兎と狼のラビリンス

こちらは白泉社『狼陛下の花嫁』の二次創作ブログサイトです。(作者様・出版社様とは関係ありません)

Entries

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

My Sweet☆Home~逃避行の果て~ 2

あと半月で、今年も終わりだなんて…!
『師走』の名の如く、日々が過ぎ去るスピードに呆然としている慧ネンです(*_*;

今年も溜まっているリクエストを消化出来なかった…。来年もまた同じ目標を立てるのかしら。その前にクリスマスが近付いてきてるよ、今年はどうしようかな。わーんっ…!

今年のうちにあと何回更新出来るか分からないけど、ちょっとでも進めようと思い、短いですがSweet☆Homeシリーズの続きをお届けします。

※オリキャラが出ます。
妊娠についての表現がありますが、あくまでフィクションとして読んで下さい。重く考えてしまう方は、閲覧をお控え下さいねm(__)m



***


My Sweet☆Home~逃避行の果て~ 2


すでに深夜に近い時間に叩かれた、自宅と並んで建っている病院の扉。
鍵を外し外に出た医師である男は、雨でずぶ濡れになった黎翔と、彼が抱きかかえているぐったりとした夕鈴を見て驚いた。

『橘木医院』は、この小さな港町にある唯一の診療所だ。
男と彼の妻が、夫婦二人で開いている。
男は外科・整形外科を、妻は内科・産婦人科を専門としているが、小さな町とは言え唯一の病院。どんな患者が来ても対応出来るように、二人は専門以外の分野でも幅広い知識と技術を持っていた。

近年、隣市に大きな総合病院が出来たため、診療所を開業したばかりの頃と比べたら患者数は減ったものの、皆顔見知りの近所の住民達は風邪を引いたり怪我をした時にはいつもこの診療所にやってくる。
夜間診療はしていないものの、たまに夜遅くに子供が熱を出した、おばあちゃんの腰が…と駆け込んで来る知り合いもいて、二人は通常の診察料で診療していた。

それでも、人口数千人の小さな町。こんなに切羽詰まった状態で駆け込んでくる者はいなかった。


「妊娠中の妻の容体が悪いんです!助けて下さい…!!」

真っ青な顔で叫ぶ黎翔の言葉に、彼が抱きかかえている夕鈴を見る。
俯いているため表情は分からないが、彼女の足元の赤い水溜りが、その深刻な状況を伝えてくれた。

「これはいかんっ、すぐに中へ…!おーい、急患だ!!」

中に向かって声を上げると、奥から「はーい!」と返事が返ってきた。すぐにパタパタとスリッパの音を響かせながら、白衣姿の男の妻がやって来た。

彼女は、夕鈴の状態を見て顔色を変えた。濡れている服を脱がせるのを躊躇う黎翔を叱責し、夫が準備した大判のタオルで彼女の身体を拭い、診察服を着せると診察台に寝かせる。

夕鈴の朝からの状態や容体の変化など、治療に必要になる事を黎翔は偽らずに彼女に告げた。
外にいる時には暗くて分からなかったが、室内の明るい光の下で見ると、夕鈴の顔色の悪さがはっきりと分かる。止まらない出血は、黎翔の不安をさらに駆り立てた。

ずぶ濡れの二人を気にする事無く医者夫婦は中に入れたので、診療所の床は水浸しになってしまった。
身体を拭くようにと黎翔にタオルを渡してから、一人黙々とモップを掛けている彼に、「あの…!」と声を掛ける。

夕鈴の事は凄く気になるし、このまま傍についていたい。けれど、ここにいても黎翔に出来る事は何もないのだ。
――それに、彼にはすぐに迎えに行かなければならない、大切な存在がいる。

「…子供達を、この先の公園に置いてきてるんです。」

夕鈴を無事に病院に送り届けたら、必ず迎えに行くと約束した。
この冷たい雨の中、追っ手の影に怯えながら真っ暗闇の世界で、幼いあの子達は二人寄り添いながら黎翔が迎えに来るのを待っている。

