兎と狼のラビリンス

こちらは白泉社『狼陛下の花嫁』の二次創作ブログサイトです。(作者様・出版社様とは関係ありません)

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♪秘密の旅行は、『何』がいっぱい? ♯5

続きです。

夕鈴の危機に黎翔は間に合うのか…?

Creuzシリーズ



♪秘密の旅行は、『何』がいっぱい? ♯5


自分を囲む三人の男達に、夕鈴は困惑する。

恋人の所に戻ろうと涙を拭い振り返ると、背後には男達が立っていて夕鈴は驚いた。いつから後ろにいたのだろう。物思いに浸っていた夕鈴は、彼らが近付いた事に全く気付いていなかった。

そして夕鈴が一番驚いたのが、彼らが自分に声を掛けてきた理由だ。

「ねえねえ、彼女、一人?」
「こんな寂しい所にいないでさあ、」
「俺達と遊びに行かない?」

いかにも遊んでいそうな、長髪男とスキンヘッドと金髪男は、軽い感じで夕鈴に声を掛けてきた。
そう、彼らは夕鈴をナンパし始めたのだ。

17年生きてきて、初めて経験するナンパと言う行為に、夕鈴は本気で驚くと同時に彼らに対して変な人達だなと妙に感心してしまった。
色気も女らしさもない自分に声を掛けてくるなんて、物好きもいるものだと、夕鈴は心の中でクスリと笑う。

だが夕鈴は気付いていなかった。

黎翔と付き合い始めて、人を愛し愛される事を知った夕鈴は、自分では気付かぬうちに花開くようにどんどん美しくなった。

けれど夕鈴は、黎翔と最後の一線を越えていない。まだ男を知らない無垢な身体は、どことなく冒しがたい色気を漂わせている。

そう言ったものが、男達を惹きつけるのだ。

「…すみません。彼と待ち合わせをしているで…。」

色事に疎い夕鈴に、そんな事が分かるわけもなく、彼女は困り顔で彼らに断りを入れる。心底申し訳ないように眉を下げるその表情が、男達をさらに調子付ける事に気付いていない。

「またまたあ…。そんな事言って!」
「そうそう!…ずっと一人でここまで来たよね。」
「彼とケンカでもしちゃった?」

泊まっている旅館の名を言われて、自分は彼らにずっと後ろをつけられていた事に気付いた。
途中で声を掛けずにこんな人気のない場所で初めて声を掛けた彼らの意図に気付き、夕鈴は初めて危機を感じる。

