兎と狼のラビリンス

こちらは白泉社『狼陛下の花嫁』の二次創作ブログサイトです。(作者様・出版社様とは関係ありません)

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♪二人が出会って、初めての… ♯後編

続きです。

リクエスト小説(Creuzシリーズ



♪二人が出会って、初めての… ♯後編


結局夕鈴は翌日も起き上がる事が出来ず、黎翔の部屋のベッドの中で過ごした。

次の日には熱が下がったので登校し、放課後バイトに行く前に、気掛かりだった街のお店に向かった。

「うそ…!」

二週間前のあの日、夕鈴が心奪われたウインドウの中の輝き。
ケースに入れられ、二つ並んで飾られていた赤と青の宝石。

黎翔にとても似合いそうな、彼の紅い瞳と同じ色の宝石がついたピアス。
彼の耳にピアス穴が開いている事に気付いていた夕鈴は、どうしてもそれが欲しかった。

4日前にはあったはずの品が、別の商品に替えられていた。

「ない…。」

売れてしまったのか?
それともただ片付けられただけなのか?

気になった夕鈴は、一度も入った事のない店内に足を向けた。

「え?、あの商品?」

宝石店の上品な女性店員は、夕鈴の問いに丁寧に答えてくれた。

彼女が言うには、今朝開店と同時に来店した若い男性客が、二つとも購入していったとの事。
『恋人が欲しがっているから』と、その客は満面の笑みでそう言ったらしい。

お礼を言った夕鈴は店を出て、トボトボとバイト先に向かって歩き出した。
この二週間、自分は何の為に頑張ってきたのだろう。
彼の笑顔が見たくて、無理した挙句、黎翔にも迷惑を掛けて、結局一番欲しかったものは手に入れる事が出来なかった。

ジワリと滲んできた悔し涙を、夕鈴は乱暴に拭った。

「ご迷惑を掛けて、本当に申し訳ありませんでした。」

今日のバイトはケーキ屋の方だった。前日急に休んで迷惑を掛けた事を、夕鈴は店長に詫びた。

「大丈夫だよ。君の代わりに入ってくれた友達が、とても頑張ってくれたから。」

風邪は良くなったのかい?と、30代前半の若い店長は夕鈴に笑う。

「…え?」

実は、今日の昼休みにコンビニの方にも電話をして、欠勤した事を詫びたのだが、コンビニの店長も同じような事を言った。
夕鈴の友達だと言う青年が、代わりにシフトに入ってくれたと。

「…見た目ちょっとちゃらっぽくて大丈夫かなと思ったんだけど、なかなか器用な子でね。ちょうど人手も欲しかったから、続けて雇う事にしたんだ。」

ちょうど良かったよと笑う店長を見て、一体誰だろうと夕鈴が首を傾げていると。

「――おはようございま~す!!」

背後から、とても威勢の良い元気な声が響いた。
振り向いた夕鈴は、目を点にする。

そこに居たのは、何と金髪男だったからだ。

「姉さんっ!…風邪は良くなったんですか?」

夕鈴の姿を認めるなり、金髪男は心配げに聞いてくる。

「風邪は治りましたけど、どうして…」

貴方が私の代わりに働いたの?と、夕鈴は問い掛ける。

金髪男はちょっと困ったように、「俺が話した事は、内緒ですよ?」と言い、全てを話してくれた。

「黎翔さんが…?」

話を聞いて、夕鈴は泣きそうになった。

夕鈴が熱に魘されながらもバイトに行こうとした日、黎翔から彼らの携帯に電話があり、代わりにバイトにいってあげて欲しいと頼んできたと言うのだ。

金髪男は元々パティシエを目指し、高校に入学した。途中で挫折したが元々手先は器用なので、細かい作業も得意だ。

そして、夕鈴の代わりにコンビニでバイトをしたのは、長髪男だった。

彼は鳶職につくまでコンビニバイトの経験があったので、特に何事もなくスッとシフトに入る事が出来たらしい。金髪男の携帯には、『只今休憩中☆』と言うタイトルでシャメが届いていたが、束ねられていた長髪は肩の辺りでばっさり切られ、まるで別人のようだった。

「…兄貴が、凄く心配していましたよ?」

金髪男が優しげな瞳で、夕鈴を見てそう言った。

忙しいはずなのに甲斐甲斐しく世話をしてくれた黎翔に、夕鈴は感謝で胸が一杯になった。


そして、翌日。

『その日』が、やって来た。

彼にあげられる物は何もないが、夕鈴は少しでも黎翔に喜んでもらいたくて、学校が終わった後、スーパーで買い物をして彼の部屋に向かった。

黎翔の帰宅時間は、メールで事前に確認済みだ。

彼が帰宅するまでに全てを仕上げれるように、夕鈴は凄いスピードで料理を作り上げていく。
でも決して、手は抜かない。
テーブルの上と、冷蔵庫の中には、二人では食べ切れないくらいの料理が出来上がった。

