兎と狼のラビリンス

こちらは白泉社『狼陛下の花嫁』の二次創作ブログサイトです。(作者様・出版社様とは関係ありません)

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♪嵐のculture festival ♯閉幕

リクエスト小説(Creuzシリーズ

♯当日・午後の続きです。



♪嵐のculture festival ♯閉幕


「おっそいわよ、夕鈴!」

何故か華月と凛に支えられるようにしてミニコンサート会場になっている体育館に現れた夕鈴に、明玉はプンプン文句を言う。

「…せっかく校内デートの感想を聞こうと思ったのに。」

もう時間無いじゃないとブツブツ言っている彼女に、夕鈴は「ごめん」と謝る。
まさか黎翔とHな事をしていて、腰が抜けて歩く事が出来なかったなんて言える筈もない。

だが彼と何をしていたかを思い出して、顔を真っ赤にした夕鈴を見て、明玉はハハーン…とにやけ顔だ。

「…その様子だと、彼といけない事してたでしょ?」
「な!?…そんな事…!」
「してないとでも言うの?…そんな跡付けて。」

明玉はニヤニヤ笑いながら、夕鈴の襟をグイッと開く。

そこには彼が残した所有の証が、咲いたばかりの花のように散らばっている。
襟をキチッと締めていれば辛うじて見えない、ギリギリのラインに咲く紅い跡。

(…黎翔さん、相当嫉妬してたし、我慢出来なかったのねえ…)

焦ったように襟を元に戻す夕鈴を見ながら、明玉は彼女の嫉妬深い彼氏の事を思い出し、苦笑い。
普段出来ないような事が出来て、二人が楽しめたなら何よりだと思う。

館内にコンサート開始の放送が響き、最初に行う吹奏楽部の雪花は舞台裏に下がっていった。

順調に時間は進み、明玉が所属するけいおん部のライブも無事に終わった。
そして、15分の休憩のアナウンスが入る。

時間はもうすぐ二時半。

腕時計で確認して、夕鈴は黎翔はきちんと仕事しているかな?と思う。

お手洗いを済ませ席に戻ろうとすると、一般人の客と肩がぶつかった。
「すみません」とお互いに頭を下げ、夕鈴は歩き出す。
気のせいかもしれないが、先程より混雑しているような気がする。

