兎と狼のラビリンス

こちらは白泉社『狼陛下の花嫁』の二次創作ブログサイトです。(作者様・出版社様とは関係ありません)

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♪何よりも大切なもの ♯3

続きです。

Creuzシリーズ

♪何よりも大切なもの #3


昼休みになり、夕鈴は溜息を吐きながら机に突っ伏した。


土曜日の午後に恋人の部屋の前で、恋人と綺麗な女性が口付けを交わしているのを見た。
悲しくて居た堪れなくて、引き止める恋人の声を振り切って逃げてしまった。
いや、悲しかったのは確かだが、どちらかと言えば自分が惨めに思えたのだ。


芸能人である、恋人。

端正な顔立ちの彼は、沢山のファンもいるし、過去に付き合ってきた女性もいるだろう。彼と共にいた女性を見た時、その違和感の無さに気付き、夕鈴は苦しくなった。

彼の隣に立つのは、彼女のような女性が相応しい。
分かっているのに、分かっていた筈なのに、こんなに苦しい…。

机に伏せた顔。閉じた瞳の縁に、ジワリと涙が浮かんだ。

「…夕鈴、いる~?」

その時、教室に明るい声が響いた。

「…明玉、どうしたの?」

夕鈴は涙を拭い、顔を上げる。

彼女は別のクラスに在籍する、夕鈴の親友だ。


この学校にはカフェやレストランもあり、購買もある。もちろん外で買ってきても良いし、お弁当持参も認められている。

教室でも中庭でも、どこで食べるかも生徒の自由だ。

明玉とはよく昼ご飯を一緒に食べるのだが、昼休みが始まるまでの休み時間にどこで食べるか連絡があるのに、今日は無かった事に夕鈴は今気付いた。

「どうしたのじゃないわよ。…あんた、昨日から携帯の電源切ってるでしょ?借りたい本があったから電話したのに繋がらないし、メールも返ってこないし。」

近付いてきた明玉に言われ、夕鈴はあ…、と思う。

昨日からではない。土曜日、彼のマンションを飛び出してから、彼からの連絡を恐れて電源を落としたのだ。そしてその携帯は、電源が切られたまま学生カバンの中に入っている。

「ご、ごめん…!昨日何時の間にか充電切れてて、充電した後、電源入れずに持ってきちゃった。」

明玉に本当の事を話すわけにはいかない。

彼女には恋人が芸能人である事を教えていない。

もし恋人との間にあった事を言えば、恋話好きの彼女の事。根掘り葉掘り聞かれるのは目に見えている。

「…そうなの?あんたらしいわね。…ところで、今日はお昼どうする?」

「あ、私ちょっと用事があるから他の子と食べてくれる?…今日はパンだから食べてすぐ用事するし。」

「分かったわ。あ、そうだ。…借りたい本の名前メール入れるから、今度貸してね」

明玉はそう言うと、教室から出て行った。


明玉の後姿を見送った後、夕鈴は慌ててカバンから携帯を取り出すと、電源を入れた。

ピロリン♪と電源が入ってすぐ、届いていたメールが受信される。

「……え?!」

夕鈴は思わず声を上げた。着信メールはどんどん増えていく。

受信トレイには100件以上の未開封メール。

並ぶ恋人の名前。

一番最初のメールの受信時間は、あの日のあの時間。


『夕鈴、今どこ?』

『誤解なんだ。…話がしたい』

『夕鈴、怒ってる…?』

『謝りたい。返事ちょうだい。』

『お願い、電話に出て…』


『夕鈴……』


数分おきのメールは彼の必死さを伝えてきた。

「電話…?」

慣れない手付きで今度は着信履歴を開いた夕鈴は、震える手で口を覆う。

留守番電話には、今にも泣きそうな彼の声で『連絡が欲しい』と言うメッセージが残されていた。

「…なんで?…何でこんなに…」

夕鈴は教室に残っているクラスメイト達に聞こえないように、小さな声で呟く。


彼にとって、自分は釣り合っていない恋人の筈だ。彼にはもっと美人で、聡明で、素晴らしい女性が相応しい。

なのに何故、彼はこんなに必死なのだろう?


その時ちょうど着信音が鳴り響き、ビックリした夕鈴は携帯を取り落としそうになった。
慌てて出ると、聞こえてきたのは少し困ったような男の声。

「…姫ちゃん?」

「浩大さん…?」

自分の事を『姫ちゃん』と呼ぶのは、恋人のバンドメンバーのHiroこと、浩大しかいない。

「え?…なんで浩大さんが?」

確かに今は昼時だが、以前恋人に聞いていた今日の予定では、打ち合わせの後リハーサルがあると聞いている。

「お仕事大丈夫なんですか?」

本名は世間に知られていないとは言え、相手は芸能人。つい内緒話をするように声を潜めてしまう。

「う~ん…。大丈夫と言えば大丈夫なんだけど…ね」

受話器から聞こえてくる声は、彼には珍しく焦っているような、心底困ったようなものだった。



続く
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