「必ずここに帰ってきます。…妻の事、よろしくお願いします。」

深く深く、頭を下げる。
彼女を置いて逃げたと思われないように、黎翔は持っていた荷物を全て置いて子供達を迎えに行くべく、診療所を後にした。


盛った土の中に、三本の土管を埋めただけの遊具。そのうちの一本に、這うようにして潜り込む。
聖蘭と清良は、膝を抱えるようにして二人並んで座っていた。

雨は凌げるが吹き込んでくる強い風は容赦がなく、お尻は痛いしひんやりとした冷たさが身に染みてくる。さらに周囲に灯りが無いので真っ暗で、隣に座る互いの顔すら確認出来なかった。

ざあざあと、雨の音が煩い。

「パパとお姉ちゃん、もう病院に着いたかな…?」

清良からの返事はなく、それでも聖蘭は自分の不安を拭うように一人呟く。

「…お姉ちゃんと赤ちゃん、大丈夫だよね?」

キュッと、自分の手を握る小さな手があった。
隣に座る弟の、紅葉の葉っぱのような小さな手。
濡れている手は冷たいはずなのに、互いの熱でじんわりと温かさが染みてくる。

今ここにいるのが、自分一人じゃなくて良かった。
聖蘭がそう思った時、パシャンと水が跳ねる音が聞こえた。

バシャバシャと、地面に溜まった水を跳ねながら走ってくる足音。

「――清良。」

小さな弟の身体をギュッと抱き締める。

パパだと思いたい。パパが夕鈴お姉ちゃんを無事に病院に連れて行って、迎えに来てくれたのだと。
そうでなければ。
自分達は連れて行かれてしまう。

入り口から少しでも離れようと、出来るだけ土管の中央に逃げる。狭い入口は、子供なら入れるが大人は入って来れない。
小さな姉弟は抱き合って、睨むように入り口を見ていた。

真っ暗な闇の中うっすらとした灯りが見え始め、だんだん近付いてきたそれは、二人が隠れている土管の中に向けられた。

傘と懐中電灯だけを手に、夕鈴を抱きかかえながら病院を探した道を戻る。行きとは半分の時間で子供達と別れた公園に着いた黎翔は、慎重に二人の姿を探す。
もし追っ手が来ていたら、捕まえた二人の命を盾にするだろう。
幼い子供達と夕鈴、すでにどちらも失う事が出来ない大切な存在になっている黎翔には、どちらかを取るなどと天秤にかけるような事は出来なかった。

公園の入り口は街灯があり少し明るかったが、小さな公園とは言え奥の方は真っ暗で何も見えない。
こんな場所に息を潜めて隠れている幼い我が子。
家庭を顧みなかった父親と、育児を放棄した母親。親に愛してもらえず、生まれてからずっと苦しんできた聖蘭と清良。
夕鈴に出会い、ようやく年相応に甘えたり、子供らしい笑顔を見せるようになった二人。

夕鈴と生まれてくる子供を迎え入れ、皆で幸せな家族になろうと誓った。
そのためには、聖蘭と清良を失う訳にはいかないのだ。

地面に溜まった水溜りが、バシャバシャと音を立てる。あまり広くはないが奥行きがある公園を探し回っていた黎翔は、視界に入ったものが気になりふと足を止めた。
盛っただけの土の山に土管を埋めただけの簡単な遊具。大人は顔くらいしか入れないが、小さな子供なら奥まで入れるだろうそこは、身を潜めて隠れるのには持ってこい場所。