「何か人、増えてないかしら…?」

華月の言葉に、凛はコクコク頷く。

「…二人もそう思う?」

だとしたら、自分の気のせいではない。

夕鈴達が座っていた指定席(チケットが必要)の後ろ、一般席や半二階のホールに、続々と人が集まってくる。老若男女問わないが、圧倒的に女性が多い。

皆携帯を見ながら驚いたような表情。
頬を染めている女性もいる。

何かあるのだろうかと、三人で首を傾げていると。

「…ちょっと夕鈴、大変!!」

そこに、ライブを終えて着替えを済ました明玉と雪花が駆け寄ってきた。

「どうしたの、明玉?」

彼女の慌てぶりに、夕鈴は首を傾げる。

「――これ見てっ!!」

ズイッと目の前に押し出されたのは、彼女の携帯電話だった。


夕鈴と別れた黎翔が向かったのは、校舎最上階にある理事長室だ。

「――遅いですよ、Rei。」

扉を開けて中に入ると、途端に飛んでくるきつい言葉。

「…一分くらいでグダグダ言うな。」

彼の言葉に黎翔も低い声で返す。
もっと夕鈴と二人だけの時間を過ごしたいのを我慢して、ここに来たというのに。

そんな黎翔に、Creuzマネージャー・李順は、深い溜息。

「まあ、この程度ですんで良しとしましょう。」

黎翔は30分くらい遅れて来るのではないかと思い、集合の時間を30分早めておいたのだが、取り越し苦労だったようだ。

「…他のメンバーも待ってますよ。」

そう言って李順が隣の会議室の扉を開けると、そこにはCreuzメンバー・方淵、水月、浩大がいた。

「おはようございます、先輩。」

真面目な方淵と水月は、黎翔に向かってきちんと挨拶をする。

「おはよう」と短く返し、菓子を食うのに夢中になっている浩大に視線を移す。

「…はよ、Rei。…姫ちゃんは?」

彼がばくばくと食べているのは、クッキング部のカフェで黎翔が買い占めたお菓子達だ。

「…屋上にいる。」
「屋上ぉ?…そんな人気の無いところで、隠れてナニしてたのかなあ?」

ニヤニヤ笑う彼から視線を逸らし、その言葉を無視する。

「…夕鈴さん一人置いてきたのですか?」

水月が驚いたように聞いてくる。

黎翔も彼女一人を置いていきたくなかったが、仕事もある。
何より、これ以上夕鈴の傍にいたら理性が持ちそうもなかった。

「――彼女の友達に、迎えに行くように頼んである。」

だから夕鈴の親友の凛と華月に、屋上にいる彼女を迎えに行ってあげて欲しいとメールをした。
二人とも快く了解してくれたので、心配するような事は何も起こらないはずだ。

「はいはい、お喋りはここまで。」

パンパンと手を叩き、李順がキラリと眼鏡を光らす。

数日前の深夜に近い時間に受けた、黎翔からの電話。
彼の言葉を聞き、李順は翌日すぐに行動に移った。
余りにも急な話でとても大変だったが、白陽学園の理事長はこの話を快く受け入れてくれた。

「――さあ、お仕事ですよ?」

李順の言葉に、黎翔は着ていた白陽学園の制服を脱ぎ捨てる。

用意された衣装に着替え、メイクをした黎翔の表情は、Creuzリーダー・Reiの顔だった。


明玉の携帯電話が映し出していたのは、何とCreuzの公式ページ。

そこには、血の様な赤い文字で、

――白陽学園で、最高のステージを見せてやる――

Reiらしい挑発的な言葉が、大きく書かれていた。

「…聞いてた?」

問われて、夕鈴はプルプルと首を振る。

この後仕事があるとは言っていたが、その内容までは聞いていない。

だが彼は去り際、『後でね』と言わなかっただろうか?
夕鈴は夜の事だと勝手に思っていたのだが…。

その時、急に館内の照明が落とされた。
日中とはいえ、暗幕が下ろされている館内は真っ暗になる。

「…さあ、皆様!今年もこの時間がやって来ました!!」

ライトが当てられた舞台の端に立ち、マイクを通し大きな声でそう言うのは、進行役のアナウンス部の部長だ。
まだ立っていた者達は慌てて腰を降ろし、ザワザワしていた館内が静かになる。

「毎年好評の、アーティスト飛び入り参加!!…今年来てくれたのは何と、Creuzの皆様です!!」

真っ暗な中、ステージにだけスポットライトが当てられる。

そこには、漆黒の衣装に身を包んだ四人の男。

「きゃあああああっ!!!」

途端に上がる、黄色い悲鳴。

「Rei様ー!!」
「Ryuー!」
「Suiぃ…!」
「Hiroぉ!」

ファンだろう人達が、メンバーの名を呼び、手を振ったり写真を撮ったり。

生徒から受けた質問を投げ掛ける進行役の彼に答えるのは主にHiroで、RyuとSuiもたまに答える程度。
だがReiは、相槌を打つだけで全く喋ろうとしない。
小声で明玉に聞くと、普段のライブの時もこんな感じらしい。

自分といるときの黎翔は良く喋るし笑うので、かなり違和感を感じてしまう。

そうなんだ…と思いながらステージに立つ彼を見ると、黎翔は夕鈴の視線に気付いたようでふと顔を向けた。

仲の良い友達に囲まれて、自分を見てくる夕鈴。
彼女と別れてまだ二時間もたっていないというのに、夕鈴の顔を見た瞬間、黎翔はとても幸せな気持ちになった。


自分をじっと見詰めてくる黎翔の唇が、『ゆうりん』と動いたのに夕鈴は気付く。
そして彼は、優しげに微笑んだ。

「きゃー!!」
「今、こっち見て笑ったよね!?」

顔を真っ赤にした夕鈴の背後で、別の女子生徒が声を上げる。
それを聞いて、明玉達は彼女達が哀れに思えてくる。

ステージに立つRei、彼の目に写っているのは、夕鈴ただ一人だ。

10分足らずの質問トークが終わり、Creuzのライブが始まる。

椅子に座っていた観客達も立見席と同じように皆総立ちになり、熱狂しながら手を振り上げる。
大歓声の中、煌びやかなステージで四人は90分近く歌い続ける。

――そして彼らは、宣言した通り最高のステージを見せた。


ライブは終了し、彼らがステージを去っても、館内はまだ騒然としていた。
頬を染めて、夢心地に椅子に座っている女性。
運良くライブを見る事が出来て、友達かファン仲間にメールで連絡している女の子。
決して少なくはなかった男子生徒を含む男性客も、興奮したように会話をしたり、電話で話したり。

