兎と狼のラビリンス

こちらは白泉社『狼陛下の花嫁』の二次創作ブログサイトです。(作者様・出版社様とは関係ありません)

Entries

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

♪その光に手をのばし ♯1【悪夢】

ちょっとだけストックが出来ましたので、少しずつ放出していこうと思います

このお話は、昨年12月に別ブログで受け付けたリクエスト小説になります。
すでに半年以上過ぎ、リクエストして下さった読者様も、忘れてしまっているかも
大変遅くなって、申し訳ありません

残っているリクエストも、せめて今年中には書き上げたいと思っています。
良かったら、お付き合い下さいませ。

リクエスト小説(Creuzシリーズ)です。

第五弾は夕鈴ラブ様から頂いたリクです

注意

今回のお話は長編(中編?)になりそうです。
甘さはあまりなく、どちらかと言うと、暗め・痛い表現があります。
内容的には、季節・イベント小説『♪新年早々…』の数日後のお話です。



♪その光に手をのばし ♯1【悪夢】


「―――……っっ!!?」

ベッドの上で、黎翔は飛び起きた。
胸元を掴み、ハアハアと息を吐く。

部屋の中はまだ真っ暗だった。
目が闇に慣れると、同じ部屋で休んでいるメンバー達の姿が確認出来る。

自分の上げた悲鳴が、夢の中でだった事に気付いたのは、彼らが目を覚まさなかったからだ。

「ゆ、め……。」

座り込んだまま、ベッドの上で呆然と呟く。

なんて夢を見たのだろう。
そう思う反面、夢で良かったと思う。
あんな事が、現実であってなるものか。

クシャリと髪を掻き上げた、その手は震えていた。
その手を、もう片方の手でグッと握り締めて、黎翔は大きく息を吐いた。
夜明けまで、まだ時間がある。もう一眠りしなくては。

そう思い横になるが、目が冴えてしまって一向に眠りは訪れてくれず。
結局それから一睡も出来ぬまま、彼は朝を迎えた。

黎翔をはじめCreuzのメンバーは、ライブコンサートを行うためにこの地を訪れてた。
年が明けてすぐ始まった、各地を転々と回る一週間の強行ツアーの最終日。

食は進まなかったが、食べていないと体力的に持たないので、黎翔は何とか朝食を食べ終えた。
メンバー及びスタッフ達と打ち合わせを行い、少しだけ空いた、その時間が。
彼に、朝の夢を、再び思い出させた。

急に不安になる。
多忙なスケジュールの為、一週間以上会っていない恋人の姿が脳裏に浮かぶ。
メールや電話で連絡は取り合っているが、顔を見れない事が、この不安に拍車を掛けているのか。

ジーンズのポケットから、携帯を取り出す。

今日は日曜日。
時刻は九時前。
明日から三学期が始まる彼女は、今何をしているだろう。
バイトは入れていなかったはずだ。
家にいるだろうか、買い物にでも行っているだろうか。

迷惑かなと思いながら、彼自身ライブが始まれば、彼女と話す時間が取れなくなる。
胸の中に渦巻く不安が、彼女と話す事で消えてくれるだろうか…。

ドカリと控室のソファに座り、黎翔は携帯の短縮を押した。

ワンコールで出てくれた彼女は、炊事と洗濯を終えて、一息ついていると笑った。
耳に届くその声が、とても優しく黎翔は息を吐く。

『明日から学校ですし、午後はちょっと片付けでもしようかなと思っています。』
「冬休み最後の日ぐらい、ゆっくりしたら良いのに…。」
『お正月に使った食器とか、今日中に片付けておきたいんです。』

年末から新年にかけて仕事だった黎翔は、明け方、仕事を終えた後、彼女に会いに行った。
昼過ぎまでドライブデートをして、彼女を自宅に送り届けると、すぐにこのライブツアーに向かった。

一方、元旦当日はバイトを入れていなかった夕鈴は、二日から早速バイトに精を出していた。
冬休みの間だけでも休めばいいのにと、黎翔は真面目過ぎる恋人に苦笑いする。

「今夜のライブが終わったら、帰るから…。明日、学校終わってから会える?」

本当は、今夜会いに行きたいところだが、どうせライブの後打ち上げがある。
終わってからだと、かなり遅い時間になってしまう。
まだ未成年の彼女を、夜遅い時間に呼び出すのは常識的にマズイだろう。

『…明日は学校の後、バイトがあります。』

ちょっと困ったような声で言われ、黎翔はやっぱり…と肩を落とす。

「コンビニのバイト?」

バイトを掛け持ちしている夕鈴にそう聞くと、『そうです』と返ってきた。

「じゃあ、じゃあさ、いつもの公園で待ってる。バイト終わったら、会いに来てくれる?」
『はい。分かりました。』

そう答えた後、夕鈴はクスクス笑う。

「…何?」
『あ、ごめんなさい。…何かいつも以上に黎翔さんが子供っぽくて。――何かありましたか?』

時々鋭い彼女に、黎翔はドキッとした。
声のトーンもいつもと変わらないように気を付けていたのに、渦巻く不安が、いつの間にか表れていたのかもしれない。

「……っ、――ううん、何もないよ?」
『そうですか?なら良いんですけど…。』

ちょっと納得していないようではあったが、それ以上追及されなくてホッとしていると、コンコンと部屋の扉がノックされた。

「――はい。」

扉が開き顔を見せたのは、スタッフの一人。

「Reiさん、お時間です。」
「ああ、すぐに行く。」

短く返事をし、扉が閉まると、黎翔は再び携帯を耳に当てる。

『呼ばれちゃいましたね。』
「うん。ごめんね、ゆっくり話も出来なくて。」
『いいえ。ライブ、頑張って下さいね。』

誰でもなく、彼女からそう言ってもらえるのが、一番嬉しい。

「夕鈴。」

愛しい、愛しい彼女の名を呼ぶ。
この気持ちが、彼女に伝わるように。

『はい?』
「――愛してるよ?」

息を飲むような、少しワタワタした感じの、少しの間の、後。

『わ、私も…愛してますっ』

消え入りそうな小さな声で、それでもはっきりとそう言ってくれた彼女を、とても愛おしいと思った。

通話を終え、部屋から出た彼は、表情を黎翔から、Reiのそれに変えた。
ライブの前に彼女と話せて良かったと思う。
渦巻く不安は、彼女の声を聞いた事により、完全とまでは言えないが、少し軽くなった気がする。

後は、祈るしかない。
あの夢が、現実にならないように。

長い長い通路を、先を目指して歩く。


―――夕鈴。

君を失う、夢を見た。


続く


関連記事
スポンサーサイト

Comment

Comment_form

管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。

左サイドMenu

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

右サイドメニュー

プロフィール

高月慧ネン

Author:高月慧ネン
『兎と狼のラビリンス』へようこそ。
黎翔と夕鈴が大好きな管理人・慧ネンが、溢れる妄想を書き殴るために作ったブログです。
原作沿いや現代パラレル、色々ありますので、お好きなお話をお読み下さい。
よろしくお願いします。

†いらっしゃいませ†

キリの良い数字を踏まれた方は、ご連絡下さい♪

ご訪問中のお客様

現在の閲覧者数:

にほんブログ村ブログパーツ

ブロとも申請フォーム

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

検索フォーム

QRコード

QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。