兎と狼のラビリンス

こちらは白泉社『狼陛下の花嫁』の二次創作ブログサイトです。(作者様・出版社様とは関係ありません)

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♪二人が出会って、初めての… ♯前編

リクエスト小説(Creuzシリーズ)です。

第三弾はちゃうちゃん様から頂きましたリクです



♪二人が出会って、初めての… ♯前編


「そう言えば、もうすぐあいつ、『――』だ。」

12月の初めに、電話でそう教えてくれたのは、彼のバンド仲間。

その日、学校からの帰り道で、夕鈴はとある店先に飾られた輝きに心奪われた。

ウインドウの中に飾られた輝きは、少し高価なもので、貧乏な一般家庭の夕鈴が簡単に手が出せるようなものではない。
けれど、どうしてもそれが欲しかった。

「バイト少し増やせば、何とかなるかな…?」

誰に言うわけではなく、夕鈴は呟く。

『その日』まで、もう二週間足らず。
短期で雇ってくれる所がないか探そうと、夕鈴はヨシッと気合を入れた。

高校生になってからずっとしているコンビニバイトのシフトが入っていない日に、夕鈴は新たにケーキ屋のバイトをするようになった。
ちょうどクリスマスまでの短期バイトを募集していたのと、時給もそこそこ良く、希望ならバイト代の日払いも可だったためだ。

朝早く起きて家事をし、学校を終えたらバイトに向かう。
そんな多忙な日があっという間に過ぎ、彼と会えない日が続いた。

『え~?…夕鈴、明日もバイトなの?』

受話器の向こうで、情けない声を上げるのは、夕鈴の恋人・黎翔だ。

「ごめんなさい、人手が足りなくて…」

『でも、昨日も一昨日も、夕鈴ずっとバイトだよ?…僕達、もう10日も会ってないんだよ?』

分かってる?と聞かれて、夕鈴はギュッと唇を噛む。

そんなの夕鈴だって分かっている。
夕鈴だって、大好きな彼に会いたいし、甘えたい。

けれど『その日』まで、後4日しかない。
今頑張らないと、夕鈴は絶対後悔すると思った。

「…もう少ししたら落ち着きますから、そうしたら会いにいきます。待ってて…くれますか…?」

何も事情を知らない彼に、勝手な事を言っているのは分かっている。

夕鈴は不安になって、黎翔に聞く。


彼は、今最も人気のある芸能人だ。
本来なら、夕鈴が会う事も出来なかったかもしれない、遠い存在。

ハアッと、大きな溜息。

『…分かったよ。』

ぼんやりしていた夕鈴は、黎翔の返事にハッとする。
静かな声は怒っているようにも聞こえて、夕鈴は身体を震わせた。

『明日も早いんでしょ?…もう遅いから、早く寝た方が良いよ。』

じゃあね、と言って電話は切れ、夕鈴は携帯を耳に当てたまま「あ…」と声を洩らす。

通話が切られた今、聞こえるのはツーツーと言う音だけで、夕鈴はノロノロと腕を下ろし、ボタンを押した。

夕鈴はフラフラと歩き、勉強机の椅子に座り込む。
耳に残るのは、冷たい、突き放すような黎翔の声。

怒った?

呆れられた?

――それとも、嫌われちゃったのかな?

嫌な思いに捕らわれ、夕鈴は机に肘を着き手で顔を覆う。

彼に事情を話す事は出来る。
けれど出来る事なら『その日』まで秘密にして、黎翔をびっくりさせてあげたい。
彼に、喜んで欲しい。

その為に、夕鈴は今一生懸命頑張っているのだ。

ジワリと滲んできた涙を、夕鈴は乱暴に拭う。
泣いている暇なんて、――無い。


「…ちょっと夕鈴、大丈夫?」

翌日、HR前に教室にやって来た明玉は、夕鈴を見るなり心配そうに声を掛けた来た。

「顔色、良くないよ?」

言われて、夕鈴は苦笑いをする。

昨夜、黎翔との電話の後勉強をしていたのだが、何時の間にか机に顔を伏せ眠ってしまっていた。
目が覚めたら当然朝で、厚着をしていたとはいえ、朝の冷たい気温に夕鈴の身体の熱はすっかり奪われていた。

