兎と狼のラビリンス

こちらは白泉社『狼陛下の花嫁』の二次創作ブログサイトです。(作者様・出版社様とは関係ありません)

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♪ファンなのは、誰?

このお話は、『♪秘密の旅行は、『何』がいっぱい?』の数日後のお話です。

そちらを読まないと、意味不明かもしれません…

オリキャラ、再登場

そしてちょっとギャグ的内容

苦手な方は閲覧をお控え下さい。

♪ファンなのは、誰?


恋人との初めての旅行は、色々とあったがとても楽しかった。

思い出を沢山得て二人はまた日常へと戻り、黎翔はバンドと俳優業の仕事を、夕鈴は学校とバイトに精を出す。

学生は土日が連休とあって、夕鈴と二人ゆっくり過ごしたい黎翔は金曜日の夜にバイトを入れるのは良しとしない。彼との時間を少しでも増やしたい夕鈴も金曜日だけはいつも開けていたが、この日は一人欠勤が出てしまい、どうしても出勤するしかなかった。

時間はもうすぐ20時半。あと少しでバイトも終わる。

この後黎翔と、そして几鍔と三人で、食事に行く事になっていた。

金曜日の夜だけあって、客はサラリーマンやOL、そして学生のような若者も多い。
ピークも落ち着き、商品の補充もあらかた終えた。
店内も若い男性客が三人だけで、今は雑誌コーナーで立ち読みをしている。
もう一人のバイトの子に少し休憩に行くように言い、夕鈴はレジ周辺の整頓と消耗品の補充を行う。

「…すみませ~ん!」

しゃがみこんでカウンター内の清掃していると、背後から声を掛けられる。

「レジお願いしま~す!」

軽そうな男の声、先程雑誌コーナーにいた客だろうかと夕鈴は立ち上がって振り返る。

「はい、いらっしゃいま―
せ。」と続けられる夕鈴の言葉が途切れた。

レジの前には、どこかで見た事があるスキンヘッドと長髪男と、金髪男――。
三人の男達も夕鈴の顔を見て、目を点にしている。

「「「「あ~~~!!?」」」」

夕鈴と男達の声が、見事にハモる。

店内から聞こえてきた叫び声に、何事かと戻ってきたバイトの子に、何でもないからと言って戻らせた。

「うっそ…!」

「あの時の姉ちゃん!?」

「何でここにいるの?」

それはこっちが聞きたいと、夕鈴は思う。

いくら都会から数時間でいける田舎町だったとはいえ、そこで自分をナンパしてきた男達が、自分の生活圏内にいるなんて誰が思うだろう。

彼らの視線を受けながら、夕鈴は無言で商品をレジ打ちし袋に入れる。
三人分打ち終えて「ありがとうございました。」と商品を渡すが、彼らはまだその場から離れようとはしない。

不思議に思い夕鈴が顔を上げると、三人は何かを言いたそうにモジモジしている。

「何か御用ですか…?」

戸惑いながら夕鈴が聞くと、金髪男が言いにくそうに「あのよぉ…」と話し出す。

「…この後、もしかしてReiと会ったりする?」
「…は?」
「いや、姉ちゃん、Reiの恋人だよね?…明日は土曜だし、バイト終わったらReiが迎えに来るのかなと…」

