兎と狼のラビリンス

こちらは白泉社『狼陛下の花嫁』の二次創作ブログサイトです。(作者様・出版社様とは関係ありません)

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♪嵐のculture festival ♯当日・午前中

リクエスト小説(Creuzシリーズ

♯準備中の続きです。



♪嵐のculture festival ♯当日・午前中


「どういう事ですか!?…こんなの聞いてないですっ!」

夕鈴は顔を真っ赤にさせて、所属する部の部長に食って掛かる。

勿論三年生で彼女より年上の部長は、普段穏やかな彼女の滅多に見ない表情に驚きながらも、その般若のような顔に思わず仰け反った。

文化祭・二日目。

昨日は何も言われなかったのに、今日登校するといきなり部長に呼び出された。
何かと思い部室に行くと、突然言われた企画の事。

部長曰く、クッキング部が開いているカフェで、沢山商品を購入してくれた人物に、特別権利が与えられると言う。
しかもそれが、部に所属する生徒(男女共)との、デート権だと言うのだからいただけない。

「…仕方ないでしょ。昨日売り上げが余り良くなかったんだから。」
「う…」

それを言われると、夕鈴は何も言い返せなくなる。
初日の昨日は他の部に客足を取られ、余り売り上げが伸びなかった。

「デート権って言っても、一回だけだし。…まあ、誰を選ぶかはお客様次第だけどね。」

それもそうか、と夕鈴は思う。
自分が選ばれるとは限らないのだ。

脳裏に浮かんだ恋人の姿に、夕鈴は申し訳なく思いながら「分かりました…」と返事をする。

部には自分より美人な子もいる事だし、選ばれる可能性は低いはず。
後は選ばれない事を、祈るだけだった。

が、その一時間後。
物事はそう上手くいかないという事を、夕鈴は痛感していた。

朝八時から一般公開で沢山の客が訪れると、カフェはあっという間に混雑し始める。
昨日の夜に仕込みをして、今朝早くに焼いたケーキやクッキーもどんどん売れていく。
クッキング部総出でかなりの量を作ったので、すぐに売り切れにはならないだろうが、売れ行きは初日とは大違いだ。

足りなくなる事を考え、持ち帰りようのクッキーやマフィンの生地作りに夕鈴達は大忙しだった。

カフェの場になっている夕鈴のクラスの教室は、学園の生徒だけでなく、他校の生徒や一般人で溢れかえったいた。
手伝ってくれているスポーツ部の生徒も、右往左往している。

大盛況なのは良いが、これは例のデート権が関係しているのだろうかと、夕鈴は複雑な気持ちで黒板を見る。
そこには売り上げに貢献した人物の名が、上位10名まで記されていた。
一位の人物は、一万円近い買い物をしている。

