兎と狼のラビリンス

こちらは白泉社『狼陛下の花嫁』の二次創作ブログサイトです。(作者様・出版社様とは関係ありません)

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♪天女の羽衣 ♯前編

リクエスト小説(Creuzシリーズ)です。

第四弾はゆき様から頂いたリクです





※このお話の夕鈴は、高校3年生です。


♪天女の羽衣 ♯前編


新しいクラスメイトや先生、新しい環境にようやく慣れてきたGW。


「え?…黎翔さんの?」
『そうそう。一緒に行かない?』

「行くのは良いけど…」
『何?…何か不都合でもあるの?』

「不都合ってわけじゃないんだけどね…。」

親友・明玉から受けたのは、恋人黎翔の撮影現場に見学に行かないかという誘いだった。

夕鈴が住んでいる市内から電車で一時間ほどの場所にある洋館で、あるドラマのワンシーンの撮影があるらしい。
しかも、一般人の見学もOKと言うのだ。

Creuzの追っかけ、Reiのファンである明玉がこの情報を見逃すわけがなかった。

大好きな恋人が働いている姿を、近くで見たいと言う気持ちもある。
けれど、Reiとして演技をしている恋人は何故か遠い存在に思えて、夕鈴は少し胸が苦しくなるのだ。

『お願い、夕鈴!…一緒に行ってっ!!』

一人じゃ行きにくいの、と頼まれ、夕鈴は「分かったわ」と溜息を吐き承諾した。


「「わあ~~~」」

夕鈴と明玉は、大きな洋館を見上げ、感嘆の声を上げる。

今回撮影されるのは、夕鈴の恋人・黎翔が俳優として初仕事で、主演を務めたドラマの続編だ。

数年前に放送されたドラマだが、Creuzの人気も相俟ってファン達から続編を希望する声が上がり、この度めでたく続編の放映が決定した。

前作では、乱れた内政を粛清し、若き王子が見事祖国の王になった所までが放映された。

その続編とあって、今ファン達の間でかなりの期待が寄せられている。

スタッフに案内されて洋館に入ると、そこは沢山の見物客で溢れていた。

圧倒的に女性が多いが、所々に男性の姿もある。
男女問わず人気がある、Reiだからこそだろう。

念入りに荷物のチェックをされて、撮影現場の隅に集まる。

携帯を含むカメラ撮影は禁止されていて、数人のファンが持参していたカメラは撮影が終わるまでスタッフ預かりとなった。

一定の位置に立ち入り禁止のテープが張られ、その境には数人の警備員が配置されている。

「す、凄い厳重ね…」

こういう現場に初めて来た夕鈴は、あたりをキョロキョロ見渡しながら小声で明玉に囁いた。

「そりゃあのReiの撮影現場だもん。厳重にもなるよ。」

今世間でもっとも人気があるCreuzのリーダー・Rei。
彼の熱狂的なファンの中には、考えられない暴徒に出る危険な輩もいる。

不安げにしている夕鈴に、明玉は心の中で思う。

――あんたの恋人は、それほど人気がある芸能人なんだよ。

その現実が、純粋で真っ直ぐな彼女の、心を押し潰す事がないことを祈って。

現場にReiが姿を見せ、ファン達は色めき立つ。だがReiは、チラリとも視線を寄越す事無く、監督らしき人物と何か話し合っている。

「皆さん、本番の合図がありましたら、お静かにお願いします!!」

スタッフが大声で見物人に注意促す。

そしてリハーサルをして、いよいよ本番が始まった。


王の正装に身を包んだReiが、側近とともに長い回廊を歩く。

『…私はまだその気はないと、以前から申している筈だが?』

若き王の顔は顰められ、周辺の空気がキンと冷える。

『それは重々、承知しております。…しかしながら、陛下。早く妃を娶り、国を安泰させるのも王としての役目。』

深く頭を垂れ、側近の男は懇々と王を諭す。

『…民の生活も知らず、ただ愛されて育っただけの娘に何が出来る。』

『ですが…』

『――くどい!』

紅い瞳は細められ、心底不快と言うように吐き捨てる。

『私はただ美しいだけの娘に興味などない。…私が望む妃は、私の隣に立ち、民の視線で物事を考え、私と共にこの国を支えてくれる――そんな娘だ。どうしてもと言うのなら、私の目に適う娘を集めて見せろ!!』

