兎と狼のラビリンス

こちらは白泉社『狼陛下の花嫁』の二次創作ブログサイトです。(作者様・出版社様とは関係ありません)

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♪何よりも大切なもの ♯1

別ブログにアップしていたものを、順次こちらに移していきます。
芸能人ネタです。慧ネンの妄想の産物です。

Creuzシリーズ




♪何よりも大切なもの #1


土曜日の昼下がり、汀夕鈴はエレベーターで高層マンションの最上階に向かっていた。最近付き合い始めた恋人に、来て欲しいと頼まれたのだ。

ここ一週間ずっと仕事で地方を飛び回っていた彼は、昨夜遅くにようやく自宅に帰り着いたらしい。

「疲れた、もうヤダ…!夕鈴に会いたい、夕鈴が作ったお菓子が食べたいよぉ…」

0時過ぎに遠慮がちに電話をかけてきて、泣きそうな声で懇願されては、彼の望みを叶えてあげないわけにはいかなかった。

ちょうど土曜日だった事もあり、夕鈴は朝から甘い物好きの彼のためにケーキを焼いて持参してきた。
マンションと言うより、億ションと呼ばれる高級マンション。

この最上階のワンフロア全てを自宅とする夕鈴の恋人は、超人気バンドグループのリーダーでもあり、俳優業もこなす――芸能人だ。

『君の事が好きになった、私と付き合って欲しい。』

何度も何度も愛を囁かれ、何かの冗談かと逃げ回った。芸能人がただの庶民である普通の高校生の自分に、本気になるはずない。そう思いながらも、少しずつ彼に惹かれていた夕鈴は嬉しかった。

たとえ嘘でも、戯れでも。彼の言葉は本当に嬉しかったのだ。

追い掛けられては、逃げる。結局、そんなやり取りに痺れを切らした彼が自らの本気を見せつけ、初心な夕鈴を陥落させた。

夕鈴も誰かとお付き合いをするのは初めてだったが、それは彼も同じだったようで。初めて知った愛に戸惑いながらも、彼は真っ直ぐな愛情を向けてきてくれる。

あまりの溺愛ぶりに周囲は若干引き気味、夕鈴はそんな彼に振り回されながらも、幸せな日々を送っていた。


ポーン、と爽快な音が周囲に響く。エレベーターから降りた夕鈴は、玄関ホールに向かうために踏み出した足を止めた。

視線の先、半空きになった玄関の扉の前に、夕鈴の恋人はいた。

しかしそこに居たのは、彼一人ではなかった。

ストレートの黒髪、魅惑的でグラマラスな美女。

夕鈴が見たのは、そんな美女と、あろう事か口付けを交わす恋人の姿。

彼のために作ったケーキの箱は、愕然とした夕鈴の手から離れて落ちていった。


人気急上昇中のバンド『Creuz(クロイツ)』のリーダーでもあり、俳優としても活躍するReiこと珀黎翔は、ウンザリしながら目の前の女を冷たい瞳で見据えていた。

一週間ぶりに取れたまともなオフの日。愛しい恋人に会いたくて甘えたくて、夜遅くに悪いと思いながらも我慢できなくて電話をかけた。

駄々を捏ねると、優しい彼女はお菓子を作って行きますと言ってくれた。

嬉しくて待ち遠しくて、ドキドキワクワクしながら待っていたのに、先にやってきたのは招かれざる客だった。

黎翔は全く覚えてないが、女が言うには以前関係をもった事があるらしい。

『最近、会いに来てくれないし、電話もないから寂しくて。…携帯に電話しても繋がらないし…』

縋るように身体を密着させてくる女を冷たくあしらいながら、黎翔はそうだろうと思う。

過去の自分は、確かに相当遊んでいた。身体だけの関係を持った女も沢山いる。携帯には何時の間にか、顔も覚えていない女の名前が勝手に登録されていた。

本当の愛を知って彼女と付き合い始めてから、黎翔は携帯を変えたのだ。
今の携帯のナンバーは彼女とバンドメンバー、マネージャーや一部の仕事の関係者にしか教えていない。

