兎と狼のラビリンス

こちらは白泉社『狼陛下の花嫁』の二次創作ブログサイトです。(作者様・出版社様とは関係ありません)

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♪嵐のculture festival ♯準備中

リクエスト小説(Creuzシリーズ)です。

第一弾は名無しのママ様から頂きましたリクです

慧ネンが考えていたお話に、リク内容をプラス(名無しのママ様、お気に召さなかったらすみません)

♪嵐のculture festival ♯準備中


大分寒い日が続き出した、11月初めの木曜日の昼過ぎ。
街でその姿を見たのは、本当に偶然だった。

「――あ、姫ちゃん?」

マネージャーが運転する車でメンバー達と移動中、ふと声を上げたのは浩大。
その声に反応して、黎翔が視線を同じ方向に向けようとすると、

「!…わあ~!ちょっと待て、見るなRei!!」

急に浩大は慌て出した。

が、時すでに遅し。

黎翔ははっきりと見てしまった。

信号待ちをしている人間の中に、制服姿の愛しい彼女の姿。
そして、彼女を囲むように立っている男子生徒達。

「…………」

黎翔の眉間に皺が寄る。
どうしようもない、不快感。

すぐ近くにいる黎翔に気付く事無く、夕鈴はおそらくはクラスメイトだろう生徒達と、楽しげに談笑しながら歩道を渡っていく。

「…何か買い物にでも来たのでしょうかね。」

その姿を視線で追いながら、運転席の李順が言う。

助手席に座る黎翔の機嫌の悪さに比例して、車内の温度がどんどん下がっていくようだ。

「…名門校も、暇なものだな。」
「もう文化祭の時期ですから、その関係では?」

方淵と水月も、後部座席からその光景を見詰める。
夕鈴と共にいるのは男子生徒だけでなくもちろん女子もいるのだが、黎翔の目には写っていないらしい。

「…明日姫ちゃんと会うんだろ?聞いてみれば?」

黎翔が余りにも不機嫌になっていくので、浩大はそう提案してみる。
これから行う仕事に、支障が出ない事を祈りながら。


翌金曜日の夕刻、黎翔は駅前のナクドマルドで夕鈴を待っていた。

普段は人目につかない場所で待ち合わせたり、夕鈴が黎翔の部屋に行く事がほとんどなのだが、黎翔はどうしても普通の恋人達のように街中で待ち合わせをしたかった。

黎翔の素性がばれる事を恐れて渋る夕鈴を、大丈夫だからと説得し、説き伏せた。

ナクドマルドはハンバーガーやケーキ、クッキーなどを販売する、学生達を客層に考えた低価格の店だ。
店内で食べても良いし、持ち帰りもOK。
待ち合わせの場所として良く利用され、さらに駅前と言う事もあり、特に夕方は店内が混雑する。

16時を回り、金曜の夕方の店内は学生達で溢れかえっていた。

黎翔はもちろん念のため変装はしているし、目に付きにくい店の奥のテーブル席に座っている。
待ち合わせの時間は16時半――。

コーヒーを飲みながら雑誌を読んでいると、すぐ傍のテーブルで笑い声が起こった。
先程から賑やかなグループで、話す内容や声からすると高校生らしい。
学生が多いのだから、どうしても店内は賑やかになる。

もともと回りに関心がない黎翔は、特に気にしてもいなかったが…。

「――やっぱり狙い目は、夕鈴じゃねえの?」

突如聞こえてきた恋人の名に、黎翔はピクリと反応した。

チラリと視線を向けると、そのテーブルには数人の男が座っている。
彼らが纏う制服に、黎翔は見覚えがあった。

夕鈴が通う、私立白陽学園の制服だ。

彼らが夕鈴の同級生でクラスメートなのか、それとも違う学年なのか黎翔には分からない。
だが黎翔にとって許しがたいのは、自分の恋人の名を呼ぶ男がいると言う事だ。

漂う不穏な空気に気付きもせず、彼らは楽しそうに会話を続ける。
若い彼らは周囲の目も気にならず、話題も尽きないようだ。

「俺は〇〇さんの方が良いな。」
「え~?あんな地味なのが!?」
「△△の方がよくね?」
「あー、あの巨乳!」
「…俺も汀が良い。最近可愛くなったよな。」
「でもあいつ、彼氏いるだろ?…ほら、前迎えに来てた…」
「彼氏っつても、うちの生徒じゃないし。…バレやしないって!」
「そうそう!…男いたって、別れさせたら良いんだよ!」

