兎と狼のラビリンス

こちらは白泉社『狼陛下の花嫁』の二次創作ブログサイトです。(作者様・出版社様とは関係ありません)

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♪天女の羽衣 ♯中編

続きです。

ちょっとだけ、季節外れのホラー?気味??

リクエスト小説(Creuzシリーズ



♪天女の羽衣 ♯中編


時折手入れの為業者の人間が数人入るだけだった洋館に、久し振りに大勢の人間が集まり、賑やかな声が響く。


“私の望みを、叶える時が来た”

螺旋階段の上から階下の様子を見えていた影が、スウッと消えていった。


ドラマの撮影は、順調に進んでいた。

側近が選んだ妃候補の貴族の娘の中に、一人だけ異質の姫が紛れ込んでいた。
遠い小国の姫君は、質素なドレスに身を包み、会場の隅で小さくなっている。
彼女の身分が低い事に気付いた隣国の姫が、詰るようにきつい言葉を浴びせかける。

『そのような醜い容姿で、陛下の妃に名を上げるなんてなんて図々しい事!!』

扇で口元を覆い、綺麗なドレスを着た姫は、心が醜かった。

小国の姫は貧しい暮らしをしている農民達の為、自らも着飾る事無く質素な生活を送っている。
その為、貴族の姫達のような豪華な衣装は持ち得なかった。

その姫に、玉座に座っていた王が声を掛ける。

『民の事を思い、贅沢をせず慎ましく暮らすそなたの振る舞い、好ましく思う。』

王はスッと手を上げて、側近を呼び押せた。

『この姫に我が国に伝わる羽衣を…。この姫なら、きっと美しく着こなす事が出来るだろう』

演じるReiの表情が先程より幾分か和らいだ。
その原因はこの姫役の女優の髪の色が、愛しい恋人と同じ優しい栗色だったからだろう。


女優が衣装を替える間、短い休憩の時間となる。

それまで着ていた質素な衣を脱ぎ捨て、女優は豪華な衣装を身に纏う。
そして彼女の肩に掛けられたのは、美しい刺繍が施された金色の羽衣。

衣装担当の女性は部屋を出る女優の後姿を見ながら、首を傾げた。

(…あんな衣、あったかしら?)

姫役の女優が着替えを終えて、撮影現場の階下に下りる為螺旋階段に足を踏み出した瞬間。


“お前では、私の願いを叶える事が出来ない”


フワリと、羽衣が宙を待った。

広いホールに、悲鳴が響く。

「…誰か、救急車を!」
「急げ…!!」
「怪我の状態を調べろ!…早く!!」

「…何かあったのかな?」
「凄く騒がしいわね…。」

休憩の間、化粧室に行って(主に明玉の化粧直しの為)いた二人は、ホールに戻ってきて場の騒然さに驚く。

「女優が怪我したって…!」
「私見たわ!…羽衣が、羽衣が勝手に…!」
「バカ!…そんな事あるはずないだろ!?」

その場に残っていたファン達も悲鳴を上げ、その表情は皆蒼白だった。

「…困りましたね…」

監督と助監督は、頭を悩ませる。

幸い女優はあの高さから落ちた割には軽症で、命には別状がなかった。けれど、とても続けて撮影を行える状態ではない。

主演のReiは多忙で、スケジュールは詰まっている。
今日を逃せば、次はいつ撮影出来るか分からない。

「…代役を、立てるしかないな。」

そう言った監督の脳裏に浮かぶのは、Reiの視線の先にいた亜麻色の髪の少女。

相手は演技をした事もない素人。

無謀な賭けだが、今はこれしか手立てが無かった。

「すみません。…ちょっと来て頂けますか?」

突然腕を引かれ、夕鈴が驚いて振り向くと、そこには現場スタッフが立っていた。
周囲はまだ騒然としていて、誰も夕鈴がスタッフに声を掛けられた事に気付いていない。
夕鈴は明玉と共に、そのスタッフに着いて行った。

