に過ごそうとしていた。
なのに夕鈴は、ファンの子達に黎翔が取った行動を見て、苦言を述べてきたのだ。

「仕方ないだろ。…あいつはそういうヤツだ。」

黎翔の向かいに腰を下ろし、几鍔は酒を飲みながら彼の愚痴を聞く。二人が囲む卓の周りには、すでに3本の一升瓶が転がっている。

どう見ても自棄酒を煽っているとしか思えない黎翔は、流石に呂律が怪しくなっており、目もトロンとしている。黎翔に付き合っている几鍔も、酒豪とは言えもうそろそろヤバくなってきていた。

「どうしよう、几鍔…。ぼく、夕鈴に嫌われちゃったら生きていけない……。」

3本目を開けた頃から黎翔は悪酔いをしていて、泣き上戸になっている。

「大丈夫だよ。…あいつも今は気が立っているけど、別れようなんて思ってないから。」

夕鈴がどれほど黎翔の事を好きか知っている几鍔は、そう断言する。
売り言葉に買い言葉でついカッとなっただけだろう。

それに、確かに夕鈴は怒っていたが、『別れる』なんて一言も言ってない。

「そうかな…?」

いつも自信満々の黎翔は、不安げに呟く。
このケンカが、ずいぶんショックだったようだ。

「明日になったらあいつも大分落ち着いているだろうから、ちゃんと仲直りしろ。」

「…うん。」

酔いが回り眠気からか舌足らずに答える黎翔は、まるで子供のようだ。

「分かったら、今日はもう寝よう、な?」

今にも首がカクンと落ちてテーブルと『こんにちは(こんばんは?)』をしそうな彼に、几鍔はもうお開きだと告げる。

「うん…もう寝る。」

空になったグラスをテーブルに置き黎翔は立ち上がるが、思い切りふらついてしまう。

「おいおい、大丈夫か?」

几鍔は慌てて黎翔を支え、彼を半ば引き摺るように奥の和室に敷かれた寝床に連れて行った。

布団に潜り込んだ黎翔は、ギュッと身体を丸めすぐに寝息を立て始める。

「…ゆうりん…」

頬に一筋涙を流し、彼は幼子のように愛しい人の名を呟いた。


「やれやれ…」

ようやく寝てくれた黎翔を見て、几鍔はホッと息をつく。
本人達にとっては大変な事だろうが、他人が聞くと何の事はない、唯の痴話喧嘩だ。

黎翔に付き合いかなりの酒を飲んでしまった几鍔も、そろそろ寝ないと限界が近い。本当は温泉に浸かりたかったが、今の状態で熱い湯に浸かるのは流石にまずいだろう。

室内に備え疲れているシャワーで軽く汗を流してから寝ようと、几鍔は自分の荷物を取りに借りている部屋に向かう。足音を忍ばせて荷物を手に取り、寝ている夕鈴を覗くと、月明かりに浮かぶ彼女の頬には、うっすらと涙の跡が。

「…バカが。泣くくらいならケンカなんかするな。」

誰に言うわけでもなく呟いて、几鍔は静かに部屋を出て行った。


鳥のさえずりが聞こえ、黎翔は目を開ける。一瞬、自分がどこにいるか分からなくて、身体を起こそうとすると、頭に激痛が走った。

「…起きたかよ?」

頭を抑え呻いていると、隣からかなり不機嫌な声が。

「…何で君がここに?」

少し離れた隣の布団にいたのは几鍔だ。

彼も黎翔と同じように頭を押さえ、

「お前の自棄酒に付き合うと、加減を間違える。」

と嫌そうに呟いた。

「…夕鈴は?…っ!」

夕鈴と二人で旅行に来た筈なのに、何故几鍔が同じ部屋で寝ているのか。そう考えて思い出してしまった。昨夜の出来事を。

「…思い出したか?」

几鍔に問われ、黎翔は蒼白になって頷く。

「…行かなきゃ…!」

ガバッと掛け布団を跳ね飛ばし、飛び起きた黎翔はまた頭を抑え蹲ってしまった。

「~~~!」

「おいおい、無理すんな。…昨日一体いくつ開けたと思ってんだ?」

二人で一升瓶4本は、いくら酒豪の二人でも飲み過ぎた。

しかも黎翔をさっさと酔い潰す為に、几鍔は強い酒を仲居に頼んだのだ。
度数の強い酒をあれだけ飲めば、翌日こうなる事は目に見えていた。

「…夕鈴が俺が借りている部屋にいるのは間違いない。少し酔いを醒ましていこう。」

几鍔も二日酔いでとても辛そうだ。

早く夕鈴の所に行きたかったが、今の状態ではとても無理だと黎翔は渋々頷いた。

「…ここを出た?」

驚いて女将に聞き返したのは几鍔だ。
黎翔は蒼白の表情で、呆然としている。

しばらく布団の上に座ったまま酔いを醒まし、身支度を整えて夕鈴の元へ行くと、彼女の姿はそこになかった。

女将に聞くと、朝食を食べた後、旅館を出たというのだ。
それが今から一時間ほど前。二人がまだ目を覚ましていない頃だ。

「…お二人に伝言が。『少し一人になりたいだけだから、心配しないで欲しい』と。」

彼女の荷物はまだ部屋に残っている。
一人で帰ったというわけではないらしい。

「…おいっ!大丈夫か!?」

力が抜けて、ガクリと崩れ落ちそうになった黎翔の腕を掴む。

「う、うん…。」

「行くぞ!…取り合えず昨日お前達が行った場所を回ってみよう。」

都会と比べて物騒な場所ではないが、女一人では危険な事もあるかもしれない。
いくら夕鈴が男勝りでも、彼女は女なのだ。
早く追いかけたた方が良いと、几鍔は判断する。


几鍔に腕を引っ張られ、黎翔は青褪めたまま頷いた。


続く

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