なにやら会話が怪しい方向に向かい、カップを持つ黎翔の手が震え、ミシミシと音を立てる。

「――女なんて、モノにしちゃえばこっちの物だろ。」

ミシッと嫌な音がしたのを、黎翔は聞くともなしに聞いていた。

「――200円になります。」

レジの女性従業員は、手渡されたクシャクシャになった伝票に首を傾げる。

室内にいるのに帽子を被ったまま、サングラスすら外そうとしないの男性客を少し不審に思ったが、何もなかったので取り合えず平静を装い自分の仕事を全うする。

「ありがとうございましたー!」

客を見送り、彼が座っていた席を片付けに来た従業員は、テーブルを見て目を見開いた。
そこには一万円札と、ヒビが入ったコーヒーカップが残されていた。

店を出た黎翔は、フウッと息を吐き出す。
あのまま店の中にいたら、自分は犯罪者になってしまうかもしれないと思い、席を立った。

それにもうすぐ、彼女がやってくる。
あんな男達がいる店に、彼女を入店させたくなかった。

怒りはまだ治まりそうにないが、取り合えず男達の事は頭から消去する。
さてどうしようかな?と、ジーンズのポケットに手を突っ込み考えていると。

「――あれ、黎翔さん?」

声を掛けられ、顔を上げる。
愛しい彼女の声を、黎翔が聞き間違える筈もない。

「夕鈴っ!」

駆け寄ってくる夕鈴の姿を見て、黎翔の表情がパアッと明るくなる。

「…どうしたんですか?中で待っていてくれたら良かったのに…」

「うん?…ちょっとね。」

店内での事を話したくなくて言葉を濁した黎翔に、夕鈴は首を傾げただけで込み入って聞いては来なかった。勿論、聞かれても話すつもりなどない。

「…じゃあ、行こうか。」

夕鈴の腕を組み、黎翔は微笑む。

これから映画を見に行くのだが、その前にブティックにでも寄ろうかなと黎翔は考える。

「映画の前に、服買いにいこっか?」
「…黎翔さんが服買うの、珍しいですね。」
「うん?…僕じゃなくて、夕鈴の服。」

制服も良いけどね~と笑う黎翔に、夕鈴は目を瞠る。

「もう!…言ってくれたら服持ってきたのに!無駄遣いしないで下さいって、いつも言ってるじゃないですかっ!」

自分の服装には無頓着で、あれば何でも着てしまう黎翔だが、夕鈴の服を買う時には高いものばかり買ってしまう。困った事に、黎翔はそれが高い買い物だとは思っていない。

黎翔と夕鈴の金銭感覚は大きく違う。

自分の部屋の箪笥(クローゼットなんて洒落た物は汀家に無い)に、場違いにも収まっている高額な彼からの贈り物達を思い出し、夕鈴は顔を青くする。

「大丈夫、大丈夫。…夕鈴は何を着ても似合うから。」

「…んなっ!」

サングラスの奥の紅い瞳が優しく自分を見詰めているのに気付いて、夕鈴は顔を真っ赤にした。

「…褒めたって駄目ですからね!私が言いたいのは、そう言う事じゃなくて…!」

「はいはい。」

何を言っても、彼には敵いそうにない。


「…そういえば夕鈴、昨日お昼過ぎに××にいたでしょ?」

黎翔が昨日の事を夕鈴に聞けたのは、映画を見終えてレストランに入った時だ。

「え?…黎翔さんも近くにいたんですか?」

スパゲティを食べながら、夕鈴は聞いてくる。

「…うん。仕事の関係で、移動中だったんだ。」

仲良さげに歩いていたのを見て機嫌が悪くなり、少しばかり仕事に支障をきたしたのは彼女には内緒だ。

「実は来週、文化祭があるんです。」
「…文化祭?」
「はい。…学園はスポーツのみならず、文科系の方にも力を入れているので。夏に行われるスポーツ祭は運動部の生徒が、秋の文化祭は文化部の生徒が中心になって行うんです。」