「そんな…!私には出来ませんっ!!」

夕鈴は泣きそうになって声を上げる。

連れて行かれた部屋には監督と助監督がいて、怪我をした女優の代役をして欲しいと頭を下げられた。

「私、演技なんかした事ありませんっ…!それに、短時間でセリフも覚えなきゃいけないなんて、とても無理ですっ!」

せっかく頭を下げて頼まれているのに断るのは心苦しいが、無理なものは無理だ。

「出来るだけセリフは減らし、言い回しも替えます。主演のReiにも事情を話し、フォローをするように頼みますので…」

「Reiは多忙で、今日を逃すとこのドラマの撮影は難しくなる。…無理は重々、承知している。だが今は、こうするしか手が無い。…お願い出来ないだろうか?」

夕鈴は言葉をなくし、下げられた二人の旋毛を見詰める。

「夕鈴…」

ツンと袖を引かれ、夕鈴は明玉を見る。彼女は、諭すように頷いた。


一時間以上の休憩を挟み、ようやく撮影が始まった。

玉座に座ったReiは、深い溜息を吐く。

怪我をした女優の代役は、演技をした事も無い一般人の少女。
何故監督がその女性に目をかけたのか分からないが、セリフも少し替えられ、フォローをして欲しいと頼まれた。

『…姫様のお支度、整いましてございます。』

姫の侍女が頭を垂れ、スッと手を差し出す。その手に乗せられたのは、白く細い掌。

シャランと、涼やかな簪の音が響く。

質素な衣装だった姫が、先程とは桁違いの豪華な衣装を纏い、姿を現す。

恥ずかしげに伏せられた視線、ゆっくりとした歩み。

全ての人間の視線が、彼女に集まる。

まるで天女の如き、神々しさ。

杯に酒(中身は水)を継ぎ足していた女官は、杯から溢れているいるのに気付かず注ぎ続け。

先程彼女を詰っていた貴族の娘役の女優は、扇を落としポカンと口を開ける。

ガタンと玉座から立ち上がったReiは、呆然と彼女を見詰める。

ザワザワしていた晩餐会の会場が、シーンと静かになった。

(な、何…?)

夕鈴は不安になって、顔を上げる。

豪華な衣装は肩が凝りそうだし、、頭と首に飾られた高そうな装飾品は重くてろくに動かせない。
衣装の上に羽織られた羽衣は、美し過ぎて触れるのも恐ろしいくらいだ。

明玉はとても似合っていると褒めてくれたが、周囲の反応を見ているとだんだん不安になってきた。

(こ、言葉も無いほど、似合っていないとか…?)

様子のおかしい俳優達にカットの合図を送ろうとした助監督を、監督が手で制す。

夕鈴は困った顔で恋人を見詰めた。

いつも夕鈴が困った時力を貸してくれる黎翔だが、今彼は『珀 黎翔』ではなく、俳優『Rei』だ。

だがこの場で夕鈴が頼れるのは、彼だけだった。

呆然と彼女を見詰めていたReiは、思わず「ゆうりん?」と呟く。
小さ過ぎるその声は、マイクも拾わなかったはずだ。

視線を見物客の方に向けると、その最前列には彼女の無二の親友・明玉の姿が。
彼女はコクンと頷き、夕鈴を助けてあげて欲しいと訴えてきた。

演技もした事が無いはずの夕鈴。
きっと監督達に頭を下げられ、優しい彼女は断り切れなかったのだろう。

Reiは小さく頷き返すと、優しげな表情を浮かべ、夕鈴が演じる姫に近寄る。

驚いた姫は、慌てて頭を垂れる。

『…姫。』

『は、はい…!』

顔を上げた姫の頬にそっと手を添える。

『…美しいな。とても良く似合っているぞ?』

そう言った王の目元は、僅かに赤く染まっている。

『勿体無いお言葉…ありがとうございます…。』

頬を桃色に染め、姫は王を見上げる。

見詰め合う二人は演技をしているようには見えないほど自然で、見ていた全ての人間を魅了した。


無事に晩餐会のシーンを撮影し終えて、残る撮影は王と姫の別れのシーンのみ。

その前に夕鈴の衣装替えがあるため、一時間の休憩が与えられた。
着替えの為別室に案内されていた夕鈴は、角を曲がる後姿を見て足を止めた。

(黎翔さん…?)