ツッと、嫌な汗が背中を流れるが、夕鈴はグッと拳を握る。

「ごめんなさい。…私もう旅館に戻りますので、貴方達とは一緒に行きません。」

ぺこりと頭を下げて、彼らの横をすり抜けようとする。

「…っ!?」

そんな夕鈴の腕を、金髪男が掴んだ。

「何するんですかっ!」

「まあ、そう言わずにさ。…俺達と一緒に行こうよ?」

「離して下さい!!」

夕鈴は必死にその手を振り解こうとするが、どんなに力を入れても離れない。

小さい頃から幼馴染の几鍔とよくケンカして、自分は男勝りだと夕鈴は思っていた。力も男に負けないと自負していたのに、どうやっても男の手を振り解く事が出来ない。

「君みたいな可愛い子を一人ぼっちにさせてるそんな男の事なんか忘れて、俺達とイイ事しよう?」

ニヤニヤしながら言う男の吐く息は、非常に酒臭い。

残る二人の男も、下心ありありの表情で夕鈴を見詰める。その瞳はギラギラとしていて、夕鈴は始めて見る異性のそんな視線に戦慄した。

「…や!…離してってば!」

身を捻って逃れようとするが、力強く握られた男の手から逃れられない。

金髪男に腕を引かれ、そして残る二人の男に肩を押され、公園の端のベンチの方に連れて行かれる。

「大丈夫。そんなに怖がらなくても、痛い事なんてしないから。」
「…最っ高に、気持ち良くさせてあげるからさ。」

夕鈴が逃げられないように周りを囲みながら、男達は楽しそうに笑う。

危険を察知した夕鈴は、泣きながら暴れだした。

「やだっ!…誰か!…誰か助けてっ!!」

必死に助けを求め叫ぶが、こんな山の中で声をあげても近くに人もいない。夕鈴の窮地を救ってくれる人は、誰もいない。

絶望を感じた夕鈴の脳裏に、優しげに笑う黎翔の姿が浮かんだ。

彼を傷付け、怒らせておいて、虫の良い話だと思う。
彼はまだ旅館にいるかもしれない。一人旅館を出てきた自分に愛想を尽かし、探してもいないかもしれない。

それどころか、こんな場所に彼が助けに来てくれるわけがない。

だが今、夕鈴が一番望むのは、愛しい彼だけだった。

「いやあ!…助けてっ、黎翔さんっ!!」

ギュッと目を閉じて、夕鈴は最愛の存在に助けを求めた。


その瞬間、強く握られ痛みを感じていた腕の拘束が解かれた。

フワリと漂うのは、僅かに香るコロンと、嗅ぎ慣れた彼の匂い。
閉じていた目を開けると、彼女の前に広がるのは見慣れた大きな背中。

夕鈴を護るように、彼はその場に立っていた。

「れい、しょ…さん?」

来てくれるわけがないと思いながら、助けて欲しいと願った存在が目の前にいる。

夕鈴は泣きながら、彼の背中にそっと頬を寄せた。

黎翔がその場所に着いた時、夕鈴は三人の男に囲まれて公園の端に連れて行かれようとしていた。
その先にはベンチがあり、その場所は道路からは木々が邪魔して死角になっている。
男達がそこで彼女に何をしようとしているか、気付いた黎翔は頭に血が上った。

夕鈴の自分に助けを求める叫びを聞いた瞬間、彼の頭の中で何かが切れた。

音もなく近付き、夕鈴の肩に腕を回す長髪男と、反対側の背を押しているスキンヘッドの男の肩を掴み、彼女から引き剥がした。

彼女の腕を無遠慮に掴んでいる金髪男の手首を掴み、無理矢理その拘束を解かせる。
そしてスッと彼女を男達の視線から隠す為に、自らの背中に隠した。

夕鈴が呆然と呟きながら、それでも自分の背に頬を寄せてくる。その存在の無事を確認し、黎翔はホッとしたが彼らを許すわけにはいかない。

掴んだままだった金髪男の腕を、ギリギリと捻り上げる。

「…いでででででっ!?」
「な、何すんだ、てめえっ!!」

男達は突然現れた黎翔に食って掛かる。

黎翔は男の腕を掴んでいない左手で、掛けていた眼鏡をスッと外す。
現れたのは、燃えるような紅い、紅い瞳。凄く冷たい瞳で、黎翔は男達を睨み付ける。

「…『何すんだ?』……それは私のセリフだ。」

思った以上に冷たい声が、黎翔の口から出た。

「…薄汚い手で、私の女に触れるな。」

黎翔の身体から、怒りの焔が立ち昇る。その眼光は人も殺せそうな勢いで、男達は恐怖でガタガタ震え始めた。


こいつらをどうしてやろうかと、黎翔は思う。

愛しい愛しい、夕鈴を傷付けた。さらにその清らかな身体を、汚そうとしていた。
そんな暴挙を働いた三人を、このまま許せるわけがない。

怒りに任せて金髪男を掴んでいた手に力を入れると、男の表情が苦しげに歪んだ。
後ろの男二人は、仲間を助けたいが黎翔の冷たい表情に動けないでいる。

「黎翔さん…」

背中に庇っている夕鈴が、不安そうな声で黎翔を呼ぶ。
縋り付いて来る彼女の身体はまだ小刻みに震えていて、どれほど恐怖を感じたのかが良く分かった。

大事に大事に、その身を傷付けない様に慈しんできたのに。黎翔の愛しい存在を、彼らは苦しめた。

「…二度と悪さが出来ないように、この腕、へし折ってやろうか?」

ニヤリと冷酷な笑みを湛え、黎翔は囁くように男に言う。

その言葉が決して冗談ではない事を証明する様に、黎翔は手に力を入れた。

「――そこまでにしとけ。」

金髪男の窮地を救うように、掛けられた声。
その声は、黎翔と夕鈴が良く知る声だった。

「几鍔…。」

黎翔の背中から少し顔を覗かせて、夕鈴は男達の背後にいる幼馴染の男の名を呟く。

黎翔は几鍔をチラリと見て、少し首を傾げる。

「…どうして止める?」

彼らが夕鈴に何をしようとしていたか、聡い彼なら気付いている筈だ。
妹のような存在の夕鈴を傷付けられて、彼だって男達が憎いはずなのに、何故、自分を止めようとするのか。