熱は無かったので登校したが、ゾクゾクと寒気はするし、身体がダルイ気がする。

「少し風邪気味なだけ。…大丈夫よ。」

親友を安心させるように夕鈴は笑ったが、明玉はまだ不安そうだ。

「…今日バイト、休んだら?」

彼女の言葉に、夕鈴はフルフルと首を横に振った。

バイトを休むわけにはいかない。
どんなに辛くても、後4日頑張らなければ。

彼の為、自分の為。
1日でも無駄には出来ない。
幸い今日は、コンビニのバイトの方だ。

辛そうにしている夕鈴を見ながら、明玉は彼女の恋人に連絡を入れなければと思っていた。


「…汀、大丈夫か?」

深夜バイトの欠員が出て、急遽出勤した店長に問われ、夕鈴はハッと顔を上げた。
客足が途絶えた暇な時間、レジに立ったままぼんやりしていたようだ。

「すみません、店長。大丈夫です。」

そう答えたものの、身体は正直しんどい。
念の為マスクをして業務についたのだが、喉は痛いし、熱が出てきているのか関節が痛い。

後10分ほどで、バイト終了の21時になるし、今日は帰ったら早く寝ようと夕鈴は思う。
早く休んで、明日に備えなければ。


《夕鈴が風邪引いたみたいです。今日はコンビニのバイトに行くようなので、もし時間が空いてれば迎えに行ってあげて下さい》

そんなメールがメル友の明玉から届いていたのは、彼の恋人が授業を終えた頃だった。
黎翔はその頃撮影中で、小休憩の18時頃にメールに気付いた。

(風邪?…昨日はそんな感じなかったのに…)

不思議に思いながら返信すると、

《勉強している途中で、寝ちゃったって言ってました》

と返ってきた。

昨夜の事を、黎翔は少し後悔していた。

愛して止まない恋人に会えない日が続き、黎翔は少しイライラしていた。

会いたいと思っているのは、自分だけなのか?
彼女は、自分に会いたいと思ってくれないのか?

自分に会う時間よりもバイトを優先する夕鈴に思わずカッとなって、ついきつい言い方をしてしまった。

夕鈴の言葉も聞かず電話を切ってしまったが、彼女のあの後、勉強していたのか。
学生の本分の勉強の時間を削ってまで、夕鈴は何故バイトに励むのか。

どうして夕鈴は、何も言ってくれないのだろう?
彼女の力になれない事が、凄く、虚しい。

撮影は順調に進み、予定より早い20時には終える事が出来た。

明玉からメールが来なくても、今日は夕鈴に会う為にコンビニに行ってみようと考えていたので、黎翔は局を出て愛車に乗り込み、夕鈴のバイト先に向かった。

黎翔はコンビニに到着すると、駐車場に車を止め、車から降りた。
店内には客の姿は無く、レジ付近に男性従業員が一人立っている。
彼はおそらく、店長なのだろう。

夕鈴は黎翔がコンビにまで来るのをあまり良しとしないが、今回だけは彼女に何と言われようが構わない。

彼女を家に送り届けるまでの、僅かな時間でもいい。
彼女と、少しでも一緒にいたい。

そう思うのは、自分だけなのだろうか?

制服に着替えてスタッフルームから出てきた夕鈴に気付き、商品補充をしていた店長は彼女に近付く。

「汀、家に電話して、誰かに迎えに来てもらえ。」

高校生の女の子を雇っている身、もし彼女が帰宅途中に何かあれば、大変な事になる。

「いえ、大丈夫です。」

夕鈴は答える。

母はいないし、父は帰宅してないかもしれない。もし帰宅していても、きっと晩酌して寝ている事だろう。
几鍔に電話して頼めば来てくれるかもしれないが、そんな事をすれば、必ず黎翔に連絡が行く。
それだけは、イヤだ。

頑なに大丈夫だと繰り返す夕鈴に、店長は困った顔をする。

「じゃあ、タクシーで帰れ。」

そう言われて、そんな贅沢出来ないと思う。
何時間もかかるわけではなし、店長が心配するほど悪い状態ではないと思う。
首を横に振られて、「でもなあ…」と店長が眉を下げた時。

「――彼女は僕が送っていきます。」

背後から掛けられた、凛とした声。

その声に、夕鈴はまさかと思い、視線を向ける。

「どうして…?」

自分の声が掠れているのが分かる。


コンビニの入り口には、いつものように眼鏡を掛けた、スーツ姿の黎翔が立っていた。


続く
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よろしくお願いします。

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