「…凄かったね。」
「…うん。」

夕鈴は友達とともに、出口に向かって歩く。

彼らのライブを、夕鈴は初めて見た。

いつも夕鈴の前で見せる優しげな表情ではなく、獰猛な野生の狼のようなReiの顔。

初めて会った頃もあんな感じだったなと、夕鈴は懐かしくも思い、そしてステージで歌う彼が何だか遠く思えて、少しだけ、泣きたくなった。

一度各教室に戻り、HRを済ませてから生徒達は各場所に散らばる。

楽しい祭りの後は、片付けが待っている。
本来なら自分の部の片付けをするのだが、午前中ですべて商品を売り切ってしまったクッキング部員はする事がなく、夕鈴はコンサート会場になった体育館の片付けを手伝った。

片付けを終えて夕鈴達が学園から街に下りる坂道を歩いていると、その横をクラクションを鳴らし車が走り抜けていった。

「あれ?…今の…」

その車内に、手を振っている浩大と水月、関心が無いように真っ直ぐ前を向いている方淵の姿を見たような気がして、夕鈴は首を傾げる。
もしCreuzのメンバーなら李順は運転しているはずだが、黎翔の姿がなかった。

「どうしたの?」

足を止めた夕鈴に、雪花が声を掛ける。

「あ、うん…。今の車…」

そう言った夕鈴の傍に、ピタリと一台の車が横付けされた。

ピカピカに磨かれた、真っ赤なスポーツカー。
黎翔の愛車の一台だ。

「――お疲れ様。」

ウインドウが下り、そう声を掛けて来たのは黎翔だ。

「…黎翔さん!」

夕鈴は嬉しそうに破顔し、

「お、お疲れ様ですっ!」

明玉達は慌てて頭を下げる。
明玉と雪花はたった30分足らずのステージだったが、黎翔は90分もぶっ通しで歌い続けたのだ。
疲れているのは彼の方だろう。

「…もうお仕事終わりですか?」

メンバーと別れたと言う事は、今日はもうオフなのだろうかと思い夕鈴が聞く。

「ううん、ごめん。…20時から生放送の収録があるんだ。でも、19時までにスタジオ入りすれば良いから送っていくよ。」

乗って、と夕鈴に向かって微笑む。

「…君達もどうぞ。」

夕鈴が助手席に乗ったのを確認して、黎翔はまだ歩道に佇む明玉達に声を掛ける。

「い、いえっ!」

「…私達は歩いて帰るのでお気遣い無く。」

必死にブンブン首を振っている彼女達に、黎翔は苦笑い。

「―そう?…遠慮しなくても良いのに…」

黎翔はそう言うが、せっかくの短い恋人達の時間。
明玉達は、黎翔と夕鈴を二人だけにさせてあげたかった。

「――気を使わせちゃったかな?」

夕鈴が後ろを向いて手を振っていると、黎翔がクスリと笑って呟く。

「え?」

「…彼女達、僕達を二人だけにさせてくれたみたい。」

眼鏡の奥の赤い瞳は、悪戯っ子のように細められる。

夕鈴の顔が、ボンッと真っ赤になった。

「部屋に戻って、ちょっとだけ時間あるかな…?」

何か良からぬ事を考えているのか、黎翔の声は何だか楽しそうだ。

「せっかくだし、彼女達の期待に答えてみない?」
「期待しているのは、黎翔さんだけでしょ。」

エッチ、と夕鈴はプイッと顔を逸らす。

笑いながら宥める黎翔の声と、文句を言う夕鈴の声が車内に響く。

「――そう言えば、夕鈴。…僕達のライブどうだった?」

「う…カッコ、良かったです…」

「ホント?…良かった!」


嵐のculture festival、――閉幕。


END

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『兎と狼のラビリンス』へようこそ。
黎翔と夕鈴が大好きな管理人・慧ネンが、溢れる妄想を書き殴るために作ったブログです。
原作沿いや現代パラレル、色々ありますので、お好きなお話をお読み下さい。
よろしくお願いします。

†いらっしゃいませ†

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