「いるのか…?」

ゆっくりと近付いた黎翔は雨でぬかるんだ土で服が汚れるのも気にせず、膝を着いて土管の中を覗き込み手に持っていた灯りを向けた。

「聖蘭、清良…。」

抱き締め合って、身を小さくしていた子供達を見た時、黎翔はホッと息を吐いた。

「パパ…パパ…っ!!」

向けられた灯りが眩しくて目を細めた二人は、父親の姿を認めると這い出て来て黎翔に飛び付いた。
震えている身体をギュッと抱き締める。

カッパを着ているとはいえ、冷たい雨は幼い二人の小さな身体から容赦なく体温を奪う。
その震えは決して寒さだけではないだろうが、こんな場所に一時間以上も置き去りにしてしまった罪悪感が黎翔を襲う。

「…遅くなって悪かった。」

珍しくへばり付いてくる清良と、黎翔の言葉に首を横に振る聖蘭。

「お姉ちゃんは?お姉ちゃんと赤ちゃんは無事?」
「今病院で診てもらっている。……絶対大丈夫だ。」

夕鈴の容体は、決して楽観視出来るものではない。雨で濡れて体温が奪われた身体、このまま出血が続けば、母子共に危険な状態だ。

――それでも。
彼女も、これから生まれてくる子供も。
絶対に大丈夫だと、黎翔は自分自身に言い聞かせるように呟いた。


続く


関連記事
スポンサーサイト

Comment

管理人のみ閲覧できます 

このコメントは管理人のみ閲覧できます
  • posted by  
  •  
  • 2015.12/13 21:50分 
  • [Edit]
  • [Res]

管理人のみ閲覧できます 

このコメントは管理人のみ閲覧できます
  • posted by  
  •  
  • 2015.12/13 22:16分 
  • [Edit]
  • [Res]

管理人のみ閲覧できます 

このコメントは管理人のみ閲覧できます
  • posted by  
  •  
  • 2015.12/13 22:45分 
  • [Edit]
  • [Res]

 

聖蘭ちゃん、ほんとに健気で強くて、もう大好きです。
ハロウィンの話を読んでいてもみんな無事で助かりますようにって祈らずにはいられない(>_<)
みんなが早く幸せになれますように…
  • posted by まるねこ 
  • URL 
  • 2015.12/13 23:23分 
  • [Edit]
  • [Res]

管理人のみ閲覧できます 

このコメントは管理人のみ閲覧できます
  • posted by  
  •  
  • 2015.12/13 23:26分 
  • [Edit]
  • [Res]

管理人のみ閲覧できます 

このコメントは管理人のみ閲覧できます
  • posted by  
  •  
  • 2015.12/14 06:45分 
  • [Edit]
  • [Res]

管理人のみ閲覧できます 

このコメントは管理人のみ閲覧できます
  • posted by  
  •  
  • 2015.12/14 09:29分 
  • [Edit]
  • [Res]

管理人のみ閲覧できます 

このコメントは管理人のみ閲覧できます
  • posted by  
  •  
  • 2015.12/14 21:07分 
  • [Edit]
  • [Res]

Re: タイトルなし 

タイフーン様

お返事遅くなってすみません…!
二週間たちますが、お風邪は治りましたでしょうか?
忘年会シーズン、クリスマス、年末と、師走はどこも忙しくて大変ですよね(*_*;
拙いSSですが、少しでも活力になっていれば嬉しいです♥
あっ、息は止めちゃ駄目ですよ!息するの大事。
  • posted by 高月慧ネン(タイフーン様へ) 
  • URL 
  • 2015.12/27 18:23分 
  • [Edit]
  • [Res]

Re: タイトルなし 

ますたぬ様

いつもコメントありがとうございます!
お返事遅くてすみません~m(__)m
夕鈴ももうすぐ出産の時期ですからね、初産ですし、専門の方が傍にいてくれたら心強いはず。不安で一杯だろうし…。
子供達もようやく落ち着ける場所に辿り着いたようです(^^♪
  • posted by 高月慧ネン(ますたぬ様へ) 
  • URL 
  • 2015.12/27 18:28分 
  • [Edit]
  • [Res]