「ただいま、夕鈴!」

20時を過ぎた頃、黎翔はようやく帰宅した。

「お帰りなさい、黎翔さん!!」

玄関先まで出迎えた夕鈴は、黎翔にギュッと抱き着く。

「ん?…凄くいい匂い…」

玄関にまで漂ってくる匂いに、黎翔は犬みたいに鼻をヒクヒクさせる。

「ご飯作ったんです。二人で食べましょう。」

ニコニコ笑う夕鈴の頬にチュッと口付けを落とし、黎翔は一度寝室に向かった。

着替えを済ませリビングに来た黎翔は、テーブルの上に並ぶ数々の料理を見て目を見開いた。
今日は何かあったかな?と首を傾げながら、黎翔は忘れないうちに…と思い、夕鈴に小さな紙袋を渡す。

「これ…?」

手渡された紙袋には、見覚えのあるロゴ。

「開けてみて?」

黎翔に言われて、夕鈴は震える手で袋から小さな包みを取り出し、ゆっくりとリボンを外し、包装を解く。

パカッとケースを開けると、そこには夕鈴が心惹かれた、赤と青の輝きが。
宝石店の店員が話していた若い男性客と言うのは、黎翔の事だったのか。

ポロッと、夕鈴の目から涙が溢れた。

「え!?…夕鈴っ!?」

まさか泣かれるとは思っていなかった黎翔は、突然泣き出した夕鈴に慌てふためく。

「夕鈴が欲しがっていたの、これじゃなかった?」

夕鈴がバイトを頑張るのは、何か欲しいものがあるのだと思った黎翔は、彼女の親友達にそれとなくリサーチして、夕鈴がある宝石店のウインドウの前で、佇んでいたのを見たと言う情報を得た。

見に行ってみると、そこには赤と青の宝石がついた、二種類のピアスが並んでいた。
夕鈴がどちらを欲しがっているのか分からなかったので、両方とも買ったのだが、もしかして違ったのだろうか?

「ちが…違うんです…」

夕鈴は嗚咽を洩らしながら、呟く。

確かに夕鈴は、この紅い輝きが欲しかった。

でもそれは、自分のためではなく、黎翔に喜んでもらいたかったから。

「そう言えば、もうすぐあいつ、『誕生日』だ。」

二週間前、黎翔のバンド仲間・浩大がそう教えてくれた。

二人が出会って、初めての彼の誕生日。
黎翔にプレゼントをしたくて、夕鈴は彼に会うのも我慢して頑張ったのだ。

「貴方に…贈りたかったんです…」

自分自身のお金で、何か形のある物を、黎翔に贈りたかった。

「…僕の為に?」

真相を知って、黎翔は呆然と呟く。

自分に会う時間を削ってまで、夕鈴がバイトを優先したのも、
過労で熱が出るまで頑張ったのも、
あれほどバイトに行こうとしていたのも、

――すべて、黎翔の為。

テーブルの上に並んでいる料理は、確かに黎翔の好物ばかりだ。
冷蔵庫の中には、甘い物好きの黎翔の為に夕鈴がスポンジから手作りしたバースデーケーキが出番を待っている。

「…誕生日なんて、僕、忘れてたのに…」

黎翔は困ったように呟く。

毎年メンバーに言われて思い出すくらいだ。今年は何故か誰も言ってくれなかったので、黎翔はすっかり自分の誕生日を忘れていた。

今思えば、今年は夕鈴と言う恋人が黎翔にはいる。
彼女からのサプライズを成功させる為、メンバーは何も言わなかったのだろう。

「ごめんね、夕鈴、僕…」

それなのに自分は、誤解して彼女にきつく当たってしまった。

夕鈴はフルフルと首を振る。
驚かせたくて秘密にしたのが、いけなかったのだ。正直に話せば、黎翔もきっと理解してくれた。

夕鈴の震える拳の中にあるケースから、黎翔は紅い宝石がついたピアスを片方取り出した。
燃える炎のような、真っ赤な血のような、深い深い真紅の輝き。

それを徐に、左耳につけてみる。

「…似合う、かな?」

はにかむように聞かれ、夕鈴は泣き笑いのままコクリと頷く。
彼の瞳の色と同じ紅い宝石は、とてもよく映えると夕鈴は思う。

だが黎翔が右耳につけたのは、同じ赤ではなく青い宝石がついたピアス。

「――黎翔さん?」

困惑気味の夕鈴に、黎翔は優しく笑う。

「この二つは、夕鈴が持ってて?」

ケースに残されたのは、赤と青の宝石が片方ずつ。

夕鈴はピアス穴を開けていない事は、黎翔だって分かっている。

別にこのピアスを耳につけなくても良い。

彼女がいつも、肌身離さず持っていてくれれば――。

ギュウッと抱き締められて、夕鈴は顔を真っ赤にする。
その彼女の耳元で、黎翔はとても幸せそうにお礼を言った。

「本当にありがとう、夕鈴。…凄く嬉しい。」

このピアスをもらった事もだが、黎翔が一番嬉しかったのは、夕鈴が自分の為に頑張ってくれたという事。

とても愛しい存在を、黎翔は腕に閉じ込める。

「僕、とっても幸せだよ?」
「…黎翔さんが喜んでくれるのなら、私も嬉しいです。」

二人はしばらくの間、立ったままじっと抱き合う。

黎翔の胸に顔を埋めていた夕鈴は、ふと視線を上に向けた。

彼の両耳に、赤と青の色違いの宝石が、キラキラと輝いていた。


本編終了です。

この後はオマケ

せっかくの誕生日、黎翔に良い思いをさせてあげなくちゃ…(え?

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よろしくお願いします。

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