黎翔は理解出来なくて、几鍔に低い声で問う。

「…こいつらは夕鈴を傷付けた。恐怖を与えた。…私がそれを許せるとでも?」

「…どんな理由があろうと、人に怪我を負わせると障害や暴行罪になる。」

怒りに燃える黎翔を、几鍔は淡々と諭す。

「お前の華々しい功績に、それは相応しくない。」

Creuzのリーダーとして、そして『Rei』として人気を集めている彼。アーティストとしても俳優としても、彼はこれからどんどん良い評価を得ていくだろう。

こんな男達に、その未来を潰されるのは勿体無いと几鍔は思う。

「…お前の気持ちは良く分かる。だが夕鈴も、自分のせいでお前の人生に傷が付くのを望んではいない。」

ハッとして、黎翔は自分の背中に隠れる夕鈴を振り返る。
夕鈴は目に涙を溜めて、震えながらコクリと頷き、几鍔の言葉を肯定した。

黎翔は瞳を閉じる。

この三人は許せないが、几鍔が自分を思って言ってくれているのも分かる。
そして何より、唯一の存在がそれを望まないのであれば。

金髪男の手首を掴んでいた手から、フッと力を抜くと、男は力が抜けたようにガクリと尻餅をついた。
黎翔の素性に気付いたのか、呆然と黎翔を見上げてくる。

「あ、あんた、まさか…」

「CreuzのRei…?」

まさか芸能人がこんな田舎町にいるとは思わなかった長髪男とスキンヘッドも、恐る恐るといった感じで黎翔に問うてくる。

黎翔は何も言わずに、チラリと冷たい視線を彼らに向けただけだった。
だが返ってそれは、彼らの言葉を肯定してという事で。

男達はマジマジと、外した眼鏡を掛け直している黎翔の顔を見た。濡れる様な漆黒の髪、宝石のように紅い瞳。端正なその顔は、確かに今巷で大人気のバンドグループ『Creuz』のリーダー・Reiそのもので。

金髪男は立ち上がり、三人はピシッと背筋を伸ばし、黎翔に向かって頭を下げる。

「…すみませんでしたっ!!!」

几鍔の言葉で男の腕をへし折るのは思い留まったものの、彼らを許すつもりはない黎翔は嫌そうに視線を逸らす。
分かりやすいその表情に、几鍔は苦笑いを浮かべて三人に近付く。

「…分かってると思うけどな、今日の事は絶対口外するなよ?」

私生活を明かさない、Creuzのメンバー。
そのリーダー・Reiの恋人が、亜麻色の髪の一般人の少女。
これは世間に洩れてはいけない、シークレットなスキャンダルだ。

最も、過去何度かReiが記者会見などで自らばらした事があるので、Reiの恋人は一般人だという事は世間に知られているが。
これ以上の情報は、世間にばれない方が良いと判断し、几鍔は三人に念を押す。

自分でも脅迫紛いの事を言っているなあと自覚しつつ、これも腐れ縁の同級生と、妹のような幼馴染の為だと思い男達に注意を促した。

この事は絶対誰にも話さないと、三人は約束し、頭を下げながら逃げるようにその場を離れていった。
眼鏡の奥から今だ冷たい視線を向けてくる黎翔に、耐えられなくなったに違いない。

几鍔が溜息を吐きながら二人を見ると、仲違いをしていた二人は半日振りにギュッと抱き合っていた。

こうなってしまった二人には、もう周囲は見えていない。こんなに近くにいる几鍔の存在すら、二人は忘れているだろう。

「やれやれ…。」

世話の焼ける二人に呆れながら、お邪魔虫であろう自分はさっさと退散しようと几鍔は二人に背を向ける。

「…黎翔さん!?」

だが、夕鈴の悲鳴に近い声で几鍔の足は止まった。驚いて振り返ると、崩れ落ちる黎翔を必死に支える夕鈴の姿が目に飛び込んでくる。

「おいっ、どうした!?」

慌てて駆け寄り、几鍔も黎翔の身体を夕鈴と共に支える。

彼の顔は真っ青で、額に汗をかいている。
夕鈴は泣きながら、必死に名を呼び、彼に縋った。

「…黎翔さん?…黎翔さんっ!…しっかりして!!」


続く

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『兎と狼のラビリンス』へようこそ。
黎翔と夕鈴が大好きな管理人・慧ネンが、溢れる妄想を書き殴るために作ったブログです。
原作沿いや現代パラレル、色々ありますので、お好きなお話をお読み下さい。
よろしくお願いします。

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