『…ははっ!』


カットの声がかかり、緊迫していた現場がハッと緊張から解けたように騒がしくなる。
息を詰めて演技に魅入っていたファン達も、感嘆の息を吐き出した。

「…凄かったね…?」
「うん…。」

夕鈴と明玉も、夢から覚めたようにホッと息を吐いた。
特に夕鈴は、間近で見た恋人の演技にのまれてしまっていた。

「…黎翔さん、あまり機嫌良くないのかな?」

ちょっと気になって、夕鈴は呟く。

ただ演技しているだけのようにも見えるが、いつも一番近くで彼の表情を見ている夕鈴だ。
黎翔の表情が、少し苛立っているようにも見えた。

「…さすが夕鈴よね。」

恋人の事、良く分かっているじゃない、と明玉は言う。

彼女が言うには、今回の続編の内容が、Reiは気に入らないらしい。

今回の作品は、Rei演じる王が、唯一の妃を娶るという内容だ。詳細までは分からないが、何か納得のいかない事があるのだろう。

次の撮影の準備に取り掛かっている恋人に視線を向けるが、彼は夕鈴がこの場にいる事に気付いていないようで、視線が合う事はなかった。

こんなに近くにいるのに彼に気付いてもらえない事が、夕鈴は少しだけ悲しかった。

スタッフ達が慌しく動き、現場はあっという間に次の撮影のセットに変わる。

次のシーンは、側近が集めた王の妃候補の女性達を集めて開かれた、晩餐会の撮影だ。

豪華な衣装に身を包んだ美しい女性達が、晩餐会の場と化した現場に集められる。
セリフの確認や立ち位置、振る舞い方などを説明した後、本番に入った。


一番高い壇上で、先程より豪華な衣装に身を包んだReiが、つまらなそうに見下ろしている。
側近が集めたのは貴族の娘ばかりで、王は深い溜息を吐く。

王とは、所詮飾りだ。

自分自身の妃ですら、望んだ女性を得る事が出来ない。

国の一番頂点にいながら、何一つ手に入れる事が出来ない孤独な王。

この続編の話が来た時、黎翔は乗り気ではなかった。
続編は良いが、彼が気に入らなかったのは、その内容だ。

何の苦労も知らず、親に愛されただぬくぬくと生きてきただけの貴族の娘を妃に娶る。
ただ大臣や臣下の者が、望むように。

そんなのは御免だと、そう思った。

貴族の娘なんかじゃなくても、優しくて誠実で、沢山の苦労も知っていて、他の者の痛みも感じる事が出来る、そんな女性がいれば。

自分と共に歩くのは、そんな娘であって欲しいと彼は願う。

演じながら、Reiは愛して止まない恋人の事を考えた。

出会って一年が過ぎ、どんどん美しくなる夕鈴。

今この場で演じている女優達とは違い、夕鈴は着飾らなくても化粧なんかしなくても十分美しいのだろうなと思う。

そしてこの場に夕鈴がいれば、王としての自分は、きっと彼女を唯一の妃として選ぶだろう。

たとえ一庶民の、何の後ろ盾もない娘だとしても。

ふと視線を上げたReiは、少しだけ目を見開いた。

それは僅かな変化だったので、スタッフ達は誰一人として気付かなかった。

唯一気付いたのは、監督ただ一人。

前作に引き続き、メガホンを取る監督は、Reiの表情の微妙な変化に気付き、同じ方向に視線を向けた。

Reiの視線が泳ぐ。

晩餐会のセットの向こう、立ち入り禁止のテープが張られた向こう側、沢山の見物客が食い入るようにこちらを見詰めてる。

その中に、見慣れた亜麻色の髪を見たような気がしたのだが。

(気のせいか…?)

人の波に埋もれたのか、もうそれを確認する事は出来なかった。

夕鈴の事ばかり考えていたので、幻影でも見えてしまったのかもしれない。

Reiはおかしくなって、少し口角を上げる。


カメラマン達には、それが冷酷非情と言われる王が、冷たく哂ったように見えた。


続く


ドラマの撮影現場とか行った事ないので、現実とはかなり違うと思いますが、そこは気にしないで下さい…
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よろしくお願いします。

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