そう言うのは、スキンヘッドの男だ。

確かにこの後、彼は迎えに来る。
確かに来るけど…。

何故それを、彼らに教えなくてはいけないのか。

警戒して眉間に皺を寄せた夕鈴を見て、三人は慌てだした。

「別に、世間にばらそうとか言うわけじゃないんだ!」
「そうそう!…姉ちゃんの事は誰にも話してねえよっ」
「…もう一人いた片目の兄ちゃんとも約束したし…!」

必死に弁解するのを聞いて、あの時の黎翔の瞳がよほど怖かったんだなと、夕鈴は少しだけ気の毒になる。

「じゃあ、何で…」

そんな事を聞いてくるのか問い掛けると、彼らは大きな体格に似合わない小さな声で、「サイン、もらえないかな?」と呟いた。


近くのパーキングに車を停め、いつもの公園で黎翔は几鍔と共に夕鈴を待っていた。

本当はバイト先のコンビにまで迎えに行きたいが、人通りが多い道を通るので、夕鈴からなるべく来るなと言われている。

バイト終了時間が過ぎ、15分を回る頃、夕鈴はやってきた。

「…ゆうり、」

笑顔で夕鈴を迎えた黎翔の表情が曇る。

何故なら、夕鈴は一人ではなかった。

恐縮そうな、困ったような表情で自分を見つめてくる夕鈴の後ろには、見た事あるような、無いような、三人の男。

旅行に行ったあの田舎町で、夕鈴をナンパし悪戯しようとした、あの男達だ。

スッと夕鈴に近付き彼女の腕を掴むと、男達から見えないように背後に庇う。
夕鈴が来るまでベンチに座っていた几鍔も、警戒して立ち上がった。

「――何の用だ?」

夕鈴に手を出したら容赦しないと、あれほど忠告したのに。

黎翔の周りを、冷たい空気が包み込んだ。
性懲りも無く夕鈴の前に現れた男達を、黎翔は鋭い瞳で睨む。

ヒヤリと変わった空気に、男達は冷や汗を掻き、恐怖からガチガチに固まってしまう。

「違うの、黎翔さん。」

だがそんな荒ぶる黎翔の背を、夕鈴がツンツンと突付くと、彼を纏う冷たい空気は一瞬で掻き消えた。

「…彼らの話しを聞いてあげて下さい。」

夕鈴は困ったように笑うだけで、その表情に恐れや恐怖も無い。
男達がまた夕鈴に何かしたわけではないようだ。

危険は無しと判断したのか、几鍔はまたベンチに座り夕鈴が買ってきた缶コーヒーを飲み始めた。


「…私に何か話があるのか?」

こんな男共の話しなど黎翔は聞きたくも無いが、夕鈴が頼むのなら仕方がない。

だがやはり言いにくいのか、「お前が言えよ」「いや、お前が…!」と三人は互いに言い合いをしている。

そんな三人を見て、夕鈴は可笑しくなってクスッと笑う。
あの時彼らに感じた恐怖が嘘のようだ。

「…黎翔さんのサインが欲しいんだって。」

仲の良い兄弟みたいな彼らに、夕鈴は助け舟を出す。

今世間で最も人気があるCreuzのリーダー・Rei。
彼のサインを欲しがるファンは、数え切れないほどいるだろう。

きっとこの三人も、家族か彼女か友達にファンがいて、サインを欲しがっている子がいるのだ。

偶然とはいえ、彼らはReiに係わり合いを持ってしまった。
だからもし、サインがもらえるのならして欲しいと思ったのかもしれない。

サインを欲しがっている子がどんな子か知らないけど、その子の為に頼み込むなんて、チャラチャラしているように見えるこの三人にもいいトコあるなあ…と、夕鈴が思っていると。

三人は意を決したように、手に持っていた書店の紙袋から同じ本を取り出し、

「…ずっとファンでした!…良かったらサインお願いします!!」

きっちり頭を下げ、大きな声で叫んだ。

「…は?」
「はい?」

まさかの事態に、黎翔も夕鈴も呆然とする。

几鍔は飲んでいたコーヒーを噴出し、

「――お前らかよっ!?」

と、突っ込んだ。

彼らが持っていたCreuzの写真集に、黎翔は溜息を吐きながらサインをする。
男のファンにサインを迫られても嬉しくないが(いや、女でも嬉しくない)、夕鈴の手前、無下にする事は出来ない。

