兎と狼のラビリンス

こちらは白泉社『狼陛下の花嫁』の二次創作ブログサイトです。(作者様・出版社様とは関係ありません)

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♪Love Letter ♯中編

続きです。

リクエスト小説(Creuzシリーズ



♪Love Letter ♯中編


「…ラブレターって、どんな事書くんだ?」

夕鈴を自宅に送り、黎翔はそのままテレビ局に向かった。

収録の前の楽屋で、黎翔がメンバー達にそう問うと、彼らはそれぞれの反応を見せた。

方淵は目を点にしているし、水月は読んでいた雑誌を落としてしまった。

「…はいいい!?」

ガタガタと椅子から滑り落ちた浩大は、何言っているんだこいつとばかりに黎翔を見上げる。

失礼なヤツラだなと思いながら、黎翔は溜息を吐きながら言う。

「…書いた事ないから、どんな事を書けば良いのか分からない。」
「もらった事ぐらいあるだろ!?」

高校の頃、彼が沢山の女と付き合っていた黎翔。
当然ラブレターも、相当な数貰っていた筈だと思い、浩大は聞いたのだが。

「読まずに捨てていたから、何が書かれてあったのか知らない。」

「…………。」

呆れてものが言えない。

世の女の子達が聞いたら嘆き悲しみ、男共が聞けば嫉妬に狂いそうだ。

「どうして突然、そのような事を思ったのですか?」

水月が問うが、黎翔は面白く無さそうに口を閉ざす。

「…姫ちゃんだろ?」

黎翔がこんな顔をするのは、夕鈴が絡んだ時のみだ。
物知り顔で浩大が聞いてくる。
その顔はニヤニヤしていて、当たりだろ?と言っているようだ。

「…夕鈴が、学校の先輩からラブレターを貰った。」

嫌々ながら黎翔は暴露する。

(あんな女性にラブレターなんて、物好きな男もいるものだ)

夕鈴に対し辛辣な方淵は、内心彼女を皮肉る。
こんな言葉を黎翔が聞けば怒り狂うのは目に見えているので、決して声には出さないが。

(彼女の魅力に気付いた生徒もいるのですね)

黎翔に愛し愛され、夕鈴は蕾から美しく花開いていっているように水月は思う。
最も黎翔から見れば、彼女に近付くそんな男はすべて害虫に見えるのだろう。

「ハハーン…。姫ちゃんに好意を寄せるその男を見返してやりたいと。」

ニヤニヤ顔で、プププ…と笑うのは浩大。
彼だけは思った事をズバズバ言い、黎翔に対し遠慮も容赦もない。

浩大の言う通りなのだが、それを認めると相手の男に負けたような気がして、黎翔は素直に認める事が出来ない。

が、実際はその通りのなのだ。
夕鈴にラブレターを贈った、その先輩とやらに負けたくない。

初めてラブレターを貰い喜んだ夕鈴に、自分もラブレターを贈って喜んでもらいたい。

「…特に書き方なんてないと思いますよ?」

静かにそう言うのは、水月だ。

黎翔の事が少し苦手な為、必要な事以外滅多に話しかけてこない彼が、こうやって自分から黎翔に意見を言ってくるのは初めてだ。

「自分の気持ちを、嘘偽りなく書けば良いのです。…別に飾らなくても、カッコイイ言葉を使わなくても、真剣な想いはきっと相手に伝わる筈です。」

黎翔の顔を見ながら、水月はそう諭す。

初めて会った時から、彼の威圧的な赤い瞳が怖かった。
特に何も言わなくても、相手を屈服させるような強い力を持った黎翔の瞳。
人の上に立つ者が持つ、支配者の瞳だ。

だから出来るだけ、彼から距離を置いた。
必要な事だけしか、会話をしなかった。

けれどある日、黎翔は一人の少女と付き合い始める。

それからの彼は。

良く話し、良く笑い、とても幸せそうで。
欠けていた人間らしさを、次第に取り戻した。

その相手――夕鈴の事で、悩んだり、困ったり、右往左往している彼は本当に人間らしくて。
彼女の存在が、彼にとってどれほど大切な存在なのかが分かった。

そして二人の関係を応援しようと思えた。

「…そういうものか?」
「ええ。」

だから困っている彼に、少しだけアドバイス。

「それも良いけどさ」

二人の会話を聞いていた浩大が、面白そうに身を乗り出してくる。

「…もっと良い方法があるぜ?」

悪巧みを考え付いた時のように、彼はニヤリと笑う。

「――お前はCreuzのリーダーでヴォーカリスト・Reiだろ?その先輩に負けない最高の歌を、姫ちゃんに贈ってやれよ。」


日曜日の夕方。

バイトを終えて帰宅した夕鈴はハアッと溜息を洩らす。

黎翔の部屋で、彼に先輩から貰ったラブレターを見られてから今日で10日目。
実を言うと、あの日から彼と会っていない。

他の男から貰ったラブレターを見て気を悪くした黎翔が、怒って会おうとしないのかと思い夕鈴は不安になったが、日に何通も送られてくるメールと毎日必ず一回は掛かってくる℡で、そうではなくただ仕事が忙しいのだと分かりホッとする。