バイトをしているので幽霊部員と化してはいるが、夕鈴はクッキング部に所属している。
普段余り活動に参加しない分、文化祭のような大きな催しの時には率先して行動する。
今年はクッキング部で、持ち帰りも出来るカフェを開くのだ。

「昨日はそのカフェで出すメニューを考える為、街のカフェを巡っていたんです。」

名門・白陽学園の文化祭は世間的にも知られている。初日は生徒とその保護者・近親者で行うが、二日目は部外者もOKの為、毎年沢山の人間が訪れる。

そして文化祭で得た収益は、募金として寄付される。

「結構凄いんですよ。…去年も大盛況で、沢山の方が来られました。チャリティーのバンド演奏とかもあって、過去には有名人も飛び入りで参加したとか。」

「…へえ。そうなんだ。」

ニコニコと楽しそうに話す夕鈴に、黎翔は相槌を打つ。

黎翔が高校生の頃、もちろん文化祭もあったが、人と群れるのを嫌った彼はほとんど参加しなかった。
その為、文化祭と言うものが、どれほど楽しいのか残念ながら分からない。

「…ところでさ、文化祭の催しで、何か賭けみたいなのってある?」

黎翔はナクドマルドでの男達の会話がどうしても気になった。
夕鈴がいいとか、他の子がいいとか、まるで賭話のようだ。

「賭け…ですか?…さあ、そんな話しは聞いた事ないですけど。」

こてん、と夕鈴は首を傾げる。
隠しているわけではなく、本当に何も知らないようだ。

「…そっか、なら良いんだ。文化祭があるんなら、来週末は会えないんだね…。」

その事実に気付き、しゅんと肩を落とす。
こういう時、年齢の差は辛いものがある。

「土・日で二日間あるんですけど、その代わり月・火が代休なんです。もし黎翔さんお休みなら、連絡下さい。」

色々と準備もあるので、文化祭が終わるまでは会えそうもない。夕鈴は少しの期待を込めて、黎翔にお願いした。
普通の恋人のようにはいかないけれど、仕方がないと割り切った。

黎翔が高校生なら、校内デートとかも出来るかもしれない。
けれど彼は社会人で、芸能人なのだ。

――その事実は、変えようもない。

それから数日後の週の半ばに、黎翔の携帯にメールが入った。仕事用ではなく、プライベート用の携帯だ。その内容は、愛しい彼女に関する事。

しばらくの遣り取りの後、黎翔は最後のメールを送り、携帯を閉じる。

『―――了解。どうもありがとう。』

顎に手を当てて部屋で一人考えていた黎翔は、今度は仕事用の携帯を取り出し電話を掛ける。

『…はい。どうしました?』

こんな時間に珍しいですね、と相手、Creuzマネージャーの李順は言う。

「…この間お前が言ってきた仕事、受けても良い。」
『――どうしたんです、急に?…あれほど嫌がっていたのに。』

李順がそう言うのも無理はないと思う。彼がその仕事を持ってきた時、黎翔が「絶対にやらない」と断ったからだ。

「事情が変わった。…ただし、条件がある。」
『貴方の出す条件は怖いですね。…何ですか?』

当日までもう日がない。本当に急な話しになる。
先方がこの申し出を受けなければ、どうしようもない話になるのだが。

「――今週の日曜日。場所は、私立白陽学園。」

この高校以外の仕事なら、受けるつもりはない。

その言葉は声に出さなかったが、付き合いの長い李順は黎翔の思っていることなどお見通しのようで、深い溜息を吐いた後、『やってみましょう』と電話を切った。

残り僅かな日数で、李順は先方にその許可を得れるのか。
話術が得意な彼の事、黎翔は絶対良い返事を聞けると思っていた。


そして数日後。

嵐の文化祭が、幕を、開ける――。


♪嵐のculture festival ♯当日 に続く


あ、ナクドマルドは有名な某ファーストフードショップを弄りました。
通称『ナック』です

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Author:高月慧ネン
『兎と狼のラビリンス』へようこそ。
黎翔と夕鈴が大好きな管理人・慧ネンが、溢れる妄想を書き殴るために作ったブログです。
原作沿いや現代パラレル、色々ありますので、お好きなお話をお読み下さい。
よろしくお願いします。

†いらっしゃいませ†

キリの良い数字を踏まれた方は、ご連絡下さい♪

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