「…もうお前とは関係を持つ事はない。私が冷静でいられるうちにここから去れ」

相手は一応女、手荒な事をするのは不味いだろうと思い、黎翔は低い声で女に忠告した。あまりしつこくされると、何をするか分からないが。

「…分かったわ。もうここには来ないから、最後にもう一度だけ、キスして…」

暫くの押し問答の末、女は目に涙を溜めて黎翔を見上げてきた。誘惑でもしようとしているのか、グイグイと胸を押し付けて来るが、黎翔は何も感じなかった。

本当は恋人のあの柔らかい唇以外に口付けるのは嫌だったが、もうすぐ彼女が来てしまう。彼女にこの場を見られる前に、この女には帰ってもらわなければ。口付け一つで帰ってくれるのなら、仕方がない。

「…分かった、これで最後だぞ。」

何の感情も込めず、女の口に唇を押し当てた瞬間。

ドサっと言う音が静かなホールに響いた。


ハッとして顔を上げた黎翔が見たのは、身体を震わせ涙を溜めた瞳でこちらを凝視する夕鈴の姿。

「ゆ、…夕鈴?」

幻だと思いたい…黎翔はそう思った。

「ご、ごめんなさい…わ、たし、私…見るつもりなんて全然…」

そんな黎翔の思いは、涙声で必死に言葉を紡ぎながら、ゆっくりとエレベーターに向かって後ずさる夕鈴の姿を見て淡くも崩れ去った。

「…夕鈴、待って!」

「ごめんなさい!!」

夕鈴はくるりと踵を返すと、乗ってきたばかりのエレベーターに飛び乗った。


パチパチと慌てて閉と一階のボタンを押すと、夕鈴はズルズルと床に座り込んだ。

先程の光景が目に焼き付いて離れない。

恋人と口付けを交わしていた、年上のグラマラスな美女。彼と並んでも、なんの引けもとらない。とてもお似合いだった。

高校生で、まだまだ子供で。恋愛にとても疎い自分では、太刀打ちなんてとても出来ない。

分かっていた筈だ。自分では、彼に相応しくないと。分かっていながら、必死に口説く彼に絆され付き合い始めてしまった。

あんな綺麗な女性がいるなら、そう言ってくれればよかったのに…。

「…こんなに傷付くなんて、馬鹿みたい…」

止まらない涙を必死に拭いながら、一階におりた夕鈴は歩き始める。


今はただ、一人になりたかった。


エレベーターに飛び乗った夕鈴を追いたかったのに、女にしがみ付かれて遅れをとってしまった。

驚愕に見開かれた瞳。流れ落ちる涙。

この光景を見て、どう思ったか想像はつく。

だからこそすぐに追いかけて、抱きしめて、キスをして、『僕には君だけだよ』と伝えたかったのに。

この女のせいで、誤解させたまま夕鈴に逃げられてしまった。

「…邪魔だ。即刻ここから去り、もう二度と私の前に姿を見せるな。」

怒気を込めて低い声で告げると、女は黎翔が本気で怒っている事に気付いたのか、蒼白な表情で頷き、逃げるように去っていった。


黎翔は玄関ホールに落ちてる白い箱を拾い上げた。

夕鈴が自分のために作ってきてくれた、お手製ケーキ。

疲れた時には甘いものが一番と、甘い物好きの黎翔のために作ってくれた物だったのに。

本当なら今頃は夕鈴と二人、向かい合ってケーキを食べて仲良く過ごすはずだったのに。

そっと蓋を開くと、地面に落ちた衝撃でケーキは原型を留めてなかった。

このケーキはまるで、形を失いかけている黎翔と夕鈴の関係のよう。

二人の関係は、元に戻るのか。


「ちょっとは遊ぶの控えた方が良いと思うよ?…きっといつか、後悔する。」


夜の街で遊びまくっていた自分に、いつもおちゃらけてばかりのメンバーの一人が、珍しく真面目な顔で忠告して来た時。

お節介なヤツだと、自分は聞き流した。

そのツケがこれかと、黎翔は悲しげに嘲笑った。



続く
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Comment

No title 

こんばんわぁ~~
 
「兎と狼のラビリンス」のサイト
可愛いいです!!

これからも、
ちょくちょく遊びにきます♪♪

それでわぁ~~

Re: No title 

新ブログに初コメ、ありがとうございます!
まだ慣れていないので更新もゆっくりですが、頑張っていきます!!

また来てくださいね♪
  • posted by 高月慧ネン 
  • URL 
  • 2013.01/14 00:16分 
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  • [Res]

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