Re: No title 

かざね様

お返事遅くなってすみませんm(__)m
『まるでドラマを観ているような』は言い過ぎですよ~。
ドキドキハラハラさせて悪いなあとは思います(汗)
自分でもなんて話を書き始めたのだろうと思う今日この頃。
難しくてなかなか進みませんが、ちょっとでも早く続きをお届け出来るよう頑張りたいと思います。
  • posted by 高月慧ネン(かざね様へ) 
  • URL 
  • 2015.12/27 18:33分 
  • [Edit]
  • [Res]

Re: タイトルなし 

まるねこ様

いつもコメントありがとうございます(^^♪
お返事遅くなってすみません…。
聖蘭は本当に健気で、でも芯はしっかりしている強い子で、オリキャラながら慧ネンも大好きです(←親バカ発言ww)
ハロウィンSSのような、バカップル幸せ家族を目指して本編を頑張ろうと思います。
書きたい内容は沢山あるんですよおおお…!!
  • posted by 高月慧ネン(まるねこ様へ) 
  • URL 
  • 2015.12/27 18:38分 
  • [Edit]
  • [Res]

Re: タイトルなし 

はちこ様

お返事遅くなってすみません~m(__)m
夕鈴も無事に病院で診てもらえて、子供達も合流する事が出来て何よりです(^^♪
黎翔パパが自分の子だと分かるのは、生まれてからになりますよ~。
  • posted by 高月慧ネン(はちこ様へ) 
  • URL 
  • 2015.12/27 20:10分 
  • [Edit]
  • [Res]

Re: タイトルなし 

ひまわり様

初めまして!コメント&ご訪問ありがとうございます(^v^)
聖蘭も清良も、夕鈴ももちろん黎翔パパも、辛い今を頑張って乗り切って幸せを掴めるよう、執筆を頑張ろうと思います。
コメント返信はいつも遅いですが、これに懲りないでまたコメント頂けると嬉しいです(*_*;
  • posted by 高月慧ネン(ひまわり様へ) 
  • URL 
  • 2015.12/27 20:15分 
  • [Edit]
  • [Res]

Re: タイトルなし 

あい様

コメントありがとうございます(^^♪
いつもお返事遅くて申し訳ないです…m(__)m
黎翔パパの妻発言、確かにそこまで想っているなら早くくっつけば良いのに…。でもまあ、色々と事情がね(汗)
子供が産まれたら、状況も変わるはず!
聖蘭と清良も無事で何よりなので、後は夕鈴が危機を乗り切ってくれれば。
え?死神さんもヤクザさんも気になるって?
慧ネンも書きたいけど、指が進まないよおm(__)mこういう時はどうすれば良いでしょうね??
  • posted by 高月慧ネン(あい様へ) 
  • URL 
  • 2015.12/27 20:24分 
  • [Edit]
  • [Res]

Re: タイトルなし 

はる様

コメントありがとうございます!
いつもご訪問して下さってとても嬉しいです(^^♪
色々事情のある珀家と夕鈴ですが、こうやって少しずつ家族になっていくんじゃないかなあと思います。
亀更新ですが、続きも頑張りますね(^^♪
  • posted by 高月慧ネン(はる様へ) 
  • URL 
  • 2015.12/27 20:29分 
  • [Edit]
  • [Res]

Comment_form

管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。

左サイドMenu

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

右サイドメニュー

プロフィール

高月慧ネン

Author:高月慧ネン
『兎と狼のラビリンス』へようこそ。
黎翔と夕鈴が大好きな管理人・慧ネンが、溢れる妄想を書き殴るために作ったブログです。
原作沿いや現代パラレル、色々ありますので、お好きなお話をお読み下さい。
よろしくお願いします。

†いらっしゃいませ†

キリの良い数字を踏まれた方は、ご連絡下さい♪

ご訪問中のお客様

現在の閲覧者数:

にほんブログ村ブログパーツ

ブロとも申請フォーム

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

検索フォーム

QRコード

QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。