兎と狼のラビリンス

こちらは白泉社『狼陛下の花嫁』の二次創作ブログサイトです。(作者様・出版社様とは関係ありません)

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♪若葉マークな、恋人達のクリスマス ♯5

続きです。

クリスマス小説Creuzシリーズ



♪若葉マークな、恋人達のクリスマス ♯5


奇妙な沈黙が流れた。


その沈黙を破ったのは、黎翔の低い声だ。

「…僕が来なかったら、あの男とどこに行くつもりだったの?」

問い質す、きつい口調。

ビクッと震えた夕鈴は、恐る恐る顔を上げて彼を見た。

黎翔は、ジッとこちらを見ていた。

野生の狼の様な、紅い瞳。

スッと細められたその瞳が、夕鈴を見下ろしている。

今日初めて、黎翔が夕鈴を真っ直ぐに見てくれた。
それは夕鈴にとって嬉しい事の筈だったのに、彼の視線は、背筋が凍り付きそうなほど冷ややかだ。

私が悪いの?

夕鈴はさらに唇を噛み締める。

確かに黎翔に何も言わず勝手に飛び出して、あげく他の男に着いて行こうとした。
自分も悪かったかもしれない。けれど、非があるのは自分だけ?

今日一度も目を合わしてくれなくて、何も言ってくれなくて、何故か怒ったような表情をしていた黎翔。

彼に、非は無かったの?

「何よ…!」

夕鈴は両手をギュウッと握り締め、キッと黎翔を睨み付けると、彼に向かって吼えた。

「…全部私が悪いのっ!?…だって黎翔さん、何も言ってくれなかったじゃない…!!」

自分でも、似合わない衣装だなと思ったのは事実だ。

でも…。


「そんな事無いよ、夕鈴!」
「うん!とっても似合ってる!!」
「黎翔さんも、きっと惚れ直すよ!」

親友達に褒められ、夕鈴は頬を染める。

「そ、そうかな…?」
「その姿で、彼を悩殺しちゃえ…!」
「そんなの無理~」

顔を真っ赤にして、親友達と笑い合った昨日。


悩殺云々はともかく、黎翔が褒めてくれたら良いなと思った。

『可愛いね、似合っているよ。』

あの腰にクル甘い声で、そう言ってくれる事を期待してた。

なのに。

「黎翔さん、目も合わせてくれないし、何か怒ってるし!…言葉も無いほど似合ってないなら、そう言えば良いのに…!!」

「あ、あの…夕鈴…?」

「溜息吐いてばっかで、私といてもちっとも楽しそうじゃないしっ!!」

「ゆ、夕鈴、落ち着いて…」

顔を真っ赤にした夕鈴は、泣きながら心の澱を吐き出す。

二人の周りに人が集まりだし、「何?」「…ケンカ?」と話しているのも、目に入らない。
必死に宥めようとする黎翔の声すら、今の夕鈴には届かない。

「一緒にいない方が良いかと思って出てきたら、ナンパされるし、貴方じゃない人に褒められるしっ!お礼にちょっとお茶しようと思っただけなのに、貴方に怒られるし!!」

「夕鈴…」

黎翔は途方に暮れた。
激昂している彼女を、どうやって宥めて良いか分からない。

「私が悪かったの?…あ、貴方に…可愛いねって言って欲しかっただけなのに…。褒めてもらいたかった、だけなのにぃ……!」

クシャリと顔を歪めた夕鈴は、しゃがみ込むと声を上げて泣き出した。

「ゆ、ゆうりん…」

夕鈴の傍に座り込み、黎翔は震える彼女の肩に手を置く。

「ご、ごめんね?…僕が悪かったから、いっぱい謝るから…」

黎翔は焦りながら、周囲に目を走らせる。

突然始まった痴話喧嘩に、道行く人達は興味津々。
本人達の心境をよそに、面白げな視線を向けてくる。

「場所を変えよう?…ね?…言いたい事、全部聞くから。怒っても良いから…。」

ひっくひっくとしゃくり上げる夕鈴に、優しく話し掛ける。

この人の多さ。このままここにいては、正体がばれかねない。
二人でゆっくり話せる所の移動した方が良いと、黎翔は判断した。


先程の場所から、徒歩で数分の所にあった児童公園。

黎翔は夕鈴をベンチに座らせると、自販機で購入したホットの紅茶を彼女に手渡した。
コクコクとそれを飲む彼女は、まだ鼻を啜っているが、大分落ち着いたようだ。

散々泣いたので、目は真っ赤でまるでウサギのようになっている。

「…まずは、ごめんなさい。」

黎翔は夕鈴の前に立つと、彼女に向かって頭を下げる。
そして顔を上げ、今度は真っ直ぐに彼女を見詰めた。

夕鈴がいつも以上に綺麗で、その魅惑的な姿を真っ直ぐ見れなかった。
そしてそんな姿を、自分以外にも見せたのかと面白くなくて、つい不機嫌になってしまった。

そんな自分の態度が、夕鈴を誤解させてしまったのだ。

本当は、この可愛い子が自分の彼女だと、自慢したいくらいだった。

自分の気持ちを嘘偽り無く、黎翔はすべて夕鈴に伝えた。

「…夕鈴が可愛すぎて、どうにかしちゃいそうで。視線を合わせなければ、押さえられるかと思って…。でも僕のそんな態度が、君を不安にさせてたんだね…。本当にごめん。」

「私の方こそ、ごめんなさい…」

謝ってくる黎翔を見ながら、夕鈴もポツリと謝罪の言葉を述べる。

あんな人通りの多い場所で、人目を憚らず大きな声で彼を罵って、泣き喚いてしまった。
芸能人である黎翔の素性がバレたらいけないので、普段なら絶対しない事だ。

慣れない酒のせいで、理性がどこかに行ってしまっていた。
落ち着いた今になって、何て馬鹿な事をしたのだろうと思う。

もし彼が人気バンドグループCreuzのReiだと、誰かが気付いたら大変な事になっていた。
それは黎翔にとって、大きなスキャンダルになりかねない。

「夕鈴は謝る必要なんて無いよ?」

黎翔は困ったように笑う。

全ての非は、自分にあったと思う。
恋人を不安にさせるなんて、男としてあってはいけない事だ。

黎翔は夕鈴に右手を差し出した。

「ホテルに戻ろう?」

「…ホテル?」

「うん。さっき食事した所。あのホテルの部屋を、予約してあるんだ。」

もともと、レストランで食事を終えたら、部屋に行くつもりだった。

最上階の、スィートルーム。

夜景が綺麗な部屋で、このクリスマスは夕鈴と二人で過ごそうと考えていた。

どの道、マフラーはレストランに置き去りのままなので、泊まらないにしても一度戻らなくてはいけないが。

「僕と一緒に、戻ってくれる…?」

不安そうに問い掛ける黎翔。

夕鈴はもう、黎翔の事を怒ってもないかった。
彼の思いを聞けて、良かったと思ってる。

夕鈴は答えるように、彼のその手をギュッと掴んだ。

その瞬間、グイッと腕を引かれ、彼の胸に抱き寄せられた。

「こんなに冷えて…。本当にごめんね、夕鈴。」

耳元で囁かれ、掛かる彼の吐息はとても熱い。

力一杯抱き締められて、夕鈴は安堵して彼の胸に身を寄せた。



続く


この喧嘩シーンが書きたかったの…


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よろしくお願いします。

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