愛しい彼の姿を、見間違う筈も無い。

夕鈴は前を歩くスタッフをチラリと見て、彼女が気付いていないのを確認すると踵を返し、黎翔の後を追った。

「あれ…?」

確かにこの方角に歩いていったのに、角を曲がっても誰の姿も無かった。

気のせいだったのかな?と思った時、ちょうど前を通った部屋の扉が開き、そこから伸びてきた腕に夕鈴は中に引き摺り込まれた。

「汀さーん!…どこですかー?」

夕鈴がいなくなった事に気付いたスタッフが自分を探している声を、夕鈴は目を白黒させながら聞いていた。後ろから回された手に、口を押さえられ、身体を拘束される。

こんな状況なのに、驚きはしても恐怖は感じない。
背後から抱き締めてくるのは、覚えのある暖かさ。
嗅ぎ慣れた匂い。

「手を離すけど、大きな声出しちゃダメだよ?」

耳元で囁かれ、夕鈴はピクンと身体を震わせる。

「…黎翔さん…」

拘束を解かれ、夕鈴は彼を振り返る。

「…ビックリしたよ、夕鈴。君がここに来ているなんて知らなかったな。」

見上げた彼の顔は微笑んでいるが、紅い瞳はきつく細められている。

「勝手にこんな事して…、怒ってますか?」

夕鈴は不安になって、黎翔に聞く。

彼に内緒で撮影現場に見学に来て、勝手に彼と同じフィールドに立った。
ただの一般庶民が、図々しくも彼と肩を並べた。

「…怒ってなんか無いよ?」

夕鈴の言葉を聞き、黎翔はムスッとする。

「ただ、嫉妬してるだけ。」

「…へ?」

「だってさー、こんな可愛い夕鈴が、沢山の人間の目に触れたんだよ?」

僕、妬いちゃうよ…と、黎翔は悲しげに眉を下げた。

「もう、黎翔さんってば…!」

怒っているように見える黎翔が、実は嫉妬しているのに気付いて、夕鈴は可笑しくなって微笑んだ。

「それにしても、本当に似合ってるよ?」

二人はドラマの衣装のまま、向かい合って腰を下ろす。

「あまりにも綺麗で、僕見蕩れちゃったっ!」

キラキラとした瞳で、黎翔は夕鈴の手を取り、ギュッと握る。

「そんな…、私の方こそ…」

黎翔のカッコ良さを間近で見て、思わず見蕩れてしまった。

「惚れ直した?」

ニコニコ笑う彼を、夕鈴は直視出来ない。

確かに彼の言う通りなのだが、それを正直に言うのは恥ずかし過ぎる。
この衣装を着たままだから、そう思うのだろうか?

「それにしても、この衣装は重くて肩が凝りそうです。」

黎翔もだが、重厚な衣装に身を纏って演技をする女優さん達を夕鈴は凄いと思う。

肩に羽織った金の羽衣を脱ごうと、夕鈴は手を掛けた。

「…あ…?」

ビクリと夕鈴の身体が痙攣し、カクンと首が落ちる。

「…夕鈴!?」

彼女の異変を感じた黎翔が、夕鈴の肩に手を伸ばす。


「“私の願いが、叶う時が来た”」


夕鈴の顔が上がる。

夕鈴の口から洩れる声は、彼女であって彼女ではない。

「…お前は誰だ?…夕鈴に一体何をした?」

低い声で問う黎翔を、“夕鈴”はじっと見詰める。

紅をひいた紅い唇が、クスリと妖艶に微笑んだ。


続く


ちょっとミステリー?

怪現象かな?

もう少しお付き合い下さい





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Comment

No title 

お久しぶりです^ー^

一気にUPされてたので追いつけなくて・・。

って、読んだやつじゃん。とか言わないで・・・。ヽ(;▽;)ノ

だって~、楽しいし、面白いんだもの。ヾ(@⌒ー⌒@)ノ

後編が気になる・・・。

あちらに読みに行こうかしら。

なんて、こちらにUPされるのを楽しみに待っています(*゚▽゚*)
  • posted by ぷーちゃん 
  • URL 
  • 2013.01/26 19:56分 
  • [Edit]
  • [Res]

No title 

こんばんわぁ~~

久しぶりに遊びに来て
こんなに更新されてて、びっくりです♪

慧ネンさんの作品

何度読んでも、面白いです♪

え。。。
ゆーりんちゃんどうなっちゃうの??
先が、気になって☆

あっちに読みに
いこうかなぁ♪♪

続き
楽しみに、待ってます♪

でわでわ☆

Re: No title 

ぷーちゃん様

コメントありがとうございます!
あっちもこっちも、来ていただいてすみません<m(__)m>
ま~た途中で止めて、しばらく放置。
慧ネンの悪い癖です。

もう少しでCreuzシリーズは移し終えるので、先が見えてきた感じです。
早く移して、いい加減にクリスマス小説を仕上げなくては!
その時に、あちらで表示できなくなったお話をアップするつもりです♥
今日(28日)は休みなので、更新頑張るつもりです。
もう少しお待ち下さい!(^^)!
  • posted by 高月慧ネン 
  • URL 
  • 2013.01/28 03:10分 
  • [Edit]
  • [Res]

Re: No title 

鈴☆様

こんばんは、お久し振りです。
なんて、あっちでもコメント下さってましたね!ありがとうございます!(^^)!

また途中で更新止めてしまってすみません…<m(__)m>
続きなるべく早くアップします!
もう少しお待ち下さい。
どうしても我慢できなくなったら、あちらに出没して下さい(笑)


  • posted by 高月慧ネン 
  • URL 
  • 2013.01/28 03:14分 
  • [Edit]
  • [Res]

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よろしくお願いします。

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