けれど会えない時間は寂しくて、夕鈴は肩を落とす。

それに、例の先輩に、まだ返事を出来ていないのも、彼女の悩みの種になっていた。
何度断りを入れに行っても、先輩はなかなか諦めてくれない。

自分なんかのどこが良いのだろうと、夕鈴は首を傾げる。

まあ、こんな自分を本気で愛してくれる男もいるのだが。

「…姉さん、お帰りなさい。」

リビングには、夕鈴が溺愛する弟がいた。
日曜日なのに遊びにも行かず、ずっと勉強していたらしい。

「ただいま、青慎。…今日は何事もなかった?」

朝からバイトに出ていた夕鈴。自分の留守中に大事な弟に何か無かったかと、心配げに青慎に問う。

「何も無かったよ。」

心配性の姉の言葉に、青慎は苦笑い。
女性の姉の方が危険も多いだろうに、自分の魅力に気付かない姉は、全く自分の心配をしていない。

「あ、そう言えば、姉さんに荷物が来てるよ?」
「荷物?…誰から?」

親友達が何か送ってくるなら、前以って言ってくれるはず。
他に自分に荷物を送ってくる人なんていたかしら?と、夕鈴は首を傾げる。

キッチンに置いていたらしい荷物を、青慎は持って来てくれた。

「…えーと、ハクさん?て方から。」
「――っ!?」

はい、と手渡された小さな荷物を、夕鈴は危うく取り落とす所だった。

小包を受け取って、慌てて階段を駆け上がり自室に下がった夕鈴。そんな姉の姿を見ながら、青慎は複雑な気持ちになる。

母親が死んで、ずっと幼い自分の母代わりになってくれた姉。
年頃になっても恋もせず、学校とバイト三昧の日々。
中学生になった自分を未だに子供扱いし、大事に慈しんでくれるたった一人の姉弟(きょうだい)。

そんな姉が、一人の男性と付き合い始めたのは、新緑が眩しい初夏の頃――。

その姉の相手に、青慎はまだ会った事が無い。

ただ、携帯は家族と知人の連絡用に持っていた姉が、良く電話で話したり、メールをするようになったり。
帰宅時間はほぼ決まっていた姉が、帰りが遅くなったり、たまに朝帰りをするようになったり。

ああ、誰かと付き合い始めたんだな、と、青慎が気付いたのは早かった。
哀れな父は未だに、その驚愕の事実に気付いていない。

夜遅くに帰って来る時も、帰りが朝になる時も、「友達と遊んでて」「友達の家に泊まるから」という娘の言葉を、疑いも無く信じているようだ。

溺愛している娘にすでに彼氏がいる事を知った時、父は倒れてしまうのでは?と青慎は心配している。

彼に愛されているのだろう、姉はどんどん綺麗になっていく。
毎日がとても幸せそうで、そんな姉の顔を見るのはとても嬉しい。

まだ見ぬ姉の彼氏に、感謝したり、ちょっとだけ嫉妬したり。
ちょっぴりシスコンの青慎は、複雑な気持ちだった。

可愛い弟がそんな事を考えているなど思いもせず、自室に飛び込んだ夕鈴はバタンと扉を閉めてそこに凭れ掛かった。

ハアハアと息を吐き、手に持つ小箱を見詰める。
確かに弟の言う通り、差出人欄には『珀 黎翔』と彼の名が―。

電話でもメールでも、彼は何も言ってなかった。

それに今日は自分の誕生日でもないし、世間的に何かイベントがあるわけでもない。
黎翔は一体、何を贈って来たのか。

コタツに足を入れて座り、テーブルに置いた小包を開ける。
割れ物なのか巻かれていたクッション材を外し、綺麗な包装紙を破らないように丁寧に開けていくと。

「わあ…!!」

夕鈴は感嘆の声を上げる。

現れたのは、ドーム型の置き時計だった。
しかもその長針は狼が、短針は兎が象られている。
時間帯によって、狼が兎を追い、兎が狼についていく。

そして真上と真下で、ピタリと重なる二匹の姿。

「かわいい…」

テーブルに頬をつけ、目の前の時計をツンと突付く。

狼は、ステージで歌う黎翔の姿そのもの。
そして兎は、そんな彼に捕まった自分だろうか。

でも夕鈴の狼は、鋭い牙と爪を持ちながら、兎(自分)を大事に愛しんでくれる、優しい優しい狼。
だから夕鈴(兎)も、そんな彼に追われても怖くないし、時には彼を追い掛ける。

これは自分達の姿かもしれない。
黎翔もそう思い、これを選んでくれたのだろうか?

箱の中にあったのは時計だけではなく、真っ白な封筒に入れられた彼からの手紙。

封を解き、カサカサと便箋を開いた彼女は。


汀 夕鈴 様


「何でこんなに他人行儀なのっ?」
フフッと笑いながら、夕鈴は黎翔からの手紙を読む。


貴女との出会いは最悪なものだったかもしれないけれど、
あの日から僕は貴女の事が好きです。

でも僕は、手紙を書くのも苦手だし、
貴女の顔を見て伝える事も出来ないから。

貴女に対するこの想いを、歌にして貴女に届けます。

どうか僕のこの想いが、貴女に伝わりますように。

珀 黎翔



名前の下には、チャンネルと番組名が書かれている。

時間は、今日の21時。

「黎翔…さん…?」

彼は一体何を思い、この手紙を書いたのか。

その真意が分からす、夕鈴は呆然と手紙を見詰めるだけだった。


Love Letter ♯後編に続く
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『兎と狼のラビリンス』へようこそ。
黎翔と夕鈴が大好きな管理人・慧ネンが、溢れる妄想を書き殴るために作ったブログです。
原作沿いや現代パラレル、色々ありますので、お好きなお話をお読み下さい。
よろしくお願いします。

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