兎と狼のラビリンス

こちらは白泉社『狼陛下の花嫁』の二次創作ブログサイトです。(作者様・出版社様とは関係ありません)

Entries

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

♪何よりも大切なもの ♯5

続きです。

Creuzシリーズ

♪何よりも大切なもの #5


『お話したい事があるので、貴方の部屋で待っています。』


土曜日の午後、誤解させたまま別れ、連絡の着かなかった恋人。メールの返信もなし、電話も繋がらない。そんな彼女から、一通のメールが届いたのは今日の昼過ぎだった。

ちょうど陰険マネージャーの小言を聞き流していた時だ。

腐れ縁のマネージャーの小言など、黎翔にとってはなんの苦にもならない。聞くともなく聞き流してようやく開放され、時計を見ると二時に近い。現役高校生の恋人は、もう授業中だろう。

せっかく彼女が昼休み中に連絡しようと思っていたのに、それすらも出来なかった。

もう二日も、夕鈴の声を聞いていない黎翔は、夕鈴欠乏症に陥りかけていた。


これから午前中上手くいかなかったリハーサルのやり直しがあるのに、黎翔の頭の中は夕鈴の事でいっぱいだった。

どうしたら彼女と連絡が取れるのだろう。彼女の誤解を、解く事が出来るのだろう。
このまま、別れる事になったら…。

最悪な事態を考えてしまい、黎翔の顔は青褪める。

まさかほんとに、このまま自然消滅なんて…。

「…Rei」

朝以上の暗雲を頭上に乗せた黎翔に、声を掛けたのは浩大だった。

「いつまでグダグダしてんだ。男だろ、お前。…仕事とプライベートはきちんと分けろ。」

いつもはちゃらけている浩大の最もな叱責に、黎翔の心はますます重くなる。

「…分かってるさ。」

確かに浩大の言う通りだ。

自分はCreuzのリーダー。メンバーを引っ張っていく立場にある。
公私混同はしないはずの自分が、夕鈴の事で仕事に支障をきたすほど落ち込んでいるのだ。


先ほどマネージャーの李順にも同じような事を言われた。その時は聞き流した言葉が黎翔の心に響くのは、浩大が決して、自分を非難する為に言った言葉ではないからだろう。

言葉は厳しいが、浩大の表情は怒りではなく、黎翔を心配している。

「…悪い。」

「それ、俺に言う言葉じゃないだろ。」

思わず口から出た謝罪に、浩大は速攻で言うべき相手が違うと返す。

「…俺が昔言った事覚えてるか?…後悔してるんだろ、過去の自分に。」

「ああ、その通りだ。…あの時聞き流した自分に、過去の行いに後悔してる。自分でも驚いているんだ…私に、そう思わせる相手が出来た事。」

握り締めた携帯を見詰めながら、黎翔は顔を伏せる。

幼馴染である二人は共にいた時間も長いが、浩大はこんな黎翔の弱弱しい表情を初めて見たと思った。


(…やっぱりすげーよな、姫ちゃんて。)


あの珀 黎翔にこんな顔をさせるなんて、世界広しと言えど夕鈴しかいないだろう。

やっぱりこのまま、別れる事があってはいけないと思う。


「…ケータイ見た?姫ちゃんから連絡来てないかな?」

「え…?」

浩大に言われ、黎翔は驚いて慌てて携帯を開く。待受画面は確かに一通の着信メールがある事を知らせている。

「夕鈴……」

それは黎翔が待ちわびた、愛しい恋人からの連絡だった。


夕鈴の話したい事が何なのかは分からない。あの日の事を問い詰められるのか。それとも別れを切り出されるのか。
不安はもちろんあるが、この二日間連絡が取れなかった事を考えれば喜びの方が大きい。


きちんと話そう。誤解だという事を伝えよう。

今の自分の心を掴んで離さないのは、君以外にいないと伝えなくては。

そのチャンスを、彼女が与えてくれた。

短いメールを何度も何度も読み返す黎翔の顔に、柔らかい笑みが浮かぶ。

そんな黎翔を見ながら、浩大は踵を返す。

「…マネージャーから伝言。『午後のリハは二時半から、今度はきちんとするように』」

黎翔から返事はなかったが、浩大はそれでも良かった。

きっと次のリハーサルは上手くいく。

自分がしたお節介も、無駄ではなかったという事だ。


部屋を出る浩大の顔も、嬉しそうに笑っていた。



続く
関連記事
スポンサーサイト

Comment

Comment_form

管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。

左サイドMenu

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

右サイドメニュー

プロフィール

高月慧ネン

Author:高月慧ネン
『兎と狼のラビリンス』へようこそ。
黎翔と夕鈴が大好きな管理人・慧ネンが、溢れる妄想を書き殴るために作ったブログです。
原作沿いや現代パラレル、色々ありますので、お好きなお話をお読み下さい。
よろしくお願いします。

†いらっしゃいませ†

キリの良い数字を踏まれた方は、ご連絡下さい♪

ご訪問中のお客様

現在の閲覧者数:

にほんブログ村ブログパーツ

ブロとも申請フォーム

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

検索フォーム

QRコード

QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。