確かにケーキなどは多少割高だが、所詮はお菓子で良くここまで購入したものだ。

「…お疲れー」

ピタッと、夕鈴の頬に冷たいものが押し付けられる。
驚いて振り返ると、そこには明玉が立っていた。

「――ありがとう。」

彼女がくれたジュースを、ありがたく頂く。
先程まで部室で仕込みをしていたので、かなり喉が渇いていた。

バンド好きが高じてけいおん部に所属する明玉は、午後に行われるミニコンサートまで暇らしい。

「それにしても、大盛況ね。」

明玉は周囲を見渡しながら溜息を吐く。

売り上げに貢献してくれるのはありがたいが、その思惑がいただけない。
上位にいるのは男ばかりで、デート権を獲得しようと目論んでいるのは目に見えている。

「…あんた、良いの?」

黎翔の事を知っている明玉は、大丈夫なのかと聞いてくる。

「仕方ないわ。…決められた事だもん。それに、私が選ばれるとは限らないし。」

夕鈴はそう言って、困ったように笑った。


夕鈴が教室の隅のテーブルで休憩を取っている時、教室の入り口に構えられたレジの前に一人の生徒が立っていた。

「…いらっしゃいませ。」

レジにいた二人の女子生徒は、目の前に立つ男子生徒を見て顔を赤らめる。

艶のある黒髪、黒縁の眼鏡を掛けている彼は、確かに学園の制服を着ているが、こんなカッコイイ生徒、うちにいたかな?と女子生徒達は思う。

「――ねえ。」

ポーと見蕩れていると、彼から声を掛けられ慌てて返事をする。

「はっ、はい!!」

「…あれ、僕も参加出来るかな?」

彼が指を指したのは、デート権の詳細が書かれた黒板。

「あ、はい。参加できますが…」

答えながら彼女達は首を傾げた。

こんなにカッコイイ彼なら、もう恋人がいてもおかしくないし、デート権なんかを得なくても、付き合ってくれる女は沢山良そうだ。

「そう?…良かった。」

彼は、ホッとしたように息を吐き。

「――じゃあ、ここにあるもの全部、貰おうかな。」
「…はい?」
「ケーキもマフィンもクッキーも、これからお店に出そうとしている物、全部ね?」

にっこり笑って、そう言った。

「――夕鈴。」

声を掛けられ顔を上げると、クラスメイトの男子と、そして何故か三年の生徒もいる。
よくよく見ると、黒板に名が書かれている生徒が数人いる事に気付く。

「…デート権、必ず獲得するから、どこに行きたいか考えといてくれ。」

そう言うのは、数回しか会った事がない先輩だ。

「抜け駆けは良くないですよ、先輩。…まだ勝敗は決まってないし。」

勝負の終了は、文化祭が終わるか、用意していた材料が全て無くなるまで。
まだ勝負は終わってないと、食って掛かるクラスメイトの男子。

「…え?」

どうやら彼らは、デートの相手に夕鈴をご所望らしい。

「ええっ!?」

まさかの展開に、夕鈴は呆然。

目の前で言い合いを始めた男子生徒達を何も言えずに見詰めていると。

背後からいきなり、スラリとした腕が伸びてきて夕鈴の身体を包み込んだ。


今から店に出そうとしている物まで全部買い占められて、女子生徒達は唖然とする。

「…これでデート権は僕が獲得した――と言う事で良いのかな?」

彼の問いに、コクコクと頷く。
そんな彼女達にニコリと微笑むと、彼は教室の中に入っていった。


人込みは苦手だが、バンドを結成して沢山の人間の前で歌い始めてからは、人の視線には慣れたなと、黎翔は思う。

初めて訪れた、白陽学園の校内。
黎翔はパンフレットを片手に、クッキング部が開いているカフェを目指す。

廊下を歩いていると、擦れ違う者は目を瞠り、何度も声を掛けられる。
その全てを無視し、黎翔は一直線に夕鈴の教室を目指した。

教室の前のレジで、もう誰も夕鈴が作ったものを食べられないように、これから店に出そうとしている物まで全て買い占める。
金額がとてもお菓子に使う額ではなくても、黎翔は気にしない。

レジ係の女子生徒達の視線を受けながら、教室に足を踏み入れた黎翔は、奥のテーブルにいる夕鈴の姿を見つける。

だが愛しい彼女を囲むのは、金曜日にナクドマルドで見掛けた男共だ。
クラスメイトだけでなく、三年もいたらしい。
夕鈴をデートに誘い、その後どうするのか。
力ずくで、自分のモノにしようとでも言うのか。

――そんな事、許せるわけがない。

脇目も振らず夕鈴の元に歩いていくと、こちらに背を向けている彼女の細い身体を後ろから包み込む。

「――悪いけど。」

夕鈴は誰にも渡さない。

「この娘(こ)、――僕のだから。」

離さないというように、ギュウッと抱き締める。

その場に一瞬沈黙が訪れ、そして「キャー!!」と、女子生徒達の黄色い悲鳴が響いた。

「れ、れいしょ…さん?」

心底ビックリしたように呟く夕鈴の項に、そっと唇を押し付ける。

彼女が驚くのも無理はない。

黎翔は今日仕事だと彼女に言ってあったし、文化祭に行くとも言わなかった。
しかも黎翔は、何故か白陽学園の制服を身に纏っているのだ。

「ど、どうしてここにいるんですか?」

問い掛けてくる夕鈴に、黎翔は「ん~?」と言葉を濁す。

「…どうしてだろうね?」

ギロッと眼鏡の奥から、男共を睨み付ける。
自分達の悪巧みを感付かれて、彼らは顔を蒼白にして慌てて逃げていった。

フウッと溜息を吐き、黎翔は夕鈴の身体を解放する。

沢山の生徒達の前で抱擁された夕鈴はと言うと、顔を真っ赤にしてアワアワしていた。クラスメイト達に黎翔の事をなんて説明すれば良いのか分からない。

「行こう、夕鈴。」

悩んでいると、黎翔に手を取られ、腕を引かれる。

「え?…行くってどこへ…?」

困惑する夕鈴に、黎翔はにこりと笑いかける。

「…せっかくのデート権だし。――デート、しよう?」

彼は悪戯っ子の笑みを見せる。

「…彼女、お借りします。」

有無を言わさないような彼の声に、クラスメイトやクッキング部の生徒達は頷くしかない。

もっとも黎翔が全ての商品を購入したので、もうカフェを閉めるしかなく、後は片付けくらいしかする事がない。夕鈴一人抜けても、すぐに終わるだろう。

夕鈴の腕を引き教室を出る黎翔は、奥にいた女子生徒に視線を向けた後、ニコリと微笑む。

実はこの企画は、夕鈴が知らなかっただけで最初から仕組まれていたのだ。
計画したのは黎翔がナクドマルドで会った男子生徒数人。
初日にクッキング部のカフェに客が流れないよう妨害し、焦る部長にそれと無しに客足を増やす企画を提案する。

しかもそれは、以前から夕鈴に善からぬ想いを持つ男子生徒達が企てたもの。

黎翔が夕鈴の危機を知ったのは、偶然その企みを耳にし、教えてくれた生徒がいたからだ。

『―――了解。どうもありがとう。』

あのメールの相手、その情報源は、愛しい彼女の無二の親友。

黎翔の唇が「ありがとう」と動いたのに気付いて、明玉は首を振って笑った。


♪嵐のculture festival ♯当日・午後に続きます
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黎翔と夕鈴が大好きな管理人・慧ネンが、溢れる妄想を書き殴るために作ったブログです。
原作沿いや現代パラレル、色々ありますので、お好きなお話をお読み下さい。
よろしくお願いします。

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