サインをしている黎翔を横から覗き込んでいる夕鈴も、少し苦笑い気味。

それも仕方ない。コンビニで彼らに「サイン、もらえないかな?」と聞かれた時、夕鈴はまさか彼ら自身が欲しがっているとは思いもせずに勝手に女の子のファンだと勘違いしたのだから。

返された写真集をまるで女の子のようにギュウッと抱き締めた彼らは、「一生の宝物にします!」と頭を下げた。

初対面が最悪だったので、余り良い印象を持てなかったが、三人共、根は素直な礼儀正しい青年だったようだ。


「…何か以外だ。お前があいつらに連絡先を教えるとは思わなかった。」

予約しているレストランに向かう車の中で、几鍔は運転中の黎翔に向かって言う。

「するしかないだろ…」

バックミラーに映っている黎翔の顔は、少し不機嫌そうだ。

握手を求められ、連絡先が知りたいと土下座までされたら、黎翔だって教えるしかない。
ただし、教えたのはバンドメンバーや几鍔達を登録しているプライベート用。
夕鈴専用のナンバーは、彼女しか知らない。

「…でも私、彼らの事嫌いになれません。」

よほど可笑しかったのか、夕鈴はクスクス笑う。

「まあ、悪い奴らじゃないって事は分かったけどな。」

あそこまで熱狂的な、男のファンも珍しい。

「…これから何もなければ良いけどね。」

夕鈴が笑顔でいるのでもう何も言わないが、黎翔は溜息を吐いた。


一方、スキンヘッドと長髪男と、金髪男はというと――。

「やっべえ…!俺、感動して倒れるかと思った!」
「俺もっ!この手、洗いたくねえ!!」
「この写真集、額縁に入れて部屋に飾ろうかなっ!」

三人共、まだあの公園で悶えていた。

見た目からもっと上に見られがちだが、実は彼らは20歳とまだ若い。
元々不良だった彼らは親にも見離され、高校も一年もたずに中退した。
バイトを転々とし、その日一日を淡々と過ごす日々が続く。

そんな彼らがある日出会ったのが、高校を卒業したばかりの男が結成した四人のバンド・Creuzだ。

煌くステージの中央で歌う、紅い瞳の男。

まだ18歳の、Creuzリーダー・Rei――。

自分達とそう歳も離れていない男の凛とした姿に、三人は惚れ込んだ。

彼の活躍に感銘を受け、三人は自分達の生活態度を改めた。
昼間は鳶の職につき、夜間の学校に通い始める。
それぞれ一人暮らしをしているが、険悪だった両親との関係も少しずつだが良くなってきている。

Creuzのライブには必ず出向き、写真集が出たら必ず買い求める。
因みに金髪男の彼女もCreuzのファンだが、彼の異常な熱狂振りに引くくらいだ。


「…男の方のファンって、いるものなんですね。」

女の子のグループのファンなら分かりますけど…と、夕鈴は首を傾げる。

「いないとは言わないけどね…。現にライブ会場には男も見に来るし、ファンクラブにもいるよ。」

けどねえ…と、黎翔はちょっと困惑気味だ。

「…あそこまで熱狂的なのは、いないんじゃねえか?」

几鍔も彼らのようなファンは、初めて見る。

けれど同性のバンドグループのファンになるのがいけないわけではないし、彼らが何か悪さをするようには見えない。

「まあ、実害が無ければ良いんじゃねえの?」
「そうですよ!」
「…そうだね。」

にっこりと微笑んでくる夕鈴に、黎翔はようやく笑みを見せる。

今後、Reiに心酔する彼らが、黎翔と几鍔の事を『兄貴、几鍔の兄貴』、夕鈴の事を『姉(あね)さん』と言って慕ってくるなど、レストランで和やかに談笑する三人はまだ知る由も無かった。


END


実はこの三人、結構気に入ってます。

初登場させた時から、日常の中でばったり再会させようかなと考えてました。

彼らは悪になれなかったワル―元は良い人です
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よろしくお願いします。

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